鈴木敏夫のジブリ汗まみれを文字起こしするブログ

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鈴木敏夫のジブリ汗まみれ:押井守、鈴木敏夫、川上量生のニコニコ生放送「世界の半分が怒る生放送」

2012年11月8日配信の「鈴木敏夫ジブリ汗まみれ」です。

http://podcasts.tfm.co.jp/podcasts/tokyo/rg/suzuki_vol239.mp3

 

鈴木:押井さん、まだ作品作るの?

 

押井:やってるよ。やってるよというかやる予定。

 

鈴木:俺、今日は引退記念かと思ってきたんだけど(笑)

 

川上:(笑)

 

鈴木:引退しないの?

 

押井:やらない。というか仕事はずっとしてようと思ってる。たまたま『スカイ・クロラ』から3年経ってるけど仕事決まらなかったから。いろんな事情で。

 

鈴木:俺、あれ観たよ。007じゃない、、

 

押井:009!

 

川上:(笑)

 

鈴木:009の人形のやつ。あれ面白かったじゃん。

 

押井:でも評判悪かったから。

 

鈴木:なんで?あれ一番やりたいやつじゃん。

 

押井:やりたかった。

 

川上:僕もあちらの方が良かったんですよね。正直に言うと(笑)

 

押井:言っていいわけ?それ(笑)

 

川上:言っていんですかね?わからないですけど。僕はあちらの方が観たいと思ったんですよね。

 

鈴木:あれはね、全く期待してなかったのよ。期待してなかったんだけど、始まってすぐに目が焼きつきましたよ。それで久々「あ、押井さんやってるじゃん」と思って。

 

ーナレーションー

 

鈴木敏夫ジブリ汗まみれ。

 

今週は、先日インターネットでライブ配信された"ニコニコ生放送 押井守ブロマガ開始記念 「世界の半分を怒らせる生放送」"の模様をお届けします。

 

映画監督の押井守さん、ドワンゴ会長の川上量生さん、そして鈴木さんの3人で行われたこの放送、どんな話が繰り広げられるんでしょう。

鈴木:でも聞いた話ではね、パイロットはすごい良かった。だけど働かないらしいんだよね。

 

押井:そんなことないよ。誰が言ってるのそんなこと!?

 

川上:鈴木さん鈴木さん(笑) 散々鈴木さんから押井さんの話を。本当に働かない人だということを聞かされていて。

 

鈴木:若い頃は働いたよね?

 

押井:すごく働いた。

 

鈴木:テレビの『うる星やつら』の頃なんか、すごく働いてたんですよ。それでそこからしばらく経って、変わってきたんですよ。映画作るときだって、わざわざ演出を立てるんですよ。

 

普通僕らのアニメーションだと、まあコンテは書きますよね、監督って。したら、それを元にレイアウトとか原画が出てきたらそれをチェックするとか、いろんなことやらないといけないでしょ?それ全部人にやらせるんですよ。

 

押井:そんなことないよ。レイアウトだけは自分で全部見てる。レイアウトまでは全部見てる。後はやらないだけ。後はまかせる。

 

鈴木:でね、人にやってもらうじゃない?全部出来てきたのが繋がるでしょ?そこで便利なものが出来たのがコンピューター。後でいじれるんですよ。そこである統一感を作っていく。

 

だから入り口で一生懸命働いて、真ん中抜けて、最後に出てきてちょこちょこ。そういうやり方してるんですよ。

 

押井:そうそう。その通りです。

 

鈴木:だから宮崎駿に言わせたら、「そんなものは監督じゃない。早く辞めろ」って。

 

川上:(笑)

 

押井:全部自分でやらなきゃ気が済まないって、自分の満足感というか達成感だけ求めてるからそうなるんだよ。

 

例えば、2年間かけてアニメを作るっていうのは、途中で飽きるわけ。情熱を維持するのは難しいんだよ。

 

---

 

鈴木:なに、石井とは揉めたの?

