鈴木敏夫のジブリ汗まみれを文字起こしするブログ

ポッドキャスト版「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」の文字起こしをやっています。https://twitter.com/hatake4633

押井監督の「パトレイバー」にちなんだトークイベント「第4回マモルの部屋」の模様をお送りします。

2014年11月27日放送の「鈴木敏夫ジブリ汗まみれ」です。

http://podcasts.tfm.co.jp/podcasts/tokyo/rg/suzuki_vol345.mp3

 

 

小林治:皆さん、こんばんわ。今「THE NEXT GENERATION パトレイバー 第4章」をご覧頂きまして、これからお待ちかねの。お待ちかねですよね?

(会場から拍手)

小林治トークショーをはじめる前に、今回司会進行をします小林です、よろしくお願いします。アニメライターをやらしてもらっています。今日はやたら緊張してます(笑)わかってますよね?このトークショーのホストをご紹介します。この映画の総監督の押井守さんです、どうぞ!

 

ーナレーションー

鈴木敏夫ジブリ汗まみれ。

 

今週は9月11日に新宿ピカデリーで行われた押井守監督の「パトレイバー」にちなんだトークイベント「第4回マモルの部屋」の模様をお送りします。

 

攻殻機動隊」「イノセンス」などを手がけた押井守監督の新シリーズ「THE NEXT GENERATION パトレイバー 第4章」に出演している鈴木さんと押井監督の貴重なトークショー。まずはこんなお話から。

 

鈴木敏夫:あ、どうも。スタジオジブリの鈴木です。こんばんわ。

(会場から拍手)

 

小林治:ではお話を伺っていきたいと思ってるんですが。

 

鈴木敏夫:ちょっと僕腰が痛いんですよ。それで変な格好をしちゃうかもしれませんが、すいません。

 

押井守:年寄り同士が集まるとさ、体の話しかしないんだよね。

 

鈴木敏夫:(笑)

 

小林治:ちなみにお二人は、年齢的にはどちらが年上なんですか?

 

鈴木敏夫:ああ、僕のが若いですね(笑)まぁ似たようなもんですよ。

 

押井守:確か3つ上だと思う。

 

小林治:あ、でも近いんですね

鈴木敏夫:僕6歳(66歳)になったんですよ。

 

押井守:じゃあ僕が63だから。

 

小林治:鈴木さんとお会いしたの、いつ頃か覚えてらっしゃいます?

 

押井守アニメージュの編集長やってたから。

 

鈴木敏夫:テレビの「うる星やつら」を彼が作ってたんですよ。今からウン十年前。1980年前後。そのぐらいですよね?

 

小林治:そのぐらいですね。

 

鈴木敏夫:押井さんがね、本当に真面目に働いていた頃です。

 

(会場、笑い)

 

小林治:じゃあ、その頃に取材でお会いしてから?

 

鈴木敏夫:そうそうそう。

 

押井守:一番最初に会った時のことは実は覚えてないの、全然。一番最初はこのオジさんじゃなくて、若いお姉さんが来て取材して帰って、その時の印象があったらしくてその時に会いに来たの。その時に会った時の記憶はなくて。一番記憶を遡ると、確かスキーに行ってたような気がするんだけど。

 

鈴木敏夫:押井さんってね、ある時、環八と早稲田通りその角に建物があって、そこに暮らしてたんですよ。で、毎週なんでか知らないけど土曜日になると仕事が終わったあと、押井さんの家を訪ねる。そんなことがあったんですよね。しかも、毎週。延々。

 

押井守:大迷惑したの。

 

小林治:それは押しかけたんですか?

 

鈴木敏夫:違うの。来てほしいっていうんですよ。

 

押井守:突然来るの。突然夜中の2時に突然来て、、

 

鈴木敏夫:来てほしいってって言われて、、

 

押井守:言わないよ!そんなこと!(笑)大体さ普通人の家に来るときに手前土産持ってくるじゃない?お菓子とかケーキとかさ。ミカンぶら下げて来るの。ミカンを30個くらいぶら下げて来て、一人で全部食うんだよ。

 

鈴木敏夫:もっと多かったよ(笑)

 

押井守:40個以上食ったよね(笑)タバコは山のように吸って、朝まで喋って帰るわけ。

 

小林治:ミカンとタバコで一晩?

