鈴木敏夫のジブリ汗まみれを文字起こしするブログ

ポッドキャスト版「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」の文字起こしをやっています。https://twitter.com/hatake4633

CS人気番組「この映画が観たい」との共同企画「鈴木敏夫のオールタイムベスト」

2015年8月2日配信の「鈴木敏夫ジブリ汗まみれ」です。

http://podcasts.tfm.co.jp/podcasts/tokyo/rg/suzuki_vol383.mp3

 

鈴木:映画だけじゃなくて、すべての原体験って映画館の中なんですよね。というのは、僕の親父とお袋が大の映画ファンで、親父が日本映画でお袋が洋画。というわけで、代わりばんこに連れられてって(笑)それで映画ばっかり一週間に何本も観るかっていう環境の中で育ったんだけれど。

 

一番最初に観た映画はね、なんか劇映画だったんだろうけれど、関東大震災を扱った映画。たぶんこれじゃないかって、ある人が教えてくれたんだけど、もう一度観直してなくて、ちょっとタイトルがわかんないんですけど、関東大震災の最中のドラマでしたね。

 

あとは、僕らの時代だと東映の時代劇、全部観てましたよね。時代劇に限らないですけどね。それと、洋画も特に思春期の頃っていうのかな、お袋と二人でね、「007」を観まくるとかね(笑)そんなことやってました。

 

ーナレーションー

鈴木敏夫ジブリ汗まみれ。

 

今週は、CS映画専門チャンネルムービープラス」の人気オリジナル番組「この映画が観たい」との共同企画をお送りします。

 

テーマは「鈴木敏夫のオールタイムベスト」。鈴木さんが選ぶ名画の数々のエピソードを交えてご紹介します。まずはこんなお話から。

 

続きを読む

スタジオジブリで行われた日本テレビ新入社員研修 ゲスト:奥田誠治さん、中村知純さん

2015年6月24日配信の「鈴木敏夫ジブリ汗まみれ」です。

http://podcasts.tfm.co.jp/podcasts/tokyo/rg/suzuki_vol374.mp3

 

鈴木:鈴木です。よろしくお願いします。

 

会場:よろしくお願いします。

 

中村:今日新入社員30人います。30人いて大体92年ですか?豚(紅の豚)の年ですね。好きなジブリ作品というのを事前にアンケートをとったら一、一番が同率でトトロと千と千尋。二番が魔女と耳すまもののけがもう一つあるか。あと一票ずつ入ってるのが、紅の豚とぽんぽことラピュタかぐや姫。というような感じなんですけども。

 

今日は、ここに鈴木さんと奥田さんを呼んだのは、鈴木さんと奥田さん、お二人の間のお話を聞かせたいな、というような企画なんです。

 

ーナレーションー

この4月に入社した新入社員の方々も2ヶ月が過ぎて、これから新しい部署に配属される方も多いと思います。

 

初志貫徹、迅速果敢、一所懸命、誠心誠意、切磋琢磨、有言実行。あなたが新入社員に贈るとしたら、どんな言葉を贈りますか?

 

鈴木敏夫ジブリ汗まみれ。

 

今週は、スタジオジブリで行われた日本テレビの新入社員研修の模様をお送りします。出席者は日本テレビ奥田誠治さん、鈴木さん、司会は人事部の中村知純さんです。まずはこんなお話から。

 

鈴木:今日皆さんが皆さんいらっしゃるでしょ。そうすると当然ね、その日の日程ってあるじゃないですか。何時から何をやるって。したらね、昨日の夜も奥田さんと一緒でね、昨日の夜から奥田さんがね、何言い出したかと言うとね、「明日は昼飯は何食べるんですか?」(笑)

 

中村:(笑)

 

鈴木:大体奥田さんってね、見てお分かりのように知純さんもそうなんだけど、2人共ね、関心の1番大きいものは何かって、食べることなんですよね。

 

(会場、笑い)

 

鈴木:昨日の夜も奥田さん「何食べますか?」って言って、何言ってるんだろうって思ってね。挙げ句の果て、今日こうやって二人でやることになってたんですけど、その内容も奥田さん全くわかってなくてね。「えー僕何かやるんですか?」って言っててね。「それは知純が悪いんだろ」とか何か言ってたんだけど。

 

(会場、笑い)

 

鈴木:それで僕もちょっと用事があって、今日の予定っていうのがあって、一番に宮崎駿と打ち合わせがあったんですよ。それで色々話していたら最初は12時半。僕は宮さんと11時半に会って、ちょっとジブリと離れているところでやってるから、じゃあ45分には行きますよって。やってたら、そうしたら今日になって。

 

奥田さんが僕にLINEをくれたんですよ。何かなって思ったら「13時になります」って。昨日12時半って言ってたわけでしょ。それが45分になって挙げ句の果ては13時。何考えてるんだろうって。挙げ句の果てに、美味しいものが食べたい。

 

(会場、笑い)

 

鈴木:午後2時にこの二人の話し合いをやるっていうのと、その前にはスライドを見えることになってるわけでしょ。そうしたら時間なんか、ありゃしないんですよ。

 

それと同時に、僕がサラリーマンとしていかに真面目にやってきたかっていう話を皆さんにしたいんですけどね。

 

中村:(笑)

 

鈴木:僕が人と約束をするじゃないですか。例えば、昼飯でも何でもいいですよ。仕事のあれでも。僕はある時からずっと守ってることは何かっていうと、約束の時間の15分前に行くっていうやつなんですよ。これね、ずっと守ってきたんですよ。

 

やっぱり早めに行っておけば、余裕も生まれるじゃないですか。もしもの時、例えば、電車が事故にあって遅れたりとか、何かの時にもね、15分から30分前もってそこに行っておくと、仕事における支障が生まれないんですよ。

 

こうやって話してると色々思いつくんですけど、じゃあなんで僕はそんなことをやるようになったのか。元々そうだったのか。それともある時からなのか。で、さっきふと思った。それは何かと言うとね、そうか!と思ったんですよ。奥田さんを見てたからなんですよね。

 

奥田:(笑)

 

鈴木:皆さんご存知ないと思うんですけど、これから付き合ってわかると思うんですけど、僕の知る限り、奥田さんってね、人と約束してその時間に現れたことはないんですよ。

 

(会場、笑い)

 

鈴木:僕にとっては、反面教師でしたね。だから僕が言いたいことはわかりますでしょ。要するに、そんな大きな望みや夢や希望を抱いて、仕事をしていたわけではなく、まず食うことが大事だろって。この1点。

 

それから、人との約束はちゃんと守ろうって。これはサラリーマンとしてもの凄く大事だと思うんですよ。奥田さん、どう思います?