 

川上:(笑)

 

押井:いきなり来るね(笑) 大喧嘩したよ。

 

鈴木:大喧嘩したんだ。

 

押井:大喧嘩した。

 

鈴木:だけど、石井が主張したのは働かないからでしょ?

 

押井:そう。

 

川上:(笑)

 

押井:それだけじゃないよ!それだけじゃない。色々あったの。

 

鈴木:煎じ詰めると、そこじゃないの?

 

押井:それはあるかもしれない。要するににジブリ以外知らないからさ。監督っていうのは誰よりも早く来て、最後まで仕事してるもんだと思い込んでるから。

 

川上:レイアウトまでやるとして、その後の演出の仕事っていうのは、具体的にどんな仕事なんですか?

 

鈴木:芝居をつけるとかね。実写でいうと役者さんがお芝居するわけでしょ?そうすると演出の人が「いや、そこはそうじゃなくてこうだ」とか色々注文つけたり。普通、映画の監督にとって芝居っていうのは大事な要素なんですよ。普通はね。

 

川上:はい。

 

鈴木:でも、そこを全部人にやってもらうんですよ。押井さんって。でしょ?

 

押井:そうそう。

 

鈴木:なんで?

 

押井:だってキャスティングしてるもん。

 

鈴木:キャスティングしてる?

 

押井:普通、実写映画撮るときって役者を選ぶじゃない?この人だったらこういう芝居をするだろうっていうのがわかるわけじゃない?それをアニメで言ったら、作画監督がそうなんだよ。

 

この作画監督だったら絶対こっちの方向でやるだろうなって。今回はそっちはなくて、こっちでやってくれってさ。頭の中でもう注文は終わってるわけ。彼だったら出来るだろうっていう人間しか選ばないから。

 

鈴木:って聞いてるとね、立派そうでしょ?

 

押井:本当だってば。

 

川上:(笑)

 

鈴木:立派そうだけど、現実はそうなってないのよ。芝居なんてどっちだって良いんだって、一時は無茶苦茶なこと言ってたの。でも本当は芝居大事でしょ?人を選べば済むっていう問題じゃないもんね。

 

押井:あんまりさ、そこが重要だとは本当に思ってない、たしかに。それよりも画面構成とか演出的な要素とかデザインとか、そっちの方が大事だと思ってるから。

 

映画の見方って、キャラクターしか見てないんだよね。キャラクターの芝居とかセリフとかドラマが映画だと思ってる。それも映画の一部だけど、それが一番重要だとは思ってないわけ。それは2番目か3番目くらいで。それ以上に優先すべきことは映画にはあるから。

 

あと、一番大事なのはお客さんがなぜキャラクターとかドラマで映画を観たがるかってうと、それは楽だからとか感情移入して観るほうが映画に入っていきやすいから。

 

映画に入っちゃうっていうのはどういうことなんだろうってさ。映画に入るってことは何も考えないってことだよね。観終わったときの印象しか残らない。

 

鈴木:でもそれ変わってきたよ。

 

押井:何が変わってきたって?

 

鈴木:お客さんの映画の見方が。

 

押井:いまの?

 

鈴木:そう。要するに役者の芝居では観なくなった。もう少し上から目線。全体の構成はどうなってるとかね(笑)

 

押井:いやいやいや(笑)

 

鈴木:いや、本当だってば!変わってきたんだってば。

 

押井:変わるわけないじゃん。そんなの。

 

鈴木:いや、変わってきた。だってアメリカ映画観てたって、邦画観てたって、もうある強烈なキャラクターの設定によって、全体を持たせようなんて映画はね、もうないよ。いわゆる娯楽映画では。

 

---

 

鈴木:僕はちょっと最近寂しいなと思ってるのは、押井さんの時代が来てるんだよね。本当に。

 

というのは、こういうことがあるんですよ。『うる星やつら』のテレビシリーズって2年半やったんですよ。毎週でしょ?こんだけあって、自分でもこれは上手くいったっていうやつはあるでしょ?