 

押井守:そうそう。飲まないからさ、酒は。で、その当時僕が住んでたアパートは奥さんと一間しかなかったのよ。この親父が帰るまで寝れられないわけ。誰も。

 

小林治:仕事場じゃなくて、ご自宅に行ってたんですか?

 

鈴木敏夫:自宅に行ってたんですよ。で、僕を帰してくれない。僕は帰りたいのに(笑)

(会場、笑い)

 

鈴木敏夫:かなり長い期間なんですよ、これ。毎週土曜日だったと思うんですよね。

 

小林治:それは、アニメージュさんで押井さんが、例えばページを持っていて、必ず取材をしないといけないとか、、

 

押井守:取材じゃなかったと思うよ。ただダベリに来てただけだよ。取材じゃなかったよ。

 

鈴木敏夫:取材じゃなかったですね。それは一致します。

 

小林治:そこは間違いなく?

 

押井守:雑誌の連載で仕事したっていうのは一回しかないはず。漫画の連載やってたから。

 

鈴木敏夫:「トドのつまり」。

 

押井守:あれを持ってきてからじゃないかな。それから結構頻繁に来るようになって。

 

小林治:じゃあその漫画があったあとで?

 

押井守:そう。ちょうど僕が「ビューティフル・ドリーマー」終わって、ピエロ辞めてフリーになった頃。僕も二馬力に通ったりして。行く場所がないから。

 

鈴木敏夫:何か寂しそうだったんですよ。

 

押井守:全然寂しくない!寂しくないよ。迷惑だった。ハッキリ言って(笑)

 

小林治:その頃からそういうキッカケがあったのはわかるんですけど、映像作品に役者として出すのはまた違うお話だと思うんですが。

 

押井守:タダだからっていうのはあるんだけど。

 

小林治:予算もないですからね。限られていて。

 

押井守:世間に顔が売れてる割には、タダで使えるっていうさ。それがあって。

 

小林治:当時はそうか、もうジブリか。

 

押井守:そうそうそう。ジブリのプロデューサーなってからだから。

 

鈴木敏夫:最初は「女立喰師烈伝」、、

 

押井守:そうじゃないよ!その前に、、

 

鈴木敏夫:あ、「KILLERS」だ!

 

押井守:「KILLERS」っていうちょっと安めの映画で、、

 

鈴木敏夫:安めの映画(笑)

 

押井守ジブリとは言わなかったけど、某有名スタジオの大プロデューサーが30億の横領が発覚して、病院に立て籠もってるっていうさ。それをある女のスナイパーが狙撃する話なんですよ。病院から出てくるところを頭吹っ飛ばすっていうさ。CG頭を吹っ飛ばしたんだけど。見事に。それが最初。

 

鈴木敏夫:あのね、その映画の中で唯一CGが使われたのは、そこだけなんですよ。

 

小林治:おおー。じゃあ予算はちゃんと使ったシーンを。

 

押井守:予算なかったから2カットしか出来なかったの。

 

鈴木敏夫:でもクレーン使ったり、結構やってたんですよ。

 

小林治:今回の「パトレイバー」では中々使えなかったクレーンを。

 

押井守:「パトレイバー」クレーン使いまくりましたよ。

 

小林治:でも前監督がお話ししたら、そんなに使えなかったって言ってましたよ。

 

押井守:ああそうか。映画では使ったんだけど、、

 

小林治:ほらほらシリーズでは。

 

鈴木敏夫:で、その次が「女立喰師列伝」でね、押井さんが僕に頼んできた理由はね、僕にヌードになってほしいっていう。

 

小林治:つまり脱げと?

 

鈴木敏夫:そう。それで現場で揉めるんですよ。

 

小林治:ちょっと待ってください。現場に来て揉めるんですか?