 

(会場、笑い)

 

奥田:ちなみに言い訳するつもりはないんですけど、13時って言ったでしょ?着いたのは45分なんですよ。なんでそうしたかっていうと、鈴木さんは前、多目に言っておけって言ってたんで、それより早く着くと「早く着いたんだ」って言われるっていう、そういうことを今日やったつもりだったんですけど、何も言い訳はしないです。

 

中村:なんで奥田さんは許されるんですかね。鈴木さんは時間に厳しいって、鈴木さんの周りの人みんな知ってて、会議に遅れると鈴木さんすごい機嫌悪いから、遅れるのだけは毎回注意して。電車がちょっとでも事故れば、どうしようって思ったこと何回かあるんですけど。奥田さんは許してないんですか?

 

鈴木:僕ですか?

 

中村:はい。

 

鈴木:諦めてますね。

 

(会場、笑い)

 

鈴木:あのね皆さん、まだ入ったばかりだから中々そういうことを考えることもないんでしょうけど、もし偉くなりたかったら、時間を守る。どうですか?知純さん。

 

中村:そうですね、、、そうだよ!

 

(会場、笑い)

 

鈴木:会社ってね、面白いんですよ。見てて。偉くなった人の大体の特徴ってね、時間より前に来るんですよ。その人だけが出世してるんですよ。僕の知る限り、時間に遅れて出世した人はいません!どうですか?

 

中村:そうなんですね?奥田さん。

 

奥田:そうなんでしょう。

 

鈴木:僕はね覚えてるんですけどね、僕自身がその被害に遭ったわけじゃないんですけど、奥田さんが自分からある映画をやってて、映画の配給会社の人、宣伝の人、みんな集めて大事なミーティングをしたいと。そういう時があったんですよ。したらね奥田さんが、あれ確か午後4時でしたかね。4時に来て、みんな集まってこの作品の方向性を決める大事な会議だと。それでみんなを召集したわけですね。それで当日になったわけですよ。

 

東宝の宣伝をやってた人が非常に真面目な人で、Yさんっていう人なんですけど。そのYさんがみんな集まってるし、午後4時になるわけですよ。奥田さん来ないんですよ。5分経ち10分経ち、普通遅れるっていっても10分20分、せいぜいそのくらい。ところが、30分経っても来ないわけですよ。

 

だからそのYさんは仕方なくね、「ちょっと話進めてましょうか。皆さん。ご都合があるんで」と。それで色々話し合う中、ある方針が決まっていくんですよ。で結局、奥田さんが現れたのは5分前。4時5分前じゃないですよ。5時5分前。

 

(会場、笑い)

 

鈴木:普通ね、なんとなく皆さんだってこれから社会人になって、そのぐらいのこと当たり前だと思いますけど、「すいませんでした」でしょ。ところが、違うんですよ奥田さんというのは。来ていきなり、「あ、今どうなってる?」って。

 

(会場、笑い)

 

鈴木:それでYさんが、こうこうこういうわけでこういう方針で進めようと思ってるんだと。だから、奥田さん来れなかったみたいなんで、今日ちょっとみんな予定があるんで、17時になったらみんないなくならなきゃいけないんで、どうですか?この方針で、って言った途端、奥田さんの顔見たらね、顔が真っ赤なわけですよ。怒ってるんですよ。

 

これ聞いた話ですよ。だからわからないですよ。聞いた話なんだけど、奥田さんがいきなり何をやったか。「なんで俺がいない時にそんなこと決めるんだ!」。

 

(会場、笑い)

 

鈴木:これね、いま笑ってるけどね、そういう人が出てくるのよ。どうする?そういう人が出てきたら。自分より上司で。それで全部ひっくり返そうとしたんですよ。それ。もっかいやり直しだと。それで自分が遅れたことに関してはびた一文謝罪の謝の文字もない。ありましたよね?

 

奥田:まあ一応謝ったんですけどね。

 

(会場、笑い)

 

奥田:そんなギリギリではなかったですけどね。まあ遅れたのは間違いないですね。

 

鈴木:奥田さんはちなみにね、朝から色んな予定入ってるじゃないですか。最初こそちゃんとした時間に入るでしょ。ところが、次から色んな打ち合わせあるじゃないですか。全部遅れていくんですよ。

 

奥田:入れ過ぎだって言われたとこはあるんですけどね。鈴木さんの場合、余裕みて必ず無理な入れ方絶対しないですよね。あと、ご飯は必ずとるっていう。何があっても、食事抜いたりとか、夜も絶対抜かないですよね。食事は。

 

鈴木:そうなんですよ。働くってことは簡単にいうと、人から給料貰うってことじゃないですか。そうしたら、文句言われないようにしようと思ったんですよね。文句言われないためには時間を守る。だから、人との打ち合わせも絶対遅れないようにするって、実はサラリーマン精神なんですよ。だって、自分で経営してるわけじゃなかったから。

 

でも奥田さんなんかは同じような身分でありながら、そういうのを守らなかったっていうのは何だったんですかね。

 

奥田:いやいや(笑)完璧守らなかったっていうわけじゃないんでしょうけどね。

 

鈴木:いや守ってないですよ。

 

---

 

鈴木:会社の中で奥田さんって、どういう評価なんですか?

 

(会場、笑い)

 

中村:それよく言われるじゃないですか。奥田さんは名刺はなんとか部長とかそういうのじゃなくて、奥田さんの肩書は奥田さん。そういう風にウチではよく言われたよ?部署移動とかそういうのじゃなくて、奥田さんの肩書は「奥田」っていう肩書だからって。

 

鈴木:ちょっと分かりにくいかもしれないですけどね。奥田さんってね、何しろ日本テレビの人だから日本テレビにもこういうサラリーマンがいるっていうことで、皆さんも認識していただくとどうかなって思うんですけど。

 

実はね、宮崎駿っていう人がアカデミー賞とか色んな所に行こうって言いますよね。行かなきゃいけない時ってやっぱりあるんですよ。そうすると、僕なんかも行くんですけど、宮さんの方から「奥田さんも行くの?」って来るんですよ。

 

これね、日本テレビ広しといえど、人数が何人いるか知らないですけど、奥田さん1人ですよね。奥田さんってね、毎晩用もないのにジブリに来てたんですよ。用もないのに。早い時で22時とか23時。遅くなると24時過ぎて、1時2時くらいとかね。毎日来てるんですよ。

 

そうすると、宮崎駿の方もね、何となく毎日来る人としてね、自分の仕事が終わりかけた頃、僕もいたんですけど一緒に雑談するようになったんですよ。本当に毎晩ですよ。それが1年2年じゃなかった。10何年。その間にね、宮さんがどこか行く時には、じゃあ奥田さんもっていうことになり始めるんですよ。

 

そうすると、皆さんね、その時に思うと思うんですよ。何の話をしてたんだろうって。当然思いますよね。だから僕、先に答え言っちゃいますね。僕の知る限り、奥田さんが10何年間毎晩ジブリへ来て、仕事の話はゼロでした。