 

で、自分が良いと思ったやつとお客さんが良いっていうやつの間にギャップがあったんですよ。ちょっと情緒的でアニメーターがキャラクターを描いて、その芝居が良いとか、そういう方にお客さんが行くでしょ?それに対して頭に来てたんですよ。

 

それって自分でやってることじゃないわけだから、そうじゃないところで勝負して、そちらにお客さんの関心を持ってこれないかって、考え続けた60年なんですよ。

 

押井:60年ってなにそれ?

 

鈴木:そういうことでしょ?(笑)

 

押井:ちょっと違う。

 

鈴木:大雑把にいうと、そういうことなの。

 

押井:別に監督として何を作るかっていうときに、役者とかキャラクターしか見てないっていうとさ、それなりの映画しか作れないわけ。泣かせたり笑わせたりっていうさ。基本はそれで良いのかもしれないけど、それ以上のことを何かやろうと思うと出来なくなっちゃうわけ。

 

もっといえば、『うる星やつら』がその典型だけど、クリスマスの話のやつで最後雪の中二人で手を繋いで、ストップモーションで終わるみたいな。大林宣彦みたいな映画。それ実は簡単だったんですよ、やってみたら。めちゃくちゃ簡単だった。

 

そもそもなぜあれをやってかっていうと、忙しくてスケジュールなくて枚数描けなくなったから、タッタカ作っちゃおうって思ってやったの。カット伸ばしてさ、綺麗な音楽いっぱい流してとかね。演出的にいうと、泣かすほど簡単なものはないんだって。そうじゃなくて、お客さんに違うこと考えさせるっていうさ。裏のテーマ見せるとか。一瞬立ち止まらせるとか。そういうことは凄く難しいんだっていう話なの。感情移入させることのメリットとデメリットがあるっていう話なのね。

 

ジブリでいうと宮さんのやってるような作品って、感情移入させること自体がテーマだから。小さな男の子とか女の子に感情移入させて、同じように喜怒哀楽を味わってもらって、あることを語りたい。そうだよね?そういうことでしょ?

 

だから細かく芝居をつけたがるしさ、そのこと自体がアニメーションのテーマだって思い込んでるから。

 

確かにそういうアニメーションもあるし、それを否定してるわけじゃないの。全部がそれである必要はないと思ってるわけ。そうじゃなくて例えば、映画を違うところから作り上げるっていうことに興味があったから。

 

敏ちゃんもそうなんだけど、ストーリーとキャラクターにしか興味がない。ということでしょ?あとテーマにしか興味がない。表現っていうことに全く興味がない男だからさ。

 

鈴木:そうやって決めつけるんだよね。

 

押井:だってそうじゃん!自分で言ってたじゃない!

 

川上:そうなんですか?でも鈴木さん、いつも逆のことをいつも言ってますよ。表現の方が大事だっていう風なことを。

 

押井:自分でやってないじゃない。

 

川上:それはそうですよね。

 

鈴木:でも自分が関わることかどうかは関係ないいじゃん。

 

押井:それを良しとしてきた方でしょ?

 

鈴木:なにが?

 

押井:変わらないことを良しとしてきたでしょ?

 

鈴木:そんなことないよ。

 

押井:あえて言えば変えようとしてないし、変わっちゃいけないと思ってるわけでしょ?

 

川上:でも、押井さんは演出は人に任せるっていってますよね?

 

押井:それは全然違う。

 

川上:違うんですか?

 

鈴木:じゃあ表現を定義するとどうなるの?

 

押井:例えば絵作りとか音楽をどう入れるとか、映像的表現のことを言ってるわけ。どういう風な構造を映画に持たせるとか、そういう次元で言ってるわけ。

 

表現の部分っていうのが監督の仕事なわけ。ドラマをいかに効果的に見せるかっていうのが演出の領分だけどさ。

 

だから僕今でもアニメやるときに演出家を立てるっていうのは、そういう部分はアンタに任せたよっていうさ。映画全体をどう構造的に作るかとか、どういう風にテーマを持たせるかとか、そういうことを目配せ出来るのは監督しかいないんですよ。

 

