鈴木敏夫のジブリ汗まみれを文字起こしするブログ

ポッドキャスト版「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」の文字起こしをやっています。https://twitter.com/hatake4633

れんが屋に、2人の青年が遊びに来ていました。その最後、3週目をお送りします 。 ゲスト:川上量生さん、麻生巌さん

2011年2月8日配信の「鈴木敏夫ジブリ汗まみれ」です。

http://podcasts.tfm.co.jp/podcasts/tokyo/rg/suzuki_vol173.mp3

 

川上:僕の個人としてはすごくショックだったことは、僕基本マザコンなんですよ。めちゃめちゃマザコンで親の言うことはずっと守ってきたんですよ。すごい影響されてきて。

 

例えば親が、学生までの友達は本物だけど、社会人になってからの友達は本物じゃないと、たぶん何の気なしに言ったと思うんですけどね。今にして思えば。

 

それを僕はずーっと社会人になっても本当にそうだと思っていて、社会人になった瞬間に一切友達を作るのをやめたんですよ。

 

鈴木:極端(笑)

 

川上:で、その前後を忘れたんですけど、「お前みたいな人間は人間最低だから、誰もアンタのことを好きになってくれない」みたいなことを言われたんですよ。かなりひどいことを。たぶん何かやったと思うんですけど(笑)その前後関係は全部忘れていて。

 

僕は人から愛されない人間なんていうことを高校くらいからずっと思ってたんですよ。で、生きてきて、25くらいのときに彼女が出来て、なんか違うじゃん!と(笑)僕的にはこれはすごい大きな出来事だったんですよね。僕の中では(笑)ちょっと上手く言えないんですが(笑)

 

麻生:伝わってきました。

 

鈴木:川上さんのね、人生の目的ってなんですか?

 

川上:人生の目的ですか?

 

鈴木:うん。

 

川上:人生の目的って、これ真面目に答える、、?

 

鈴木:いや、もうどんどん。

 

川上:あのー本音の話でいうと、僕の人生の目的っていうのは、27で僕的な人生終わってるんですよね。そのときにあのーー、、、なんだろうな。ちょっと地味な話なんでやめましょう!(笑)

 

鈴木:せっかくだから、喋りだしたら聞きたくなったですよ。

 

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川上:僕と同じでネットにハマり過ぎてきて、人生を見失っている、優秀なんだけどこの子の未来暗いな、みたいな子が働けるところを作ろうと思ってドワンゴを作ったんですよ。

 

で、それから僕が会社を作って何をしたかといったら、そういう人生を踏み外したいわゆる廃人と呼ばれているゲーマーを全員クビにしたんですよ。働かないから(笑)

 

もはやその時点で見失ってるんですよ、目的を(笑)

 

人を助けようと思って作った会社で、助けようと思った人たちをクビにしたっていうのがドワンゴを作って最初にやったことだったんですよ。

 

目標を見失ったまま、後ろ向きな理由で働いてきた僕の会社、今までの人生なんで。別に本当の目標というのはないです。

 

鈴木:ない?

 

ーナレーションー

 

人生に目的がない。だからビジネスをゲームとして楽しむ。

 

 

川上:興味が持てるかなと思ったら、ゲーム好きなんでパズルとかゲームと思って仕事をやってるんですよね。

 

じゃあどういうパズルを解こうかっていうので、僕がいま興味を持っているのが、みんな同じことを言うじゃないですか。 

 

例えば、経営とかってこういう風にやるべきだ、ITビジネスはこうやるべきだって色んなマニュアル・言説がありますよね? 

 

その通りにやる人たちって、これ僕の世界観なんですけど、僕の中では人間ではないんですよね。何かのイデオロギーミーム、社会的な生命体の歯車になってる、奴隷になっている人間であって。

 

鈴木:そういう人たちがね。

 

川上:そうそう。実際そうじゃないですか。例えば、資本主義の奴隷みたいな人だと思うんですよね。そういう金融とか資本の論理で動く人っていうのは、全体の価値観通りに動くマシーンみたいな存在じゃないですか。それは僕は嫌だなと思っていて。

 

たぶん人類の歴史を考えると、将棋がほぼプロが勝てなくなっていて、もうチェスは勝てないですけど。将棋はもう実際には勝てなくなってる可能性もありますよね、戦ってないだけで。囲碁もあと10年か20年くらいしかもたないんですよ。

 

それはたぶんそうなっちゃうんですよ。人間の時代が終わっちゃうっていうのが、大局的に見た今の歴史観だと思うんですけど。それの第一波がGoogleだとしたら、その第一波では人間が勝ったっていう歴史が作れたら面白いなとは思うんですよね。

 

ロジックが最終的に支配するとしても、人間のロジックの方が機械のロジックよりも強いっていう。

 

何回かは勝てると思うんです。何回かは勝てる。そのうちの一回くらいをやるのに出来たら面白いなと思って、僕はやってるんですよね。

 

ーナレーションー

 

例えば、Google機械帝国への反乱。

 

 

川上:最大のニッチはなんだといったら、それはアンチGoogleの世界観だ。で、アンチGoogleの世界観を表す社内だけでやってる標語って作ったんですよね。それは「Google機械帝国」っていう標語だったんですけど(笑)Google機械に対する反乱。

 

鈴木:狭い範囲でいうと、人間と機械が戦って、機械に勝つっていうんですか?

