鈴木敏夫のジブリ汗まみれを文字起こしするブログ

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鈴木敏夫のジブリ汗まみれ:ニコニコ生放送で企画された「ナウシカは日本を変えたのか?」の模様をお送りします。ゲスト:朝井リョウさん、川上量生さん

 2013年5月8日配信の「鈴木敏夫ジブリ汗まみれ」です。

http://podcasts.tfm.co.jp/podcasts/tokyo/rg/suzuki_vol268.mp3

 

川上朝井リョウさんはナウシカはこれは、、、

 

朝井:生まれる前とかなんですよ。

 

川上:そうですよね。

 

朝井:89年生まれなので。84年公開ですよね?『風の谷のナウシカ』。テレビとかビデオで初めて観て、子供の頃に観ると結構怖いなと思ったのが、一番最初の印象ですごく覚えていて。

 

蟲の造型とか音楽の漢字とかも含めて、子供の頃直視出来なかったんですよ。怖い話だと思っていて。

 

でもラストシーンだけは強烈に覚えていて。金の中でナウシカが上に登っていくシーンは、すごく覚えていて。あの意味っていうのも、子供の頃何もわからずに観ていましたね。

 

で、大人になって観直して、こんなに広いことを語っていた作品だったんだっていうのを、大人になってちょっとずつ考えられるようになってきたと思います。

 

ーナレーションー

 

1984年3月11日に全国公開された宮崎駿監督作品『風の谷のナウシカ』。あれから30年近く経とうとしているこの作品は、今でも世代を超えて世界中で鑑賞されています。

 

鈴木敏夫ジブリ汗まみれ。

 

今週は、先月ニコニコ生放送で企画された「ナウシカは日本を変えたのか?」の模様をお送りします。

 

出演は、第148回直木賞を受賞した『何者』の作者で自ら『風の谷のナウシカ』やジブリ作品のファンという作家の朝井リョウさん、司会役のドワンゴ会長 川上量生さん、そして鈴木さんです。

 

川上:でもナウシカ怖かったですよね。僕高校生のときだったんですけど、ナウシカって夢に、しかも悪魔に出てきましたね。

 

朝井:(笑)僕もすごい怖かったんですよ。

 

川上:怖かったですよね。

 

朝井:子供が観るにはテーマも子供っぽくないわけじゃないですか。今回も日本を変えたのか?っていうタイトルだし。

 

こういうものって子供の頃に触れていなかったので、食べたことがないものを食べてしまってウーッてなるような気持ちがして。

 

小学生くらいの時は一回置いとこう、みたいな。もうちょっと大人になってから観てみようっていう、ちょっと不思議な作品だと思います。

 

歌もあの、、

 

川上:あーランランララランランランっていう、

 

朝井:歌も含めて怖かったんですよね。

 

川上:ちょっと怖さがありますよね。ノスタルジックなところと同居して。

 

朝井:なんか怖いから人に話したくなって、人と分け合って、人と語り合いたくなってっていうのがずーっと続いてる感じはしますよね。公開して30年近く経つのに。

 

鈴木:自分で宮崎駿っていう人のそばにいて、ずっと思ってたのはね、このナウシカっていう物語って俯瞰して物語を説明してくれない。

 

つまり、ナウシカっていう主人公があっち行ったりこっち行ったりして、そこでの情報を観てる人が共有することによって、その世界がわかってくる。僕は推理ものだと思ってたんですよ。

 

朝井:はじめに説明せずにちょっとずつわかっていく。

 

鈴木:そう。しかも彼女がわかったことでないと僕らにはわからない。

 

朝井:ああ。そうやって考えると難しいですよね。

 

鈴木:実はこれ故に、ナウシカ出突っ張りでしょ?