それをやるためにはこれは敢えて言うけど、現場に張り付いてると距離感がなくなってくる。自分が作ってる元々の距離が保てなくなってくる。やればやるほど自分は一生懸命やってるんだっていう達成感に溺れるんだよね。自分はこんな一生懸命やってるんだっていうさ。

 

これってさ、日本人独特の農耕民族独特の価値観なんだよ。基本的に日本って狭い田んぼに無制限に労働力を投入するっていう労働集約型の社会だから。

 

そういう社会で誰が一番評価されるかっていうと、一番働いてる人間なんだよ。成果じゃなくて。自分はこんだけ一生懸命やったんだけど失敗したっていうさ。それは認めてもらえるわけ。

 

ちゃんと合理的に考えて戦ってみたんだけど、結局色んな理由があって負けましたっていうさ。お前サボってたんだろ?っていう話になるんだよね。したら、こういう人間が出てくるわけだよね。

 

鈴木:少ない努力で大きな成果を得ようとして、それが達成できないイライラでずっと生きてきたんですよ。

 

押井:それがちょっと違うのは、働かない時間は遊んでるのかっていう話だよね。確かに出来るだけ働かないように生きてきたんだけど。

 

鈴木:空手やってたじゃん。

 

押井:空手やってるよ。どこが悪いの?空手やっててどこが悪いんだ。

 

ーナレーションー

 

番組配信中にユーザーの皆さんからもたくさんの質問が届いたようです。

 

 

川上:じゃあ質問が届いてるそうです。

 

鈴木:どうぞ。

 

スタッフ群馬県30代の男性からの質問になります。「押井さん、好きなジブリ映画はなんですか?好きなジブリ映画のキャラクターは誰ですか?鈴木さん、好きな押井さんの作品とキャラクターはなんですか?」という質問が来ています。

 

鈴木:はい、押井さん。

 

押井:えーーー。あ、わかったハウルハウル

 

鈴木ハウル!?ハウル好きなんだ?

 

押井ハウル大好き。自分で買ったのハウルだけどもん。あれスーパーマーケットで買ったんだけどさ。

 

川上:スーパーマーケット(笑)

 

押井:あとは買ったことないもん。ハウルがなぜ良いかっていうと、あれ結構評判悪かったじゃん。

 

鈴木:まあね。

 

押井:結構メチャクチャな映画なんだけど。構成は破綻しまくってるし。表現っていうことでいうと、すごく円熟してるシーンの作り方とか状況の作り方とか話の持っていき方とか、流石に円熟してるなと思った。

 

川上:はい。

 

押井:宮さんが初めて良いことを言ったと思ったわけ。あのガチャガチャが良いんだよね。

 

鈴木:なに?ガチャガチャって。

 

押井:円盤が回るじゃん。4つに色が分けてあってガチャガチャ回すと、違う世界に行くんだよね。そのうち4分の1は真っ黒に塗ってるわけ。

 

真っ黒のところに回してドアが開くと、戦争をやってるんですよ。業火が燃えてる戦場で主人公のハウルが怪物になって、バッサバッサ飛び回ってるわけ。帰ってくると血みどろでよろよろになってるんだよね。

 

火の妖精か何かが「いい加減にしした方がいいよ」ってさ。

 

鈴木カルシファー

 

押井:うん。「そのうち戻ってこれなくなるよ」って。あのガチャガチャって何だろうってさ。で、わかったのがアレって男の内面の話なんだよね。

 

男って4つくらい世界持ってるんですよ。どんな親父でも。家族にも見せられない、奥さんにも見せられない、自分の娘にも見せられないダークサイドがあるんですよね。4分の1くらい。

 

これなんだなって。それは宮さんわかってるんだなって、流石に。関心した。あ、こういうことやってるんだって。

 

鈴木:宮さん、結構それテーマだよ?

 

押井:そうそうそう。でもそれあんまりやらなかったじゃない?作品の中ではさ。

 

鈴木:一応やってるのよ。

 

押井:いやいやいや。あれだけ露骨にやったのは初めて。

 

鈴木:まあね。あれは露骨だった。

 

押井:本当に100%自分さらけ出したのは初めて。パンツ下ろしたですよ。本当に。

キャラクターでいったら何だろ?あのロボットかな?