 

中村:奥田さんがいま色々書いてらっしゃるのを見ると、「行ってみると、ジブリではこんなに面白いことが一日中起きてて、それを知るのが楽しくて毎日行ってた」って書いてあるんですけど。

 

奥田:夜行って、最終で四谷から乗ると、1時過ぎに着くんですよ。東小金井にね。東小金井に着いてひとしきり喋ると、終わる頃2時半とかそのぐらいになるじゃないですか。小一時間喋ってましたね。毎晩ね。

 

それで帰りはね、鈴木プロデューサーが送ってくれるんですよ。車で。その頃鈴木さん、ホンダのワゴン乗ってたんですよね。僕の家は高円寺だったんで、高円寺まで。

 

鈴木:毎晩ですよ。タクシー代なるといくらになるのか。

 

(会場、笑い)

 

奥田:その時に鈴木さんが何をしてたかっていうと、その日に起きたジブリのことを、たぶん鈴木さんも頭の中を整理するためにずっと喋ってくれてたんですよ。それが鈴木さんの喋りだから多少の誇張はあるんだけど、DVDの再生のようにね、映像として浮かんでくるくらい、リアルな話が毎晩聞けたんですよ。

 

僕も最初聞いてて、そんなこと本当にあるのかなってことが色々聞いていくと、もっとそれ以上なんだけど、鈴木さんのその日に起きたジブリの出来事のニュースというか、その日の総まとめを僕は毎晩聞くことが出来て、本当にそれは大きかったですよね。昼間いないんだけど、自分がジブリにいたような錯覚が起きるんですよね。

 

鈴木:これみんな騙されちゃダメですよ。なんでかっていうと、そういう話を聞いてると、いかにも仕事をしていたっていう感じを出そうとしてるわけでしょ。

 

(会場、笑い)

 

鈴木:でも現実は何だったかっていうとね、当時奥田さんは、自分が住んでた家があったんですけれど、引っ越しを目論んでたんですよね。土地を探して、新しい家を買いたい。宮さんが来ると、何の話をしてたかっていうと、毎晩のようにその話になるわけですよ。

 

挙げ句の果ては、じゃあ今住んでる家はどうなんだっていうことでね、ホワイトボードに宮さんが見取り図を描いたりしてね(笑)

 

そして、奥さんの話、子供たちの話、なんてやってるうちに宮崎駿の中では、奥田家の全貌を掌にしたんですよ。で、そういうことがあった故に、後に奥田さんは本当に家を建てるんだけど、なにしろ人の家の内情を聞くっていうのはね、恐ろしいんですよ。簡単にいうと、人間関係が抜き差しならなくなるんですよ。そうすると、旅行行く時も、じゃあ一緒に行くかって。そうなって行くでしょ。

 

そうしたら、面白いことが起きたんですよ。皆さんもこれから経験する人が多いんじゃないかと思うんだけど、会社っていうのは今大きく言って、いわゆるスペシャリストを作るよりも、色んな部署を経験させて、その中で仕事を選んでいくっていうことがあるでしょ。

 

ところが、奥田さんはね、毎晩毎晩ねジブリに行くうちにね、宮崎駿ともそうなんだけど、ジブリとも抜き差し出来ない関係が作られちゃって、挙げ句の果てどうなったかというとですね、奥田さんの最大の特徴ってね、ある年からずっと映画部なんですよ。今日に至るまで。そこからみんなも外に出そうとしたし、奥田さんも時にはね、外に出たいと考えたかもしれないけれど、出られなくなっちゃったんですよ。

 

出られなくなった結果、なんともうすぐ定年なんですけどね(笑)ここまでずーっとジブリ担当の映画部の人になっちゃったんですよ。これは非常に珍しいケースですよね。

 

中村:いないですね。奥田さんは一回も迷ったことはないんですか?

 

奥田:あんまりないですね。

 

鈴木:ていうのか、これしか出来ない。

 

中村:(笑)

 

鈴木:知純さんなんかはどう思いました?

 

中村:僕は鈴木さんの話聞いて、一個自分の奥田さんと過ごした時間を思い出したんですけど、男鹿和雄さんを僕らの特番に出そうと、口説かなきゃいけない時。

 

男鹿和雄さんっていう人はテレビ大嫌い。カメラを向けられると、15分蹴られてると思うっていうくらい大嫌いな人で。テレビの人と喋るのが一番嫌だから、テレビ局となんかやりたくないっていうところから始まって。

 

特番出るか出ないかって口説きに行く時、奥田さん一緒に来てくれて。「話してごらんよ」って言って僕が色々話したと。で、話す中で

テレビの番組にああしてくれ、こうしてくれ、動いてくれっていうのが本当に嫌で。日本テレビはそういうことしないし、日本テレビの言ってることって絶対違うことだから、日本テレビを信じてもらえればっていうことをずっとしてたんです。

 

その時に奥田さんがですね、僕に向かってもの凄く怒って。「知純さ、日本テレビってなんだよ?」って。「日本テレビに出て欲しいんじゃなくて、誰が出て欲しいの?これ。知純が出て欲しいんじゃないの?」って言われたんです。

 

で、僕はその時にですね、奥田さんってこうやってジブリと仕事をしてきたんだって凄いわかって。

 

鈴木:なるほど。

 

中村:大事な日なんですよ。未だにそれ、なんか言われるとそれ言うけど。奥田さんの肩書は奥田さんっていう話と、今の話はすごい繋がるのがあって。

 

その時も「そうです。僕が出て欲しいんです」って言って、その場で「わかりました」って言ってくれたんですよね、男鹿さんが。だからそれはよく思い出しますね。

 

奥田:今言われて思い出した。言った言った。

 

中村:凄い怖かったですよ。あの時奥田さん。

 

鈴木:奥田さんはそういうことでいうと、個人名で仕事をしたってことですよね。

 

奥田:そうですね。

 

鈴木:日テレの看板はあるにせよ。奥田さんの口から「日テレとしては」って聞いたことがないですね。

 

---

 

鈴木:僕宣伝やる時に役に立ったのは、奥田さんなんですよ。実は。奥田さんってね、世の中の流れに沿って生きてる人なんですよ。

 

どういうことかっていったら、まだみんなが騒いでない時からね、ドンキホーテ行ってたしね。

 

(会場、笑い)

 

鈴木:僕なんか連れてかれるわけですよ。そうすると、なんなんだここは?ってなるわけでしょ。奥田さんが何に興味を持っていくのかっていうのは、僕にとってはすごい役に立った。だって奥田さんがやってること調べれば、いま流行ってることだから。僕自身はそういうの興味なかったから。

 

