はたけ のブログ

ラジオの文字起こしをしてます。現在は「高城未来ラジオ」と「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」をやっています。文字起こし専門のブログにしました。

鈴木敏夫のジブリ汗まみれ:「紅の豚」の制作秘話。

 ラジオ音源はこちら

http://podcasts.tfm.co.jp/podcasts/tokyo/rg/suzuki_vol15.mp3

 

2008年1月15日放送の「鈴木敏夫ジブリ汗まみれ」の中で、スタジオジブリ制作の「紅の豚」が出来るまでの話を、鈴木さんが話されています。対談相手は当時ジブリとのコラボレーションで「空を飛ぶプロジェクト」を展開していたJALの方々です。

 

  • 紅の豚はショートフィルムの予定だった 

 

鈴木敏夫:今回実は初めてじゃなかったんですよね。「紅の豚」で大変なお世話になって。映画の製作費の出資として頂いた。あれもひょんなことでしたよね。

 

JAL:最初はショートフィルム、、

 

鈴木敏夫:そうです。あの子供たちを助けるまでなんですけどね。ある日、そこまでの絵コンテが出来たんですよ。それで「鈴木さん、どうかな?」って僕のところに見せに来てくれたんですけどね。僕のこれ感想ですよ?あんま面白くなかったんですよね(笑)それで僕はね、あんま面白くないっていうのも、本人に言うと気を悪くするから「宮さんこれ、これで終わりですか?」って言ったら、これで終わりだって言うんですよ。つい僕もね「こいつ何で豚なんですか?なんで豚になったのか、もう少しないとわかんないじゃないかな?」って言ったら「まだわかんないんですか?!」とか言ってね(笑)やってるうちに少しずつ増えてったんですよ。それで40分過ぎたあたりでね、これはお金もかかるし色んなことを考えたら映画にせざるを得ないかなーと思ってね。それで宮さんの方には1つは「70分くらいになんないですかね?」って。「なんで?」っていうから「これお金もかかってるし、ちゃんとやって映画館でかけたいんですよ」って。「こんなの映画館でかけていいのかな?」なんて話をして。それで一方、僕はJALさんの方にね「ちょっと事情が変わりまして、映画でやりたいんですけどいかがでしょうか?」って言って。最初ね、当時のJALの偉い方たちにもジブリの方に来ていただいて、宮さんも交えて食事会をしてね。その時に宮崎もね嫌なことを最初に言うっていう癖があるんですね。これよく覚えてるんです、僕。何かっていうと、これから乾杯って前ですよ。「申し訳ないですけど、最初にお話しておきたいことがあります。」っていうから、皆何かなって思って緊張の面持ち。「僕の作ってる映画では、飛行機は海へ落ちます。」

 

JAL:(笑)

 

鈴木敏夫:「よろしいでしょうか?」

 

JAL:反応は?

 

鈴木敏夫:乾杯!とはいかなかったですね。

 

JAL:(笑)

 

  • 豚が主人公ということに、JALは反対だった!?

 

鈴木敏夫:一番最初はね、JALさんと一緒にやろうってときに「タイトルはどういうタイトルですか?」って言うから僕らの方は紅の豚って言って。担当者の方には字で示したんでね、そしたら当然豚でしょ?それはお悩みになりましたよね、皆さん。何でかって言ったら、JALか初めてやる映画が、タイトルに豚っていうのが入ってるって。皆さん抵抗があって、担当者の人がホリゴメさんという方でね、会社戻って「タイトルなんだけどさ」って女性集めて「何ですか?」って言われて「紅の豚」って言ったら「いいタイトルですねー紅の歌ですか」って(笑)

 

JAL:(笑)

 

鈴木敏夫:いや豚なんだけど、って。したら一瞬皆さん顔が曇って。「歌じゃなくて豚なんですか?似てるけどだいぶ違う」って。そうこうするうちにね、ポスターを作ったんですよ。それでJALさんが豚がどうのこうので拘ってるの知ってたから、ジーナが若い時の写真、5人の仲間がいる、これでポスター作ろかなって思ったんですよ。豚ってこと隠してね?そしたら宮さんがね、僕の案を見てね怒ったんですよ。「鈴木さん、何で主人公が豚だてこも隠すんだ!堂々と書こう。」って。自ら嫌なぐらい豚の顔を描いてね、ポスター作るんですけどね。それが出来上がってJALさんに見せたらね、皆さん顔が曇ってね。

 

JAL:(笑)

 

鈴木敏夫:それをお持ち帰りになった後の話も聞いたんですけど。ポスターが出来たぞって言ったら女性たちが集まって、開いた途端「やっぱり豚なんですね」って(笑)

 

JAL:僕は直接当事じゃなかったんだけど、聞こえてきてましたね。何で豚なんだ、とか、何で豚が飛ばなきゃいけないんだ、とか。

 

鈴木敏夫:何ていうのかな、ジブリの作品ってちょっと嫌なものを出すっていうのが何かあるんですよね。

 

JAL:一般的な常識で考えると、引いてしまうところに入ってくるんですけど、でも実際に作品を観ているうちに気づいてみると、自分の親しみやすいキャラクターとして心に入ってきてるっていうのが、ウチの娘も映画観て、豚にすごく親近感を感じているというのが、最初は一般的には引いちゃうんですけど、実際には心に入ってきてるっていう。

 

JAL:いま東京に支店があるんですけど、そこのオフィスにポルコの大きなヌイグルミが置いてありますね。

 

鈴木敏夫:そうですか!僕いまでもよく覚えてるのはね、飛べば見える、っていうコピーでやってくわけなんですけど、作品ってね上っ面で面白可笑しいをやっても、お客さんは納得してくれない。何かそれがある気がするんですよね。どう意味かっていったら、綺麗事だけでは作品にはならない。嫌なものを入れて初めて作品になる、っていうのは何かあるんですよ。宮さんなんか特にナウシカもそうですけど、腐海っていうのが皆が忌み嫌う嫌な場所。ところがそこにこの世界を浄化する秘密があった、みたいな映画でしょ?そうすると、皆が好きになるもの、そして嫌なもの、両方のバランスが必要みたいなね。