 

川上:はい。というか一花咲かせる(笑)

 

鈴木:一矢報いる。

 

川上:一矢報いる。っていうパズルは僕は面白いなと思ってやってるんですよね。

 

ーナレーションー

 

そんなドワンゴの会長川上量生さんが、鈴木さんと同じ船に乗ってどこへ行くのでしょう?

 

 

鈴木:あのーニコニコ動画ジブリとだったら、どういうアイディアある?ってきいてたんですよ。実は今日その話をしようと思ってたんだけど、話が横道にそれちゃって(笑)

 

僕はネットの方はよくわかってないけど、とにかくこの映画っていう素材がある。

 

川上:はい。

 

鈴木:これをリアルの方でも色々やってくんですけど、ネットの方でも何かやってもらえないかな、と。

 

ーナレーションー

 

そう。ジブリの新作『コクリコ坂から』の素材あるからニコニコ動画で何かやって下さい。ジブリニコニコ動画が手を組んで、何かが始まる。

 

 

鈴木:何かニコニコ動画でやってもらえないですかね?

 

川上:やります。

 

鈴木:何やるのかさっぱりわからないんですよ!

 

?:すごいなー。

 

鈴木:すごいなって感動してるね。

 

?:いや今日僕のコンセプトとしては、勝負師対最強ゲーマーの一騎討ちみたいな感じだったんすけど。

 

鈴木:色々やっていただいて、有難いです。

 

?:いや最高ですね。

 

ーナレーションー

 

ジブリ汗まみれ。

 

今週も鈴木さんとニコニコ動画を運営するドワンゴの会長川上量生さん、そしてドワンゴ社外取締役でも麻生巌さんも加わっての対話をお届けします。

 

 

 

麻生:素敵なポスターですね。

 

鈴木:いやーほんと宮さん頑張ってくれたんですよ。で、こういう時って呼ぶんですよ。

 

僕ね朝ね、普通だとスタジオ行くでしょ?それをいきなり宮さんの事務所へ車つけちゃったんですよ。

 

麻生:えっ

 

鈴木:そうしたらちょうど出てきて、「あ、鈴木さん、ちょうどいいよ。ちょっと上あがってきて」っていったら、出来てたんですよ。本当にそうなの。何か呼ぶんだよね、そういう時って。

 

本人は「これを元に描いてよ、鈴木さん」って言ってたんだけど「いいじゃないですか」「いやそんな」って恥ずかしがるんだよね、結構(笑)

 

川上:あの人に恥ずかしがられたら、日本で他に、、(笑)

 

鈴木:僕ね本人捕まえて、ひどいこと言っちゃったんですよ。「宮さん、久々に良い絵描いた」って(笑)したら照れてるんだよね(笑)僕もこれはガーンときたんですよ。

 

この前、彼に部屋に来てもらったんですよ。彼に一言だけ言われてるんですよ。「鈴木さん、宮崎駿宮崎吾朗、親子で名前が並ぶのは嫌だ。それだけは絶対ダメだぞ」って言われたので、横に並べないで縦にしたんですよね(笑)

 

川上:(笑)

 

鈴木:自分で宮さんこれ見れないのよ。自分で描いた絵を照れくさくて見れない人なんですよ。「宮さんこれ良いですよ!」って言ったら、「そうかな?」とか言っちゃってね(笑)

 

でも久々に良い絵描いたね。僕はそう思ってるんですよ、これ。何か集中力が湧いたんですね。

 

僕印刷の方詳しいんで。これ実は6色使ってるんですよ。

 

川上:そうなんですか?