だから僕の場合ね、自分の感覚で仕事したことないんですよね。ある意味で。いつも取材。何がいまどうなってるのかっていうことは、聞かないとわからない。でも、大衆心理がいまどこにあるかは、奥田さんを見ていれば大体わかる。

 

勉強の出来る人ってね、ある混沌があったらその中から色んな要素を引っ張りだして、それである考え方作るでしょ。僕これってね、実は良い方法とは思わないんですよ。

 

さっきの奥田さんの話っていうのはね、一個一個個別に覚えちゃうんですよ。すごい数になるでしょ。でも仕事をやっていく時に、宣伝をやっていくときに大事なのはそっちの方。いまあれが具体的にどうなってるって。だと思いますよ。から、街歩いてね色んなものを見ているのが一番大きいんじゃないの。

 

そうすると、僕なんかも言ってたんだけど、奥田さんから何が得られるかっていうとね、生ネタなんですよ。新聞だとか雑誌だとかテレビで報道されるってね、大体流行ったからでしょ。それじゃ遅いわけ。テレビとか新聞とか雑誌に載る、ネットもそうだけど、大体それの半年前に本当に何かが起きてるわけ。それを見つけた方がいいよね。たぶん。

 

中村:でも今ほとんど検索世代だから、本物を見に行くとか、本当は確かめに行くとか、生で見に行くとかって、する・しないじゃなくて、自然としない機会が増えちゃう。

 

鈴木:それでもいいんですよね。ただ遅れてますよってことなんですよ。それだと。誰かがアップしたものってその時点で遅いから。それ以前のものを見ないと。と、僕なんか思いますけどね。

 

女性:ありがとうございました。

 

中村:じゃ最後でいいのかな。じゃムロフシ。

 

ムロフシ:お話ありがとうございました。ムロフシシュウヘイと申します。お二人は今までたくさんお仕事をされていて、たくさんの作品に

関わられたと思うんですけど、その中でもこういう仕事、この作品はこういうことが出来たから楽しかった、こういうことを感じられたからこの仕事は楽しかったなっていうのがあれば教えていただけると嬉しいです。

 

鈴木:僕はね、全部忘れちゃうんですよ。忘れた方がいいから。覚えてたらロクなことにならない。成功譚にしがみついたら終わりだから。と思いますよ。だから常に初心に戻って、もう一回最初から考えたらいい。という気がします。

 

ムロフシ:ありがとうございます。

 

鈴木:はい。頑張って下さい!

 

中村:本日はありがとうございました。

「教養について」をテーマにお送りします。 ゲスト:石飛徳樹さん

2015年10月29日配信の「鈴木敏夫ジブリ汗まみれ」です。

http://podcasts.tfm.co.jp/podcasts/tokyo/rg/suzuki_vol392.mp3

 

―ナレーションー

今週は、「教養について」をテーマにお送りします。聞き手は朝日新聞社文化暮らし報道部編集委員・石飛徳樹さんです。

 

なおこれは、8月20日朝日新聞に掲載された鈴木さんへのインタビュー音源です。まずはこんなお話から。

 

続きを読む

番組リスナーの佐藤さんがれんが屋へ! ゲスト:佐藤譲さん

2009年10月6日配信の「鈴木敏夫ジブリ汗まみれ」です。

http://podcasts.tfm.co.jp/podcasts/tokyo/rg/suzuki_vol105.mp3

 

―ナレーションー

れんが屋に珍しく、若いお客様がやってきました。

 

鈴木:なんか遅れて大学卒業したんだよね?

 

佐藤:留年しまして。

 

鈴木:あ、留年したんだ。

 

佐藤:で、一昨日卒業してきました。

 

鈴木:あ、卒業出来たんだ?

 

佐藤:どうにか。

 

鈴木:良かったね。

 

佐藤:どうにか終わりました。

 

鈴木:それで来年の4月からある会社に入ることになってる。それでその前、東京の出版社でアルバイトくらい半年やってみようと。

 

佐藤:そうですね。出版不況で正規でアルバイトは雇えないと言われて。

 

鈴木:あ、そうなんだ。

 

佐藤:お手伝いでたまに呼ぶから来て、っていう感じで。だからそれほど働けないっていう感じですね。

 

鈴木:仕事ないんだ?

 

佐藤:今ないですね。

 

ーナレーションー

彼の名前は、佐藤譲君。22歳。

 

このジブリ汗まみれのヘビーリスナーです。

 

佐藤:汗まみれは、最初の頃は聴いてなかったんですけど、全部ポッドキャストで落としてって感じですね。

 

奥田:だって清田タクシーの浜野さんもどっか行っちゃったしね。この番組が出ちゃったことがキッカケになっちゃったんですかね。

 

ーナレーションー

以前、インターネットサイトの取材で、鈴木さんのインタビュー記事を書いたことのある佐藤君は、この汗まみれのDVDがリリースされた時には、1万字に及ぶ分析とレビューを試写室レンガ座に寄せてくださり、スタッフの度肝を抜きました。

 

そして、京都の大学を卒業して、来春の就職に備えて東京にやってきた彼は、鈴木さんがれんが屋に招いたんです。

 

続きを読む

叶井俊太郎・倉田真由美夫妻がれんが屋へ!【後編】

2009年9月24日配信の「鈴木敏夫ジブリ汗まみれ」です。

http://podcasts.tfm.co.jp/podcasts/tokyo/rg/suzuki_vol104.mp3

 

続きを読む

叶井俊太郎・倉田真由美夫妻がれんが屋へ!【前編】

2009年9月24日配信の「鈴木敏夫ジブリ汗まみれ」です。

http://podcasts.tfm.co.jp/podcasts/tokyo/rg/suzuki_vol103.mp3

 

倉田:あ、どうもこんにちは。今日はよろしくお願いします。

 

鈴木:よろしくお願いします。鈴木と申します。  

 

倉田:倉田です。よろしくお願いします。

 

叶井:どうもこんにちは。

 

鈴木:ああ、叶井さん!(笑)さん付けしたりして。どうぞどうぞ。適当に。

 

倉田:はい。

 

鈴木:お腹膨らんでるんですね。

 

倉田:はい。

 

鈴木:これ、叶井の子なんですか?

 

倉田:はい。

 

鈴木:本物ですか?

 

倉田:そうです(笑)

 

ーナレーションー

めっきり秋の気配が深まったれんが屋に今夜は、温かい声が響いています。

 

あの話題のカップルが、鈴木さんを訪ねてきたからです。

 

鈴木:以前からちょっと色々知り合いだったものですから。

 

倉田:ああ、なんか伺ってます。

 

鈴木:4回目。

 

叶井バツ3なんですけど。まあ4回目の、、

 

鈴木:倉田さんの方は?

 

倉田:私はバツ1です。

 

鈴木:2回目?