 

鈴木:ロボット?

 

川上ラピュタの?

 

押井ラピュタのロボット。あれ良いと思うよ。

 

鈴木:あの二面性?

 

押井:うん。もちろんあれは元ネタあるんだけど、それにしてもよく出来てるよ。

 

鈴木:そうなんだ。

 

押井:そんな感じじゃないかな。以上。

 

鈴木:はい。

 

押井:そっちは?

 

鈴木:えっ?

 

押井:え、じゃないよ!何がお好みなの?

 

鈴木:『女立喰師列伝』良かったよね。

 

押井:あーーもうわかった。

 

鈴木:なになになに?なに恥ずがってるの?

 

押井:そうじゃなくて!自分がナレーションやってるからでしょ?!

 

川上:鈴木さんが出たやつがあるとか、、

 

鈴木:いやナレーションだけやったんだけれど、これナレーションやったからっていうことじゃなくて、押井さんが珍しく情緒的に作ったんですよ。凄い印象に残っちゃって。

 

川上:立ち喰いの話ですよね?

 

鈴木:女立喰師列伝という名のもとに、色んな人たちがオムニバスで映画作ったんだけれど、その最初のやつを押井さんがやっててね。

 

したらね、この間ずっとしちメンドクサイことを言ってきたのが全部吹っ飛んでね、非常に情緒的に作ってるんですよ。それがね、結構上手いの。あれもう少しお金使えば良かったのに。

 

押井:ないんだもん元々。お金がないから鈴木敏夫にナレーションを頼んだの。

 

鈴木:ナレーションは良かった。

 

押井:良くしたんだよ。

 

鈴木:本当に良かった!ナレーションは。自分で感動したもん。

 

押井:もういいから!

 

鈴木:(笑)

 

---

 

川上:鈴木さんと押井さんって、仕事をしたのは結局どれとどれなんですか?

 

押井:2回だけ。

 

川上:『イノセンス』と、、

 

押井:『天使のたまご』と『イノセンス』だけ。

 

川上:プロデューサーっていうのはどういう?

 

押井:よくわかんないんですよ。僕はプロデューサーと一緒に組んでやってきたっていう意識があんまりない人間なんで。

 

それで敏ちゃんに対する興味があるから、今も付き合ってるのかもしれないんだけれど。

 

プロデューサーっていうのはどういう人なんだろう?っていうさ。何を考えてるんだろう?っていうさ。何がやりたくてプロデューサーをやってるんだろうっていうさ。それが興味はある。

 

川上:『イノセンス』のときは鈴木さんはプロデューサーはやってくれなかったんですか?

 

押井:宣伝プロデューサー。

 

川上:宣伝プロデューサー。

 

押井:宣伝プロデューサーという限りにおいては組んでもいいよっていう風にしたの。じゃないと映画メチャクチャにされちゃうから。

 

川上:(笑)

 

押井:どうせそうなるに決まってるから。

 

鈴木:歌決めたの。主題歌。

 

川上:あ、そうなんですか?

 

押井:彼がやったのは2つ。イノセンスっていうタイトルを決めたこと。それと主題歌。

 

川上:主題歌ってどういうやつでしたっけ?

 

鈴木:英語の歌だったんですよ。

 

押井:『Follow Me』っていう歌なんだけど。敏ちゃんが好きなジャズシンガー。

 

鈴木:気に入ったんですよ。

 

押井:ステキなオバさんだった。

 

ーナレーションー

 

かつての仲間で思いを寄せているサイボーグの刑事が、人間と機械の関係性に自問自答し葛藤しながら、ある真相に迫っていく様を描いた押井守監督のSFアニメ 『イノセンス』。

 

お話はこの映画の話題へと続きます。

 

 

押井:『イノセンス』って脚本2週間くらいで書いたんだもん。

 

鈴木:はやいのよ。

 

押井:うん、はやい。

 

鈴木:あの頃ね、押井さん太り過ぎて腰が痛くて、毎週中目黒に行って揉んでたんですよ。それでないともたない身体になってたの。

 

だってそれが発想の起点なんだもん。それで機械の身体に力を借りなきゃ僕は生きていけないっていって、当時まだ空手やってなかったんだもん。それテーマだよね?