 

鈴木:4色では出ない色なんですよ。浅葱色っていう特別な色とね、蛍光ピンクを旗その他のところに入れて、やっとこうやって出てるんでね。

 

色んなところでこの絵が印刷物として出てくけれど、その時は4色。この良さは残念ながら出ない。このスカートのところのストライプなんて本当に出ない色なんで。

 

で、これ出来たときに吾郎呼んだの。「吾郎さ、これ」って言ったら一瞬大変だったのよ!で、「良い絵ですね」って息子が言ったんですよ!はい、勝ち。

 

それでスタッフにもこれ見せて、この気分で描いてって。今一生懸命に絵描いてるんですけれど。一枚の絵が全体を変えるときがあるんですよ。

 

川上:フレーズだとか絵だとか、そういうのをコンセプトにして大事にして伝えていくっていうことをされてるじゃないですか?一個一個の作品作るときに。

 

鈴木:まぁそうですよね。

 

川上:それが凄いなと思って。

 

鈴木:僕いま東宝の人に言ってるのは、当分この絵だけでいこうって。余計な絵いらないよって。

 

これでお客さんが足を運んで、それに負けない内容を作ると。それが現場の仕事だから。良いの見ると嬉しくなるんですよ。それだけでやってるんですから。

 

話の内容も言っちゃうと、高度経済成長がこれから始まろうと。日本は奇跡の復興。戦争から18年でこんな奇跡の復興っていうんで、その象徴としての東京オリンピックなんですよね。

 

世の中全体が古いものは良くない、全部壊そう。新しいものを作ることが素晴らしい。善だ。そういう時代のある高校で明治に建てられた立派な建物。しかし今となっては63年当時なんですけど古びて、学校のクラブハウスとして使われてるんですよ。そのクラブハウスがあまりにも汚い。女の子なんか近づきやしない。だから学校側がこれを取り壊して、新しいクラブハウスを作ってあげようと。したら生徒もそれを大賛成。ところがそれに違を唱える男の子が1人いたと。なぜかというと、新聞部の部長でそのクラブハウスにずっといたんですよ。自分の高校3年間そこが自分だったんですよ。それを壊されては堪らない。で、討論会なんかやると、過去を蔑ろにする奴に未来なぞない!とか色々言う。ところがそんな言葉には説得力持たないんですよ。というときに、この女の子と知り合って、この子がポツンと言うんですよ。「掃除しよ」って。それで女の子たちで掃除始めるんですよ。そうしたらみんな集まってきて、じゃあ中だけじゃなくていらないものをドンドン捨てる。古くて汚いものを好きな男の子もいるんだけど、そんなこと構いしない。それで中はきれいになっていく。そうしたら男の子たちの中から、したら外もきれいにすべきだって。で、足場を組んでみんなできれいにし始めるんですよ。そんなある日、動かなかった時計台の時計が動く。さぁどんな映画になるでしょうかってやつなんですけどね。

 

なんか前向きには出来ないかもしれないけれど、とりあえず上を向くって。

 

川上:聞いても、日本の映画界とは全く違う(笑)

 

鈴木:(笑)

 

麻生:たしかに(笑)

 

川上:こんなシナリオでアニメの企画を立てるの、日本の中で鈴木さんしかいないわけじゃないですか、実際(笑)本当すごいですよね。明らかに良い話で。

 

麻生:これはその匂いがしますね。

 

川上:あのー僕正直すごく衝撃的で、作品でしか知らなかったので。ジブリっていうのは、僕の中では謎の存在だったんですよ。だって謎じゃないですか?外形的なことしかわからないですけど、例えば、声優使わないし。

 

鈴木:(笑)

 

川上:なんか不自然なほどお金かけて作ってますよね?で、ストーリーの作り方っていうのも、おかしいじゃないですか?

 

普通のアニメの作り方と全然違いますよね?ビジネスモデルっていうのも全然違いますよね?ビジネスサイズも違うし。そういう特殊な現象がなんで成立してるのかってすごい不思議なんですよ(笑)

 

鈴木:(笑)

 

川上:それで不思議だったのが、もののけ姫の頃から日本の興行の歴史をどんどん塗り替えるわけじゃないですか?塗り替えるときに、過去の作品が出てくるんですよ。過去の一覧で大体出るじゃないですか?すると、ナウシカっていうのがあってそれが10億ちょっとしかなくて、その後ラピュタとかがあって。

 

僕の中ではその頃がジブリの黄金時代なのに、売り上げ的には黒歴史かのようにやっていて、僕の感覚と全くズレてるわけですよ。作品の感覚と世間の評価、存在感っていうのが。

 

相当マーケティング的な力がそこに集中してるだろうなっていう風には何となく思ってたんですよね。でもそれが具体的にはどうなのかっていうのが全然わからなかったんですけど。

 

僕、自分で言うのもあれですけど、マーケティングが得意な人間だと。結構上手いと思ってるんですよ、自分では。だからマーケティングで尊敬する人に出会ったことないんですけど、鈴木さんはもう全然勝てないなと。

 

人生の中でこの人が僕よりもマーケティングが凄いなっていう人が2人しかいなくって、ビーイング長戸大幸さんと鈴木さんだけですよ。

 

鈴木:ありがとうございます(笑)

 

川上:思うがままの道を行ってる集団じゃないですか、ビーイングっていったら(笑)別にそこに道なんかないのに、すごい大通が建設されていくみたいな(笑)そんな感じでやってますよね。

 

鈴木マーケティングですか。

 

川上:はい。

 

鈴木:どうかなー。それこそ義務感なんですよ。だって作ってるから何とかしなきゃいけないでしょ?(笑)だからそれでやろうっていうだけなんだもん。だって無目的なお金なんて儲けたってしょうがないでしょ?