 

朝井:たしかに。

 

鈴木:だからミステリーというのかサスペンスというのか、その手法だと思ったんですよね。

 

朝井:確かに観たときに、いきなり腐海のシーンから始まって、何にも情報がないわけですよね?こちらは。

 

その中でナウシカが色んなものに出会っていって、ナウシカがどういう言葉を交わせるだとか、そういうことすらわからないまま始まっていたので、そういう意味でゾワゾワしていたというか怖かった。

 

鈴木:だから怖いのは当たり前。

 

朝井:一緒に知らない世界に行って、迷子になってっていうのは確かにありましたね。

 

鈴木:そういうことです。「迷子になろうよ、一緒に」っていう感じなんですよね。

 

だけど何回も観てると、結末がわかってるからそこら辺のことを知りながら観るから、怖さは減っていきますよね。

 

川上:そうなんですよね。何回も観るとそうですよね。一回目は本当に怖いですよね。

 

朝井:怖いです(笑)

 

鈴木:だからこれ作るときにね、僕なんかその作り方に対して、そばにいた人間としていいんだろうかってちょっと思っちゃったんですよ。

 

朝井:あまりに説明が足りないということで?

 

鈴木:そう。だからもう少しね、説明があった方がいいんじゃないかっていうのが、ナウシカを作ろうということを決めたその日の夜の打ち合わせだったんですよ。

 

朝井:へえー!

 

鈴木:僕と宮崎駿高畑勲。みんなで喋って、僕がそのことを指摘した途端、そのときのことをよく覚えてるんだけど、もう宮さんが怒っちゃってね(笑)

 

朝井:え、怒っちゃったんですか?(笑)

 

鈴木:したら、高畑さんがそれをとりなしてくれて。高畑さんって非常に論理的な人でもあるけれど、一方でものすごく具体的な人。だから冒頭のタペストリーが出てくるじゃないですか。クレジットが出るところに。

 

要するに、ナウシカの伝説をそのタペストリーで説明しちゃう。あれって実は高畑さんのアイディアなんですよ。

 

川上:あ、そうなんですか?

 

鈴木:高畑さんがそういうのをやったらどうかと。

 

朝井:なるほど。

 

鈴木:そうすると面白いことが起きたんですよ。面白いことっていうのはね、僕はものすごく納得なんですよ。ああ、いいよねって。

 

で、宮崎駿っていう人がそこで面白いのが、タペストリー描いてみたいって。

 

川上:ああー。

 

鈴木:それがね、映画の全体にどういう影響をもたらすかよりも、そういうものを描いてみたい。

 

朝井:ものすごい純粋な方ですね。ものを作ることに対して。

 

鈴木:俯瞰してものを見るんじゃなくて、ああ、この人は作家なんだなっていうことを思いましたね。

 

川上:あのタペストリーってナウシカを観たときに一番の不思議で、なんてカッコいいんだと思ったんですよ。

 

鈴木:はい。

 

川上:なんてカッコいいんだって思ったんですけど、あれはあらすじだったんですか?(笑)

 

朝井:一応せめてもの情報提供。

 

鈴木:あれ入ってるんですよ。あれよく見てみると、全体のストーリー含まれてるんですよ。

 

川上:いやいやあれは含まれてないですよ(笑)

 

---

 

川上:「ナウシカは日本を変えたのか?」っていうことなんですけども、実際どれくらい変えたんでしょう。

 

例えば立花隆さんは、この本の中で宮崎駿が国民作家になったのは、『風の谷のナウシカ』を出してからだって言うんですけども、それって実際どのくらいそうなんですか?

 

鈴木:このときに具体的にそういうことが起きたわけじゃない。でも後にナウシカのあと、トトロっていうのを作るでしょ?それが揃ったときに突然変わったですよね、たぶん。

 

川上:『風の谷のナウシカ』が放映された段階では、まだ狭かったっていうことですか?

 

鈴木:狭いですよね。例えば、ナウシカの映画館での上映って、お客さんの数92万人なんですよ。これよく覚えてるんですけどね。

 

原作が売れるっていっても、数十万部。だからそこまでの影響力はまだなかったけれど、やっぱりその後の作品によって変わっていくっていうのが僕の実感ですけどね。

 

まぁ爆発したのはやっぱり『もののけ姫』。ただ国民作家という言い方は、僕も正しいなという気はしてるんですけどね。

 

川上:僕の母親なんかも『風の谷のナウシカ』良かったって言ってるんですよ。ただそのナウシカをいつ観たのかというと、最初のときじゃないですよね、たぶん。

 

鈴木:テレビなんですかね。

 

川上:たぶんテレビですよね。

 