 

鈴木敏夫:現場へ行ってその撮影の時に、プロデューサーと押井さんが揉めてたのをよく覚えてますね。何でかっていうと、パンツを脱ぐか脱がないかで。

 

(会場、笑い)

 

押井守:肌色のパンツ履いてたの。検死台の上で解剖されるの待ってるところで、当然素っ裸じゃない?検死解剖するんだから。

 

小林治:そうですね。

 

押井守:パンツ履いてるから、あのパンツ何?ってさ。約束通り脱げって言ったの。

 

鈴木敏夫:僕は全然平気だったんですよ。

 

押井守:どうせちっこいんだから、あとで消すの簡単だからって言ったの。

 

(会場、笑い)

 

押井守:パンツ脱ぐの嫌だったって言ってたの。

 

鈴木敏夫:言ってないよ、そんなこと。

 

押井守:言ってたじゃん!

 

鈴木敏夫:俺は脱ぐって言ったのよ。そしたらあのプロデューサーが真面目になったのよ。

 

押井守:たぶんね、現場の誰も見たくなかったから。どうせあとで黒丸入れるから同じだと思ったんだよね。パンツも消せるから。

 

鈴木敏夫:でもその時にね、ご覧になってわかる通り、当時もう髪真っ白だったんですよ。今と全く同じだったの。そしたら押井さんがね「黒くしろ」って。これが条件。で、その場で黒くしたらね、いい男になっちゃって。本当(笑)ね?何か原田芳雄みたいだったんですよね。

 

押井守:初めて会った頃の印象に戻そうとしただけ。だから汚い髭剃って、髪を黒く染める。あとは写真で加工もできるしね。あとはそういう役の設定だったから。

 

小林治:はい。

 

押井守:80年ぐらいの話で、左翼運動の生き残りがさ、警察官に撲殺される話なんだけど。立ち喰い蕎麦屋でドンブリでカチ割られて死ぬんだけど。年齢からいったら白髪頭ってあり得ないから。あと髪黒くして髭剃れば、違う顔に映るんじゃないかって見てみたいと思ったわけ。

 

小林治:それがこれですよね?

 

鈴木敏夫:もっといい写真があるんですよ。

 

押井守:この時に坂崎さんっていうカメラマンが撮ったスチール写真を、持って帰ってさスタジオに貼ってたんだよ。嬉しくって。

 

小林治:お気に入りだったんですね?それは。

 

押井守:気に入っちゃったの。

 

鈴木敏夫:馬鹿じゃないかな、もう(笑)それでついでだから言いますけど、「真・女立喰師列伝」。ご覧になってない方がいましたら、見ることをオススメしますね。押井さんの中でたぶん一番いい作品じゃないですかね。それで何がいいかというとね、ナレーションがいいんですよ。内容もさることながら声がいいんですよ。まぁ僕がやったんですけど(笑)

 

---

 

小林治:一番初めはCGで頭を吹っ飛ばされて、次は検死台に乗っかっていて、死ぬ役が多いんですね?

 

押井守:あのね、出す以上はちゃんと殺そうと思ったの。それの理由があちこちに書いたんだけど、この人はね、悪いこと散々やってるじゃない?悪いことしかしてないから。たぶん色んなカルマが溜まってるっていうかさ、本人の中にも殺されたいっていう願望が絶対ある。誰かに殺されて死にたいっていうさ。布団の上で大往生したら採算が合わないっていうさ。あれだけ悪いことやってきたんだから。殺されたい願望があるはずなんだよね。本当に殺されたくはないわけだから、それでもさ。だから映画の中でちゃんと殺してあげるよってさ。どうせ友達もいないしさ。それでいうと数少ない付き合いのある人間だから。

 

小林治:それはいま、友達だって言ってるってことですか?

 

押井守:友達とはいってない!

 

(会場、爆笑)

 

押井守:仕事仲間というか同時代人というか、でも友達ではない。友達じゃないんだけど、多少は情が移ってるから、彼の秘められた殺されたい願望を満たしてあげようってさ。見事に殺してあげようってさ。だから出すたびに殺そうと思ったわけ。

 

小林治:でも今回は死ななかったですよね?