 

倉田:はい。

 

鈴木:2つ足して6ですね(笑)

 

叶井・倉田:(笑)

 

叶井:まあそうなりますね(笑)

 

倉田:妊娠しなかったら、まだそういうことは伏せてたかもしれないです。結婚もいつになったかわからないですよね?

 

鈴木:妊娠しようと思ったんですか?

 

倉田:していいと思いました。

 

鈴木:彼の子を?

 

倉田:そんなビックリした顔をされなくても(笑)

 

叶井:(笑)

 

鈴木:いや、それ理由はなんなんだろうと思って。

 

倉田:いややっぱりこの人を良いなと思ったからじゃないですかね。

 

叶井:普通な回答。

 

鈴木:いつ知り合ったんですか?

 

倉田:知り合ったのはだいぶ前なんですよ。5、6年前。

 

鈴木:そんな昔なんだ。

 

倉田:ただ、そこからブランクがあって全然会ってない。一回顔を合わせただけで。ただその時印象に残ってましたね。

 

叶井:映画のパーティがあって。夕張映画祭ってあるじゃないですか?

 

鈴木:はいはい。夕張で?

 

叶井:東京で夕張映画祭の出品作品の関係者が集まるパーティがあって、そこで偶然お会いして。

 

倉田:でも、その時一回だけですよね?

 

叶井:それ一回きりですね。

 

鈴木:何が印象に残ったんですか?

 

倉田:何となく良い印象が残ってたんです。

 

叶井:良い印象。印象は良いみたいですね。第一印象。

 

鈴木:君に訊いてないから(笑)

 

倉田:(笑)

 

ーナレーションー

ネットやワイドショーでこの夏話題を集めた2人。映画配給会社トルネードフィルムの、というより、600人斬りの野獣・叶井俊太郎さんと、『だめんず・うぉ〜か〜』で知られる知性派の漫画家であり、コラムニストの「くらたま」こと倉田真由美さんです。

 

鈴木:叶井はでもね、魅力がある。

 

叶井:あ、そうなんですか。

 

鈴木:うん。僕男だけど認めますよ。

 

叶井:ありがたいです。

 

倉田:それ、どういう意味ですか?

 

鈴木:あのね、僕なんかは最初会った時、一緒に仕事したいなと思った。

 

倉田:あ、そうですか。

 

鈴木:そう。でもね、僕が珍しいらしいんですけどね(笑)

 

倉田:(笑)

 

叶井:そんなことないですよ!そんなことないです!

 

鈴木:だから何年前か忘れちゃったけれど、5、6年前?もっと前か。

 

叶井:6、7年前、、

 

鈴木:『ダーク・ブルー』という映画をね。

 

叶井:2003年とか。

 

鈴木:初めて会った時にね、図々しいでしょ?

 

倉田:ああ、そうですね。

 

鈴木:それで言ってることは全部仕事に関しては本当だから。そういう人って、なんか魅力があるんですよ。

 

倉田:ああ、なるほどね。

 

鈴木:それで一緒にやっても余計なこと考えないで済む。上手くいくかどうかわからないけど、やってみようかなって。彼が『アメリ』やったとか何にも知らなくて。でもそういうのやってみるのも良いかなって。人で選んだ仕事だったんですよ。

 

倉田:ああ、そうだったんですか。

 

鈴木:そうなんです。だからもっも色んな人に推薦してるんですよ。「叶井と一緒にやったら?」って。

 

叶井:(笑)

 

鈴木:何しろこういう不景気な時代でしょ?そうしたら、叶井1人入るだけで、そのチームの雰囲気がガラッと変わる。だから絶対一緒にやるべきだよって。でも中々みんな首を縦に振ってくれない。

 

倉田:(笑)

 

叶井:振ってくれないですね。

 

鈴木:何でなんですかね?会社大丈夫なの?

 

叶井:何とかやってます。

 

倉田:でも危ないんですよね?

 

叶井:ギリギリですね。

 

鈴木:トルネード?

 

叶井:トルネードフィルムですね。

 

鈴木:その前の会社、何て言うんだっけ?

 

叶井:その前はファントム。

 

鈴木:ファントムか。あれ半年でクビになったもんね?

 

叶井:1年ぐらいですかね。

 

鈴木:あれ1年やってたんだっけ?

 

叶井:クビっていうわけではないんですけど。

 

鈴木:社長だったんだけれど、共同経営者からはクビになってるんです。

 

倉田:ああ、そうか。

 

鈴木:僕知ってるんです。それでウロウロしていた時、バッタリね恵比寿で会ったんです。不動産屋で。

 

叶井:会いましたね。

 

倉田:そうなんですか!

 

鈴木:それで「どうしたの?」っていったら「追い出されちゃって。社員に」「だって社長でしょ?」っていったら「そうなんですよ」。

 

叶井:(笑)

 

鈴木:方針を巡ってみんなに反対されて、追い出されたって。

 

叶井:偶然、一緒の不動産屋でね。

 

鈴木:そうそう。

 

叶井:僕も次の会社の物件探してた時にバッタリ会って。

 

鈴木:たまにね、変な所で会うんですよ。お正月にね、大鳥神社とかね。

 

倉田:ああ、あの辺りで。

 

鈴木:僕のお袋が86になるんだけど、一緒にお参りに行ったら、叶井がいたんですよ。

 

叶井:そうです。

 

倉田:1人で?なんで!?

 

鈴木:いや、前の奥さんと一緒だよね?

 

叶井:ええと、あの時、母親ですね。僕の母親と一緒に行って。

 

倉田:神社に!?

 

叶井:うん。

 

倉田:初詣!?

 

叶井:初詣でバッタリお会いしましたよ。

 

倉田:どういう風の吹き回し、、

 

叶井:一応、年に一回は、、

 

倉田:お母様連れで。いや、あんまりない風景だと思う(笑)

 

叶井:そうですね。

 

倉田:へぇーーー。

 

鈴木:なにそれ(笑)

 

倉田:嘘でしょ!?

 

鈴木:(笑)

 

ーナレーションー

でも一体なぜ、この二人が。

 

いつもはワイドショー的な騒動には無関心な鈴木さんですが、今回はスタッフに「叶井を呼ぼう」ってメールを回したりして、何だかお二人のお話を聞いてみたかったみたいです。

 

鈴木:僕は何にも今日知らなくて。世間では何が騒がれてるんですか?僕は少しだけ知ってるのは、倉田さんが今度できちゃった婚である人と結婚するんだけど、その人はこういう人だって紹介したのがキッカケですよね。

 

倉田:まぁキッカケはそうですよね。要はこの人のことを私が面白おかしく描いてしまったので。それがメディアで面白いおかしく更に取り上げられたっていう。バツ3とか色々あるじゃないですか?派手な女性関係とかを面白く描いてしまったので。

 

叶井:そうなんですよ。

 

鈴木:600人でしたっけ?