鈴木:で、確か僕間違えてるかもしれないけれど、視聴率は16.7%。当時としてはその16.7ってそんなに高い数字じゃないんですよね。

 

朝井:そっか、あのときは30とかドラマとかでもガンガン出てたときですもんね。

 

鈴木:それでアニメーションだということで、放送時間帯が19時かなんかなんですよね。21時から出来ないんですよ。

 

僕よく覚えてるのが、21時から始めたのが、ラピュタですよね。

 

朝井:はいはい。

 

鈴木:それと『となりのトトロ』。これを21時から放映。そうしたら、これ大問題になっちゃってね。

 

朝井:あ、そうなんだったんですか?

 

鈴木:なんでか。当時、なぜ子供が観るものがそんな夜遅くに放映するんだと。日本テレビは抗議の電話だらけですよ。

 

朝井:え、そんな?

 

鈴木:そういう時代だったの!

 

朝井:へーー不思議!

 

鈴木:もうジャンジャン抗議の電話が鳴って。

 

朝井:だって、内容が子供に即してないっていう電話だったらわかりますけど。

 

鈴木:関係ないんですよ。

 

朝井:そういうことではないんですよね?

 

鈴木:そう。

 

朝井:へーー!

 

鈴木:要するに、世の中に道徳があったんですよ。まだ。

 

朝井:まだ(笑)

 

鈴木:そう。

 

朝井:まだ道徳があった時代。世の中に。

 

川上:そうですよね。あの当時イレブンPMですもんね。23時になったらイヤらしい(笑)

 

朝井:子供なんてテレビなんか観てない(笑)

 

川上:そういう時代ですよね。

 

朝井:そうか。そういう時だったんだ。知らなかった。

 

鈴木:日本を変えたのかっていうとあれだけど、やっぱり自然を大事にしようっていうことをみんなが平気で言うキッカケにはなったんじゃないですかね。

 

川上:それは映画の公開のときにも、そういう流れはあったんですか?

 

鈴木:まだそこまではね。

 

川上:なかった?

 

鈴木:うん。

 

川上:そこはやっぱりズレてるんですね。遅れてきてる。

 

鈴木:若干ズレてるけれど、中には先に行く人たちがいたのは確かですよね。ナウシカもそうだったし、トトロも特にそうだったんですけど、色んな手紙が来てたんですよ。自然を大切にしなきゃって。そういう手紙はやっぱり増えましたよね。

 

みんなが平気で人間と自然の問題を考えるなんてことを一般用語として言うようになったんですよ。これはものすごく覚えてます。

 

で、僕は腹の中で思ってることでいうと、みんな何かに踊らされてるんじゃないかなって、そういう気もしたんですよね。

 

朝井:ものすごい冷静な目ですね。

 

鈴木:いやいや(笑)というのはトトロでいえば、みんながなぜトトロを好きになったかといったら、お腹を押したらヘッコミそう。

 

朝井:フワッフワ感(笑)

 

鈴木:うん。それからメイちゃんがピョンピョン。そういうものが本来好きで人間と自然、そこまで思うのかな、とかね(笑)

 

朝井:やったー!って感じじゃないんですね?自分がプロデュースした作品であんな影響があって。

 

鈴木:そういうことをすぐ僕考えちゃう(笑)

 

朝井:ものすごい意地悪な目線ですね(笑)

 

鈴木:いやいや(笑)

 

---

 

朝井:日本を変えたという意味では、若くてイタイケな少女にここまでの責任を負わせて戦わせるっていう新しいヒーロー像が出来たんじゃないのかなって。それを追随するように色んな作品が実は生まれていることもあるのかなって思いますよね。

 

鈴木:この文春のジブリの教科書、宮崎駿がこの本を読んだらしいんですよ。

 

朝井:え!?どう感じとるんですか?

 

鈴木:僕には何も言わないんですよね。

 

朝井:怖い(笑)

 

鈴木:何にも言わないんですよ。だけれど、出版部の女性に対して色々感想を述べて。読んだらしいんですよ。

 

朝井:これ色んな方が寄稿されてますけど、色んな方が書いていて、その文章がすごく面白くて。

 

僕、男子だから男子目線で見るじゃないですか?女性が寄せた文章が気づかなかったことに気づかせてくれてすごく面白くて。満島ひかりさんと川上弘美さんがすごい面白かったです。

 

鈴木:あれ凄かったですね!