 

押井守:殺してる暇がなかったの。現場に2時間しかいなかったから。

 

小林治:じゃあちょっと今回のスチールも出ますでしょうか。で、何回も悪徳プロデューサー的なものをやってますけど、今回もプロデューサーとして出演されていて。

 

押井守:いかがわしいスーツ着てるでしょ?

 

小林治:はいはい。

 

押井守:あれは私が選んだ。衣装合わせでとっかえひっかえやったんだけど、結局何着せても似合わない。昔だったら、ジーンズにジャンパーで雪駄履いて赤鉛筆指して、昔トップ屋っていうのがいたんだけどさ。フリーの記者のことなんだけど。

 

小林治:はいはい。

 

押井守:トップ屋っぽく見せようとしてたわけ。流石にそれ出来ないから。今これしか似合わないんだもん。

 

鈴木敏夫:あのね、僕はここに臨むにあたって観たんですよ「パトレイバー」。エピソード0からはじまって、1・2・3。当然、この熱海のやつもご覧になったと思うんですけど、一言でいうと明らかにミスキャスト。それでね、僕観ながら思いました。竹中直人さんがおやりになった役あるじゃないですか?

 

小林治:はい。

 

鈴木敏夫:あれでしたね、僕は。

 

(会場、爆笑)

 

小林治:総監督。そういう役者からのご指摘がありましたが。

 

押井守:役者じゃないもん。役者じゃないもん。あの竹中直人がやった役って、いろいろ考えたの。チラっと思わないでもなかったけど、あれは真野の相手しないといけない。真野ちゃんをリードする役じゃないですか。絶対無理だから。

 

鈴木敏夫:で、竹中さんはね熱海で市長の役。あれをやっていただいて、それでエピソード3、あれを僕がやるべきだったなと。僕がプロデューサーだったら絶対そうしてましたね。

 

押井守:今だから言うけど、本当は熱海市長は竹中さんだったの。

 

鈴木敏夫:(笑)

 

押井守:そうなの。最初はそう決めてたの。

 

鈴木敏夫:そうなんだ!

 

押井守:スケジュールが合わなかったの。

 

鈴木敏夫:合わなかったんだ!それで代わっちゃったんだー。なるほどー。本当は僕じゃあ竹中さんの役だったんだ?

 

押井守:そんなわけないじゃない!

 

(会場、爆笑)

 

押井守:そんなわけないじゃないの!(笑)セリフが入んないくせによく言うね!

 

小林治:そうそう、メイキングというか特典映像に入ってましたけど、あのセリフを何カットに割れっていう指示を。

 

鈴木敏夫:あれはね、本当割って欲しかったですね。僕ね新幹線乗るまで本読んでなかったんですよ。

 

(会場、笑い)

 

鈴木敏夫:それでもうすぐ熱海っていうときに、一緒にいたタダノっていうのがいたんですけど「俺の出番どうなってるの?」っていってそこの箇所だけみたんですよ。そしたらセリフがいっぱいあるでしょ?で、僕ビックリしてね「これアフレコ?」ってきいたら「いやあ、それは」って。

 

で、現場に行ってすぐにわかったんですよ。ワンカットで全部喋んなきゃいけない。だから僕は押井さんに言いました。「これはカットを4つに割けるべきだ」って。

 

(会場、笑い)

 

小林治:それはもちろん映像プロデューサーというお立場からの。

 

鈴木敏夫:まあそれはいいですよ。僕のことを選んでくれたんだから、ちゃんとやろうと。ただ、これをワンショットで全部繋ぐっていうのは、無理があると思った。で、出来上がった映画を観てもそうでしたね。

 

押井守:セリフが入んなかっただけしょ(笑)実際にはカンペをいっぱい作って、こっちに貼りあっちに貼りさ、歩きながら喋ってるじゃない?