 

だからさっきの話でいえば、ナウシカラピュタだトトロ、蛍、宣伝なんてどっちだっていいと思ってましたよね。ほんとに。とにかく作ることが面白くて。本当にそれだけだもん。

 

内容が上手くいっても興行が失敗したら、次がヤバイかなっていうと、チョボチョボでやろうかなとか(笑)

 

川上:よくわからないですけど、どこそかで鈴木さんが喋った言葉っていうのが結構ネットに貼られるんで、そういうのは見たことはあるんですけど、そこの鈴木さんの口調がいつもおかしくって。すんごく投げやりなんですよね(笑)

 

鈴木:(爆笑)

 

川上:そこら辺の謎もだいぶわかりました。こういう感じで。

 

鈴木:そんな複雑な人じゃないんです。単純なんです。

 

糸井重里っていうのが僕のことを羨ましがってくれたんですよ。何かっていうと、「俺は鈴木さんっていう人ととことん付き合ってよくわかった。鈴木さんは一言でいうとめんどくさがり屋だ。羨ましい」って言われたんですよ。「俺、めんどくさくなんか出来ないもん」って。めんどくさがり屋なんですよね。

 

川上:でも話聞いてると、めんどさいことばっかやってますよね(笑)今までの人生のほとんどが(笑)

 

鈴木:(笑)

 

川上:相当めんどくさいことやってますよね。

 

鈴木:ややこしいことの糸を解いてくのが好きなんですよね。楽しいですもん。嫌だと思っててもやり始めると、ゴチャゴチャになってるから、それをほぐしていくのは好きですね。

 

川上:どこそこで喋ったっていう言葉を聞くと、本当にめんどくさい感じは伝わってきますね(笑)

 

鈴木:あとはチンチロリン勝負って。いつもここにサイコロ入れてるんですよね。

 

川上:そこは生き方としても尊敬します。

 

鈴木:とにかく川上さん面白い人だったから、僕としては川上さんにやってもらった方が。是非。

 

川上:いやーーもう本当に真剣にやらないといけないんで。というか真剣にやるつもりで。やらさせて下さい。

 

鈴木:是非。

 

ーナレーションー

 

ジブリニコニコ動画が手を組んで、何かが始まる。そんなドラマチックなプロジェクトがスタートするのかと思いきや、どうも鈴木さんと川上さんが乗った船はどこへ行くのかまだわかりません。

 

 

川上:僕、ジブリに入社出来ないですかね?

 

(全員、笑い)

 

川上ニコニコ動画っていうんじゃなくて。ニコニコ動画でやるとニコニコ動画のための仕事の仕方にどうしてもなっちゃうじゃないですか。なんかジブリでバイトかなんかで。

 

鈴木:バイトかなんかって(笑)

 

川上:ネット周りだったら、僕は結構考えられると思いますよ。

 

鈴木:お願いしますよ?

 

川上:じゃあ入れて下さい。あの真面目に。僕は本気で考えてて、前回お会いしたときに社内の説明どうしようかって考えてたんですけど、鈴木さんに仕事やらせてもらえないかっていうのをずっと考えていて。

 

鈴木:過大な(笑)

 

川上:僕は教えてもらいたいんです。ニコ動でなんかっていうんじゃないと思うんですね。ニコ動でやるにしても、どうせやるんだったら新しいものを作ってやりたいんですよね。

 

鈴木:はぁーー。

 

川上:そのときにニコ動っていう枠があると制限されることもあるんで。やっぱりジブリさんと仕事をさせていだだくって、基本的にウチにとって良い話過ぎるので。

 

鈴木:あ、そうなんですか?

 

川上:それはそうですよ。普通の形でやるのは申し訳ないと思うんですよね。やるとなれば。

 

鈴木:そんな風な言い方をされると畏っちゃうんで困るけれど(笑)本当何がキッカケでこうなるかわからないから、巌ちゃんと知り合ったのもね、本当不思議な縁だし。

 

麻生ジブリ美術館に遊びに行かせていただいたときに。

 

鈴木:そう。あそこからなんだもん。

 

川上:密着させて下さい。

 

鈴木:そんなバカな(笑)

 

川上:僕、鞄持ちやりたいんですけど(笑)

 

鈴木:何言ってるの(笑)

 

川上:あの、やらさせて下さい。

 

ーナレーションー

 

鈴木さんは、鞄なんか持たないんですけど。

川上さんが持とうとしてるその見えない鞄の中身は、一体何が入ってるんでしょう。