 

押井:まあ。

 

川上:(笑)

 

押井:半分くらいそうだよね。あれは要するに身体論がテーマだったから。だから人形の話をやったわけで。人間にとって身体っていうのは何なんだろうっていうさ。

 

どこからどこまでが自分なんだっていう話は一本目でやったから、それはもうやらなくていい。それ以前に自分の身体って何なんだっていうさ。もうちょっと深い所でやろうと思った。 わけ。

 

確かに自分の身体もすごく調子が悪くて、不健康だった。

 

まだ攻殻が終わった頃に犬と暮らし始めたときに、少しわかったんですよ。それが。

 

川上:犬が出てきましたね、確かに(笑)

 

押井:犬がさ自分の身体をどう認識してるんだろうってさ。もしかしたら人間だけが自分の身体について考えてるのかな?っていう、そういう話だよ。

 

鈴木:そうです。

 

押井:要するに機械の身体と、獣の身体と、人形と3つ並べてみて、自分はどう選ぶんだってそれだけの映画だもん。

 

鈴木:脳はやらないの?

 

押井:え?

 

鈴木:脳。

 

押井:脳みそ?脳みそはどうでもいいんだもん。どうでもいいっていうか、みんな人間の実体がなぜ脳と思うんだろうっていうさ。人間の身体の中で一番上等で一番偉いのが、みんな脳みそだも思ってるんだよね。それは大きな勘違いだっていうさ。

 

鈴木:いま思いつきなんだけど、『唯脳論』読んだ?

 

押井:読んだよ。

 

鈴木:あれ映画化出来ないの?

 

川上:(笑)

 

押井:前さ、NHKか何かで養老さんと対談したことあるんけどさ、その時にあの人そういうこと言ってたよ。

 

鈴木:あ、そうなんだ。

 

押井:やっぱり同じこと考えてるな、この人はって。自分はほとんど人形として生きてますっていう。

 

もう一人の自分がいる瞬間っていうのは24時間の中でたかだか1時間か2時間くらいにしか過ぎませんよって。

 

あとは要するに習慣だけで動いてるし、身体だけが動いてるっていう。自分は置き去りになってるだけで。

 

川上:それはそうですよね。

 

押井:脳だって胃とか肝臓とか筋肉とかと同じでデバイスの1つに過ぎないっていうさ。じゃあ人間の本質ってなんだ?って。脳とか神経系以外に何が人間を支配してるんだって。

 

僕に言わせれば肉体的な言葉じゃない。自分の身体っていうものをどういう風に意識化してるかっていう。

 

言ってみれば言葉なんだよね。人間を人間たらしめているのは言葉なんだってさ。

 

その言葉を文字から獲得した言葉なのか、自分の身体から獲得した言葉なのか、その違いがあるだけだっていう。

 

鈴木:書いてるんだよね。『唯脳論』の中で。なんで言葉は生まれたのか、とか。

 

押井:そうだよ。同じことだもん。

 

川上:そうですよね。

 

ーナレーションー

 

押井守さん初のメールマガジン押井守の世界の半分を怒らせる」。ニコニコチャンネルより配信されています。ぜひ一度チェックしてみて下さい。

 

 

鈴木:『唯脳論』映画化しないの?観たいんだよね。

 

押井:したじゃん、もう。『イノセンス』がそうだって。

 

鈴木:もっと。正面きって。タイトル『唯脳論』っていう映画を。

 

押井:お金集めてくれる?いつでもやるよ。

 

鈴木:最近ね、そういうの飽きてきたんだよ(笑)

 

川上:(笑)

 

押井:やれと言われればいつでもやるけど。もう終わってるんですか?

 

川上:まだ流れてるの?これ。もう閉めようよ。

 

鈴木:(笑)

 

鈴木:じゃあ、どうもありがとうございました!