 

叶井:そうですね。とか漫画とか、SPA!の『だめんず・うぉ〜か〜』とか、週刊朝日とかの連載で。

 

倉田:そうね。そういうのって普通表に出ないじゃないですか。でも相方の私が出してしまったので。

 

鈴木:何で出したんですか?

 

倉田:この人を語る上では避けて通れない話題だなと思って。

 

鈴木:一人ひとりに説明してるより、一度にみんなにわかってもらったほうが楽だなと?

 

倉田:そうですね。また私自身もそういうことを知らないで付き合ってるのかと600人の女たちに思われのも嫌だから。だから、わかってますよっていうことも含めですよ。

 

鈴木:なるほど〜

 

叶井:ほら、妊娠してたんで。

 

鈴木:妊娠してたって、妊娠させたんでしょ?(笑)

 

叶井:そうですね。段々お腹が大きくなるんで、こちらの方はテレビに出ることが多いんで、気づかれるじゃないですか。そういうタイミングもあって。ということだよね?

 

倉田:私大概忘れちゃうんですけど、そんな一回出会ったきりの人なんてね。でもこの人のことは覚えてて。なんだろう。なんとなく波長が合う感じがあったんじゃないですかね。

 

鈴木:相性?

 

倉田:はい。相性ですね。

 

鈴木:でもすぐ会おうとは思わなかったんですね?

 

倉田:いや、会おうとしたんですよ。実は。

 

鈴木:そうなんだ。

 

倉田:でも、それが上手くいかなかったんです。というのも、そうはいっても恋に落ちたとかじゃないから。デートに行きませんか?とか、食事に行きませんか?とかっていうのはちょっと違ったんですよね。だから自然に会いたいなと思って。もう一回叶井俊太郎にどっかで自然に会いたいなと。

 

そういう時に、私たまたま雑誌で対談の企画を持ってたんですよ。で、叶井さんだったらギリギリ対談相手としてセーフくらいの知名度なので、「ちょっとこういう人を呼びたいんだけど」という風に言ったんですけど、でもそれが通らなかったんですよね。

 

鈴木:反対されたんですか?

 

倉田:何故かわからないんです。全部通ってるんですよ。今まで。私がリクエストした人。

 

鈴木:担当者の方は女性なんですか?

 

倉田:男性です。だから私その話を彼にした時に、この雑誌の編集部で何かしたんだろうってずっと思ってたんで、何か心当たりはないかって5、6回訊いてるんですけど、心当たりないっていう。

 

叶井:その雑誌では、僕もしばらく連載持ってたりしたんで。

 

鈴木:そうなんだ。

 

叶井:はい。小さいコラムですけど。だから結構仲良く。今でも仲良いんですけど。

 

倉田:何でダメだったのかな?

 

叶井:それはわかんないね。

 

倉田:あなただけだよ?通らなかったの。

 

叶井:あ、そう。何故なんだろうね。

 

倉田:全然わからないんですよね。

 

鈴木:隠し事はしないんですか?

 

倉田:隠し事、、いやでも隠し事は習慣化してるんですよ。

 

鈴木:好きでしょ?隠し事。

 

倉田:あの、意識してるのか無意識でしてるのかわからないけど、隠し事が、、

 

鈴木:習い性になってるんだ?

 

倉田:そうそう。

 

叶井:習慣化してるね。

 

倉田:今までずっと例えば嫁がいる時に、色んな隠し事をせざるを得ない状況がたくさんあったわけですよ。その時に隠さなくてもいいことまで隠す。

 

鈴木:学習したんですね。

 

倉田:そうですね。隠さなくてもいいことまで隠すから、私と仲良くなってから「なんでそれ隠してたの!?なんでその場で言わなかったの!?」っていうことが時々ありますよね。

 

鈴木:でも嘘つかないでしょ?

 

倉田:私にはついてないかな。

 

叶井:嘘はつかないですね。

 

倉田:でも嘘はすんなりつきますよね。つく時もありますよね?状況によってはね。

 

鈴木:嘘つくの?

 

叶井:嘘とはこっちは、、

 

倉田:いや、嘘でしょ!?

 

鈴木:(笑)

 

倉田:だって例えば、部屋の中に女性といる時に他の女性が来た時、両方に相手の女の人のことを「妹だ」っていうわけですよ。

 

鈴木:(爆笑)

 

倉田:それは嘘でしょ!?

 

叶井:それは嘘です。

 

鈴木:それは嘘だね!

 

叶井:それは嘘ですわ。嘘です。

 

鈴木:妹だって言うんだ。

 

叶井:そうです。

 

倉田:妹って何回も使ってますよね?

 

叶井:結構使ってますね。結構鉢合わせするタイミングが多くて。結構困った時があって。

 

鈴木:なんで妹だって言うの?

 

叶井:いやなんか咄嗟に出ちゃうんですよね。

 

倉田:本当に妹がいるから。

 

叶井:本当に妹がいるんですけど、「いま妹が来た。ちょっと待ってくれる?」と。で、外にいる女性には「いま妹がいるから、ちょっと入らないから」って。んなわけないでしょ?って突っ込まれるんですけど。両方から。「本当に妹だから!」って。

 

倉田:言い張りますよね?

 

叶井:言い張りました。

 

鈴木:それは何で嘘つくの?

 

叶井:やっぱり鉢合わせになったら修羅場になるじゃないですか。

 

鈴木:それは良くないと思ってるんだ?

 

叶井:それはお互いに良くないと思いますよね。マズい状況になっちゃうんで。

 

鈴木:それはやっぱり平和を愛するの?

 

叶井:そうですね。やっぱり平穏が。争い事は好まないですからね。

 

鈴木:そういうことを含めて好きなんですか?

 

倉田:いや、そこは全然好きじゃないですけど(笑)

 

鈴木:(笑)

 

倉田:でもそういう話自体は面白いですけどね。

 

鈴木:そのある種の魅力に関しては、僕も理解できる。

 

倉田:なるほど。でも今鈴木さんがおっしゃった「嘘つかないでしょ?」っていう部分で、確かに妹だとかそういう嘘はあるけど、自分を粉飾する嘘はあまりつかないですね。仕事に関してもそうだし。

 

鈴木:そうそう。

 

倉田:私も『アメリ』の話とか全然聞いてなかったですし。割と男の人って「こういうことしたんだよ」というようなことを言いたがりな人多いんだけど、むしろ失敗話の方がこの人は多いですからね。

 

鈴木:自分を飾って何者かに見せようとかね。カケラもない。

 

倉田:ないですね。

 

鈴木:それはね、最初にパッとわかっちゃったですね。

 

倉田:ああ、そうですか。

 

鈴木:だから、ちょっと一緒に一回やってみようかなって。それでちょうどその時にもう一つ、僕らの目論見もあったんでね。この人とやってみるのはいいかもしれない。『キリク』っていう映画なんですけどね。

 

倉田:その話は初めて聞きました。

 

叶井:フランスのアニメ。『キリクと魔女』っていう日本語タイトル。

 

鈴木:それを高畑勲っていう人がね、良いアニメーション映画だと。でも世界中でどこでも公開したのに、日本だけがやってない。これは恥ずかしいことですよと。というのは、内容が良い映画だから。

 

ところが日本では、内容が日本向きでないということで配給会社がやめてた作品なんですよ。それで持ちかけてみたらね、すぐやるって言うし。

 

倉田:へーー。

 

鈴木:何となく予感があったんですよ。やるっていうなって。

 

倉田:ああ、そうですか。

 

鈴木:それは何となくわかったんですよ。『ダークブルー』っていうのは、なんか違う名前のタイトルだったんですけど。なんだっけ?