 

小林治:そうですね。

 

押井守:あれはカンペを読みながら歩いてるだけだから。

 

(会場、笑い)

 

鈴木敏夫:それを貼って喋ってるんですけど、テストは何回も繰り返したはずなのに、カンペを貼った後はね、本番一回しか撮ってないんですよ。僕はねもう一回やりたかった。

 

押井守:確かにワンテイクでオッケー出したの。

 

小林治:素晴らしいじゃないですか!

 

押井守:そうじゃなくて、、

 

鈴木敏夫:で、出来上がった作品を観てね、僕が市長に近づいていくじゃないですか?本来、僕の役は市長を睨みつけなきゃいけないんですよ。ところが僕はその手前にある電話を見てるんですよ。

 

小林治:え?電話を?

 

鈴木敏夫:電話を見てるんですよ。これはねやっぱ押井さんっていうのは粘りがない監督だなーと。

 

(会場、笑い)

 

押井守:なぜワンテイクでオッケーかっていうと、これ以上撮っても無駄だと思ったの!どんどん悪くなるに決まってるっていうさ。

 

小林治:でもそのセリフの量は押井さんが決められたんですよね?

 

押井守:そう。だってセリフくれって言ったんだから。

 

小林治:言ったんですね?鈴木さん。

 

押井守:言ったんだよ。今度はセリフがあるんだろうねってさ。それが条件だった。来たらさセリフは入ってないわさ、女優との絡みはどうした、とか。

 

(会場、笑い)

 

鈴木敏夫:だけどね、テストのとき真面目にやったんですよ。ザーッと見てこんなことのこと喋ればいいかなと思ってね、僕なりに工夫を凝らして、電話のシーンから市長のところに行くまで大体の感じで全部喋ったんですよ。それで上手くいったなーって思ったら、何か出てきたんですよ。それで何言うかなって思ったら、「シナリオ通りに話せ」って言うんですよ。

 

小林治:台本と違ってると?

 

鈴木敏夫:そう。

 

押井守:メチャクチャ喋ってたの。

 

鈴木敏夫:いや、いい感じになってたんですよ。

 

押井守:よくないよ!メチャクチャ喋ってただけ(笑)だから、そういうのを何テイク撮っても時間の無駄だから。現場も押してるし。

 

小林治:それでワンテイクで?

 

押井守:2時間くらいしかいられないって話だったから。

 

小林治:そうなんですか?

 

押井守:メイクも着替えも入れて2時間くらい。だったらそんなことやってる場合じゃないじゃない。カット割るなんて贅沢許されないよ。別にワンカットでやらなきゃいけない理由は何もなかった、はっきりいって。

 

鈴木敏夫:(笑)

 

押井守:でもさ、カット割るっていうのは実写の現場いけばわかるけど、同じ芝居を4回撮るんですよ。

 

小林治:そうですよね。

 

押井守:ポジション変えるだけなんだから。4つに割って撮ることじゃないんですよ。意味が違うの。っていうことは4倍撮るってことじゃない?んなこと出来るわけないじゃない。どうせやるたびに変わっちゃうんだから。だったらワンカットでやっちゃったほうがマシだっていうさ。

 

小林治:だそうです。

 

鈴木敏夫:でもいいシーンでしたね。

 

押井守:どこが(笑)

---

 

小林治:シリーズ前半部分通してみた感想を、鈴木さんから。

 

鈴木敏夫:竹中さんの回は、好きでしたね。1・2・3、あとは飛んで熱海の方かな?そこまでしかなかったから一本だけ観てないんですけど。こうやって通してみていって、どのシリーズが面白いかって、押井さんじゃない人が演出しているやつ、これが大体面白かったですね。

 

だって押井さんだけがちょっと違う演出してるでしょ。それはなるほどなあと思ってね。押井さんになるといつもの押井さんだから、大体わかってるじゃないですか。皆さんよく観ますね、それ(笑)

 

(会場、爆笑)

 

鈴木敏夫:熱海のやつだって、本も読んでなかった状態でその場に向かったわけだけど、観始めてどういう話かわかったですよね。あ、こういうことやろうとしてるんだっていうね。あはは!(笑)

 

押井守:あはは、じゃないよ!