 

叶井:この空に君を思う、ですかね。

 

鈴木:ああ、そうそう。

 

叶井:もうそのタイトルでポスターも全部作っちゃってたんだけど、その後にたまたま鈴木さんの方に、宮崎駿監督の映画のコメントをもらいたいっていうオファーを出したら、本当にくれることになったっていう。まさかこっちはくれると思わないじゃない?

 

倉田:あ、そうなんだ?

 

叶井:宮崎監督がそういうコメントとか出したの見たことないから。

 

倉田:ああ、確かにね。

 

鈴木:映画は見たいと思ったんですよ。協力するかは見てみないとわからない。でも、顔を見てね、やろうかなっていう気分になったんですよ(笑)

 

倉田:そういうこともあるんだ。

 

鈴木:ありますよ。どっちかと言ったら、そっちが先。

 

倉田:そうですか。

 

鈴木:だって、見て良い映画って中々ないじゃないですか。残念ですけど。

 

叶井:そうですよね。

 

鈴木:でもこの場合は、映画も良かったしね。まあたぶん難しいかなって思ったけれど。ヒットするかどうかはね。次いでに出資もすることになっちゃって。ね?

 

叶井:有り難いです。ビックリしました。

 

鈴木:それが出会いなんですよ。

 

倉田:じゃあほんと『アメリ』の前後くらい?

 

叶井:後だね。すぐ。『アメリ』の2年後くらい。2003年くらいです。お世話になりました。あの時は。

 

倉田:人には割と恵まれてるというかね。あなたは。人の印象に残りやすい人だなと。

 

鈴木:何で残るんですか?

 

倉田:わからないんですけどね。何だろうな。関係あるかわからないんですけど、私の前の夫との子供がいるんですけど。9歳の。その息子とか凄い好きなんですよね。彼のこと。子供に好かれるよね。

 

鈴木:なんとなくわかる。

 

倉田:めちゃくちゃ好かれますね。私の妹の子供たちっていうのも近くに住んでるんですけど、大好きだし。この人のことが。お父さんより好きぐらい好きだよね?

 

鈴木:人間じゃないんじゃないかな。人間じゃない。動物じゃない?

 

倉田:なんだろうなー。

 

鈴木:動物っぽいのよ。

 

叶井:そうなんですよね。子供はすごい来ますね。

 

倉田:昔からそうなんでしょ?

 

叶井:近所の子供もいつも寄ってくるし。それは昔からそうですね。

 

鈴木:なんなんだろう。

 

叶井:わからないです。

 

鈴木:好きなの?子供。

 

叶井:好きです。好きですよ。一緒に遊んでるの結構楽しいですよ。土日はなるべく遊ぶようにしてるし。

 

鈴木:子供なのかな。

 

倉田:なんですかねー。ちょっとわからないですけどね。こういう人ほんと珍しいと思って。

 

叶井:こちらの子供もほんと素直な子でね。一緒に住むことになって。初日、自分のことをなんて呼ぶか。どうするのかなって思うじゃないですか。

 

鈴木:はい。

 

叶井:そうしたら、向こうから初日に僕のところに来て「今日からお父さんって呼んでいいですか?」と。

 

倉田:何にも言ってなかったんですよ。なんて呼ばせようかなって。追々お父さん的な存在になってくれたらと思ってたけど。あまりそういうことって私の立場から強制するのは変な話だし。

 

鈴木:出来た子ですね。

 

倉田:でも意外だったなそれは。

 

叶井:いきなりだったんで。

 

鈴木:本能で感じたんでしょ?その子立派になりますよ。

 

叶井:凄いですよね。

 

鈴木:親がダメだと、良くなる(笑)

 

叶井・倉田:(笑)

 

叶井:いやほんとね、逆に本当にいいのかっていう感じ。

 

倉田:即日お父さんだからね。

 

叶井:いきなりですか?!みたいな感じだったんで。ちょっと驚いたね。あの時。

 

倉田:そう。俊ちゃんとかそのぐらいが適当かなーくらい。

 

叶井:おじさんかなーみたいな感じだったんだけど。

 

鈴木:子供って意外な能力持ってるからなー。

 

叶井:そうですね。ちょっとビックリしましたね。あの福岡から出てきたんですけど。

 

鈴木:あ、なんかあれですよね。福岡在住だったんですよね?

 

倉田:そうです。

 

鈴木:ね。ご家族と一緒に。ご両親と。

 

倉田:はい。

 

鈴木:ちょっとこの間聞いたんですよね。

 

叶井:で、東京の学校に行くことになり、結婚することになるんで、名前を倉田姓から叶井に。まだ籍は入れてないんですけど、そういうことになって。

 

鈴木:でも心配はないんですか?また離婚するっていう。

 

倉田:あーそれはあんま思ってないですね。よく言われるんですけど(笑)

 

叶井:みんな言うね。

 

倉田:みんな思ってるし、下手したらもう新しい人いるでしょ?みたいに言われてるよね?あなた。

 

叶井:いま言われてるね。

 

鈴木:いるの?

 

叶井:いませんよ!(笑)

 

倉田:今までの人ももしかしたらそうだったのかもしれないけど、、

 

鈴木:指輪とかさブレスレットってさ、三度目の奥さんが作ったやつ?

 

叶井:これは違うんです。

 

鈴木:あ、違うの?前よくやってたよね?

 

叶井:そうですね。そういうアクセサリー作ってた人、、

 

倉田:あ、よくご存じですね。

 

鈴木:そうなんですよ。何だか知らないけど、少しは(笑)

 

倉田:そうなんだ。

 

鈴木:中目(黒)に暮らしてたもんね?

 

叶井:それ二番目ですね。

 

鈴木:あ、あれ二番目のとき!?