 

小林治:そこは長い付き合いというのもあるんでしょうけども。ちなみに押井作品の主な作品リストも作ったのでちょっと見てほしいんですが、「イノセンス」っていう作品あるじゃないですか?あれはどうだったんですか?鈴木さん的には。

 

鈴木敏夫:あれはね、途中からですからね。手も足も出ないというのか、押井さんの言う通りにやりましたよ、僕は。プロデューサーとして。

 

小林治:関わってますもんね、あの作品は。

 

押井守:「イノセンス」に関して鈴木敏夫という男がやったことは2つあるの。タイトルを決めたの。「イノセンス」っていうタイトルを決めた。あとはエンディンングの曲を決めたの。その2つだけ。

 

小林治:ただタイトルはすごく覚えやすい、、

 

押井守:タイトルって一旦つけちゃうとそれ以外ではあり得なくなっちゃうだけ。今でもIGでやってる連中は、「GHOST IN THE SHELL PART2」っていう。「攻殻2」ってみんな未だに言ってるんだから。大体最初はそういうタイトルだった。したらね、「機動隊映画なんて誰が観るんだ」っていうさ。それで「イノセンス」っていうタイトルになっちゃっただけ。でも映画のタイトルを決めるって、実は一番大事なことでプロデューサーがやるべきなんですよ。僕も自分ではやろうとは思ってないから。

 

小林治:あ、そうなんですか?

 

押井守:うん。そこはちょっと感謝してんの。「イノセンス」っていうタイトルもそんなに嫌じゃないっていうかね、まあ悪くないっていうか、ちょっと良いかなって。

 

(会場、笑い)

 

小林治:一回下げましたよね?何で下げるんですか?!

 

押井守:(笑)。プロデューサーって極論すれば、映画にタイトルをつけること。これは一番大事な仕事なんですよ。それはそうだよね?

 

鈴木敏夫:その通りです。

 

押井守:それはね、いつかそういう話したことあって、感心したことあるの。プロデューサーが一番やらなきゃいけないことは何だって。それは映画のタイトル決めることだって。「風の谷のナウシカ」とかね。あれだって最初は全然違うタイトルだったんだから。あれは誰がつけたの?敏ちゃんつけたの?

 

鈴木敏夫:まああれは宮さんがああやって考えたんだけど、東映で封切ろうというときにね「風の戦士ナウシカ」とかね色々言われてね(笑)

 

押井守:そうそう。

 

鈴木敏夫:大変だったんですよ。

 

押井守:「風の戦士ナウシカ」の前はたしか「トルメキア戦役」とかね。

 

鈴木敏夫:そう。「トルメキア戦役」とかね。

 

押井守:「風の谷のナウシカ」で「の」がつくスタイルが定着しちゃったんですよ。

 

小林治:そうですね。

 

押井守:結局そういう意味でいうと、タイトルが一種会社のスタイルまで決めちゃったっていうさ。確かにプロデューサーにとって映画のタイトルを決めるっていうのは大仕事だし、映画の顔を作ることだから。タイトルで映画の中身がわからないといけないっていうさ。ナウシカの映画なんだからナウシカの名前を出すべきだっていうさ。それはちょっと感心したことある。その辺のことはね、多少感じてたことはたしかにある。それ以外はロクなもんじゃない。ロクなもんじゃないっていうか、結局作業がはじまってきてから入ってきたわけだから。色々あそこ直せここ直せっていうわけよ。

 

鈴木敏夫:そんな言わないよ。

 

押井守:言ったんだよ!

 

(会場、笑い)

 

押井守:絶対に嫌だって言っただけ。1カットも直さないって言ったの。それを条件で一緒にやろうって。

 

鈴木敏夫:ちょっとは直したよね?