 

叶井:あれ二番目ですね。

 

鈴木:二番目。送ってったことあるもん。

 

叶井:あ、そうですね。それ二番目ですね。

 

鈴木:あの時、そうなんだ。

 

叶井:はい。

 

倉田:二番目の奥さんとはお会いして、、

 

鈴木:いや会ってないんですけど、家の前まで送ってって。

 

叶井:それ二番目ですね。三番目は、えー、世田谷の方ですね。

 

鈴木:三回目終わってから、倉田さんと会ったの?

 

叶井:ちょっと被って、、はい。ですから結構、結婚、離婚を繰り返すのが大変でしたね。こうやって振り返ると。

 

倉田:そう?軽々としているように思えるけど。

 

鈴木:軽くは考えてないの?

 

叶井:考えてないですよ。

 

鈴木:真剣なの?

 

叶井:真剣ですよ。やっぱり男としてケジメそれでつけてますから。結婚と離婚。結婚と離婚。

 

鈴木:ケジメって何なの?離婚して次の人と付き合うってこと?

 

叶井:離婚をちゃんとする。

 

鈴木:が、ケジメなの?

 

叶井:というケジメですかね。離婚に至るまで結構揉めるんじゃないんですか?

 

倉田:でももうちょっと考えてするよね?結婚を。

 

叶井:そうだね、離婚する前にね。

 

倉田:うん。そもそも私離婚よりも結婚の方に問題があったと思いますよ。そんな軽々と。

 

叶井:そうですね。

 

倉田:三回も判を押して、三回も役所に出す。

 

叶井:そうね。そこは反省しなきゃいけないところですね。結構、流されて結婚しちゃうケースが多かったですね。振り返ると。一緒に住んでるから、もうこのまま籍入れちゃおうか、とか。もっと考えればよかったですね。

 

鈴木:倫理観がない人なんですか?

 

倉田:男女関係の?

 

鈴木:そう。

 

倉田:どうですかねー。倫理観。まぁある部分はものすごく欠落してると思いますけど、でもじゃあ本当に底無しにだらしないかというか、そうでもない部分もあって。ただそこはわかりづらい、、かな?

 

叶井:(笑)

 

倉田:だから周りの人には、この人は「五回目の結婚はいつするの?」とか、、

 

鈴木:普通は言いたくなるよね。

 

倉田:そうですよね。浮気だって絶対するでしょう、みたいなことも言われるんですけど。

 

鈴木:浮気はするの?

 

叶井:これからはもうないですよ。

 

鈴木:なんで?保証できるの?

 

叶井:もうないと。

 

鈴木:なんで?

 

叶井:倉田さんと出会ったので。

 

倉田:(笑)

 

鈴木:でもその前の奥さんにもそう言ってきたんでしょ?

 

叶井:その前はそんなことは言ってないかもしれないですね。

 

倉田:嘘でしょ!?

 

鈴木:(笑)

 

叶井:あんま説得力がないんですよ。だから何を言っても信用されないんで、今までの流れを見てると。

 

鈴木:よく言うじゃない?世の中ってさ、愛や恋は短い人で三ヶ月、長くても三年だって。

 

倉田:よく言いますね。

 

鈴木:その後が、どうやるかだって。

 

倉田:私ハッキリ言って、この人が自分の彼じゃなくて他の誰かの彼だとして、そうしたら絶対薦めないですよ。

 

鈴木:やっぱり、色々人によって違うだろうけど、この人はちゃんと養ってくれるだろうかっていうのは相変わらずあるんでしょ?

 

倉田:それはありますよ。大概。

 

鈴木:あるんでしょ?

 

倉田:大概あります。

 

鈴木:倉田さんの場合、無いからでしょ?それが。

 

倉田:頼りにしてるとか、そういう下心は持ってないんですけど、持てないし。だから逆にいうと、そうでもない限り、結婚までする理由がないですよね。つまり、経済的に自立していて、私なんかも子供もいるしね、別に自由に暮らせるわけですよ。

 

鈴木:結婚する必要ないよね。

 

倉田:そうなんですよ。でも、結婚したいって思うってことは、、

 

鈴木:たまに会うだけじゃダメなんですか?

 

倉田:うーん、一緒に暮らしたいかな。女の人にとって全然良い男じゃないと思うんだけど、でもわたしにはすごく合ってるって、私自身が確信出来るんですよね。

 

鈴木:それは何なの?

 

倉田:それはさっきから何でなの?って言われると、中々こう明確に言葉にするのは難しいんですよね。

 

叶井:根拠がないからね。

 

倉田:やっぱり私ももう38だし、これまで色々男性と付き合ったりとかあった中で、だからこそ、わかるような。この人によって初めて歓喜された感情とか感覚ってあるんですよ。一緒にいる時間、過ごしてる時間からやっぱりそうなってくるっていうか。

 

これは言葉では表現しづらいんですけど、何ていうのかな、今までで初めてだなって思ったことの一つに、この人に健康で長生きして欲しいって心から思うんですよ。

 

鈴木:気持ちが?

 

倉田:はい。

 

ーナレーションー

そういえば、れんが屋の対談でも、いや、ジブリでの映画でも、これまで恋愛っていう大問題は正面から取り上げられてこなかった気がします。何故なんでしょう?

 

そして今、鈴木さんが美女と野獣の恋愛話に耳をすますのは、何故なんでしょうか?

 

倉田:健康で長生きして欲しいっていうのは、、

 

鈴木:そういう感情が湧いたんですね。

 

倉田:そうですね。愛情の感覚として、、

 

鈴木:それは恋愛感情とは少し違うんだ?

 

倉田:恋愛感情ももちろんあるんですけど、、

 

鈴木:だってどうせまた浮気するんですよ?

 

倉田:いや、しないと思う!

 

叶井:しないんで。

 

鈴木:え?

 

叶井:先程も言った通り、、

 

鈴木:だって、それは口から出まかせだもん。

 

叶井・倉田:(笑)

 

鈴木:去年の暮れ、彼女に出会ってから浮気はしてないですか?

 

叶井:してないですね。

 

鈴木:ほんとに?

 

叶井:はい、してないです。

 

鈴木:吐け。

 

倉田:(笑)

 

叶井:本当してないんで。今もう浮気って言葉なんですか?って感じですよ。

 

鈴木:そこまで言う?(笑)

 

倉田:それを言われると、嘘っぽいですよね?嘘でしょ!?

 

鈴木:(笑)

岩波書店企画 鈴木さんトークショー ゲスト:井上一夫さん

2015年4月4日配信の「鈴木敏夫ジブリ汗まみれ」です。

http://podcasts.tfm.co.jp/podcasts/tokyo/rg/suzuki_vol361.mp3

 

ーナレーションー

今回は去年10月に岩波書店の企画として、たまプラーザテラスで行われた鈴木さんのトークショーの模様をお送りします。

 

司会進行は、鈴木さんの『仕事道楽 新版』やジブリ作品の著書などを多く編集されている井上一夫さんです。

続きを読む