 

押井守:あ、ちょっと直した。

 

鈴木敏夫:(笑)

 

押井守:最後のところね。

 

鈴木敏夫:そうそうそう(笑)

 

---

 

鈴木敏夫:今回の「パトレイバー」観ながら悩んじゃった。押井さん、熱海のことどう思ってんのかなって思って。

 

押井守:結構気に入ってるけど。

 

鈴木敏夫:この企画をもっと前にやってたら、熱海への情感が出たなって気がしたの。当たってるよね?

 

押井守:情感?情感ってなに?

 

鈴木敏夫:愛情っていうかさ。

 

押井守:ああー。

 

鈴木敏夫:だってね、最初始まるじゃないですか、熱海はかつてこうだったって。おそらくそうやって考えたのは熱海へ移ったころ。で、おそらくその時に考えた内容は、皆が熱海ってこんな良いところなんだって目を向ける作品、そうなってたんじゃないかなっていうのが、今回あれを観たときの僕の感想なんですよ。当たってるでしょ?

 

押井守:あのね、半分当たってる。

 

鈴木敏夫:半分(笑)

 

押井守:っていうのはつまり、今回やった熱海の映画っていうのは、熱海に引っ越した当時考えた話だから。

 

鈴木敏夫:でしょ?

 

押井守:うん。

 

鈴木敏夫:だって引いてるんだもん。今回。

 

押井守:そう。

 

鈴木敏夫:だから最後が変なのよ。

 

押井守:変ってなに!?変だけど。

 

鈴木敏夫:変な話終わってないのよ。熱海に対して冷たいもん。だからそう思ったのよ。ちょっと鋭いでしょ?

 

押井守:鋭いっていうか、半分ぐらいはいつも当たるなっていう。大体いつも半分ぐらい当たってるんだよ。

 

小林治:えーそろそろお時間のほうが、、

 

鈴木敏夫:もう時間なんだ!(笑)

 

小林治:来たようなので。結局お互いのことはよくわかってるってことが我々にはよくわかったトークショーだったと思います。ありがとうございます。

 

鈴木敏夫:だから、この熱海の作品は面白かったです。いろんな意味で。いま押井さんが何考えてるかよくわかって。

 

小林治:是非とも皆さんもじっくり観ていただけるとうれしいです。今回の「THE NEXT GENERATION パトレイバー 第4章」は9月20日からBSスターチャンネルや各種動画配信サイトでも放送配信が行われますので、もし今週劇場の来られないお友達がいましたら、教えて一緒に観ていただけたらうれしいです。

 

そしてそのスターチャンネルでは、パトレイバー情報をお届けする「週刊パトレイバー」という番組を毎週土曜日に無料放送しております。どうやら今回登壇する前に鈴木さんも取材を受けられたそうなので、是非とも皆さんそこで何を言ってるか。押井さんがいないときはどんな発言をするのか、確認いただけたらと思います。よろしくお願いします。

 

じゃあ最後にお二人に今日の感想を伺えればと思います。

 

鈴木敏夫:押井さんも還暦を超えて頑張ってます!皆さん応援よろしくお願いします。

 

(会場、拍手)

 

小林治:ありがとうございます。では押井さんからもお願いします。

 

押井守:で、どうするの?

 

(会場、爆笑)

 

鈴木敏夫:え?

 

押井守:だからどうするんだって!

 

鈴木敏夫:さっきのスターチャンネルのさわりをお伝えしますと、「押井守への期待、それを話してほしい」と。で、僕は一言で答えました。「引退」って(笑)

 

押井守:んなこと聞いてないよ。ちゃんと答えなさいよ!

 

鈴木敏夫:こんな押井さんですが、かわいがってあげてください!

 

小林治:お二人に大きな拍手をお願いします!!

 

(会場、拍手)

 

ーナレーションー

鈴木さんと押井監督の腐れ縁的トークショー、いかがだったでしょうか。

 

押井守総監督の「THE NEXT GENERATION」の最新作 第6章は、11月29日に2週間限定で上映予定。そして現在シリーズ第5章までDVD&Blu-rayが好評発売中。またBS10チャンネルのスターチャンネルでは、テレビ独占放送中です。

 

また来年の春のゴールデンウィークには、