 

朝井:お二人とも原作について言及されていて。ものすごい印象的だったのが、ナウシカって正義の味方というか大きなものを背負って世界を救ったっていう感じじゃないですか。それに川上弘美さんはプレッシャーを感じたと。自分はどうなんだっていう。

 

ナウシカの場合は善の方向に自分の持ってる能力が振れているけど、それが悪の方向にも触れる可能性があるのが人間で、私はそうかもしれないって。それで落ち込んだっていう風に書いていて。

 

確かに映画で観ると、結構善の方向にナウシカって振れてる気がするんですけど、原作を読むと結構攻撃的というか悪の方向にも振れる瞬間があって、ナウシカも人間なんだなってこと原作を読むと実感出来て面白いですよね。

 

満島さんは原作の中でクロトワがすごく面白って書いていて、僕も原作を読んでいるときに、彼が救いなんですよね。

 

彼の一言が現実的で、ナウシカって僕たちが出来ないことをジャンジャンしていって、こんなヒーローがいたら自分なんて無力だなって思うところでクロトワが「そんなことやったって意味ねえよ」とか、ものすごい現実的なことをポンポン投げていって、それがすごく面白いなってところがありますよね。

 

鈴木:彼の使う状況判断、そして言葉見てると、クロトワこそ宮崎駿ですよ。

 

朝井:あ、そうなんですか!へー。

 

鈴木:一番人間的でしょ?

 

朝井:一番人間的で、クロトワが出てくると安心するんですよ。こういうことを言ってくれる人がこの世界にもいて良かったって思える存在。

 

鈴木:作家ってそういうもんなんですかね?例えば、ナウシカとかクシャナとか色々いるけど、ああやってクロトワに自分を仮託するっていうのか。

 

朝井:クロトワがいてくれて、僕はすごい安心しました。ナウシカがちょっと国の名前忘れちゃったんですけど、子供二人を見つけて救うシーンがあるじゃないですか?

 

鈴木:はいはい。

 

朝井:で、その二人を助けたって、これから先何十万人って死体を見るんだから意味ねえんだよ、とかそういうことを言ってくれる人がいないと、現実世界に生きるものとしてはゾワゾワしてしまうというか。

 

鈴木宮崎駿も日常的にはそればっかりですよね。

 

朝井:日常的にはそればっかりっていうと、最後に何バックさんでしたっけ?、、カレンバックさんだ!その人の対談が収録されてたと思うんですけど、そこでも宮崎さんはとにかく現実的なことおっしゃっていて。

 

鈴木:そうですね。

 

朝井:すごいつながりました。現実的に考える方なんですね。こういう話を描いていながら。

 

鈴木:そうなんですよ。高畑勲宮崎駿も二人が使ってる言葉ですけど、「理想を失わない現実主義」。

 

朝井:難しいな(笑)

 

鈴木:要するに、現実主義者っていうのはとかくニヒリズムに陥りがち。しかし理想を達成するためには現実主義が必要だろうと。やっぱりそれですよね。

 

朝井:ロマンちゃんとあるし、でも現実的な考え方も出来るしっていう。

 

---

 

鈴木:もう一回、本当何年ぶりかにナウシカの漫画の方を読み返してみたんですよ。したら色んな意味で面白かったですよね。

 

色んな意味で面白いことの一つが、さっきから主人公の見た目で色んな情報が入るって言ってたけれど、途中から変わるんですよね。俯瞰の話になる。その中でナウシカがどう行動するかって。あれ完全に違いますよね。

 

川上:変わりますよね。ナウシカが出てこなくなりますよね。途中から。

 

鈴木:そう。

 

朝井:確かに。

 

鈴木:途中から変わるんですよね。あの人はそういうところ面白いんですよねー。

 

朝井:確かに4巻以降くらいから、ナウシカが出てこないところ長いですよね?

 

川上:長いんですよ。

 

鈴木:これ立花隆さんに指摘されたんだけど、自分の周りにもナウシカファンは多いんだと。しかも原作。みんな読んでると。ところが4巻目くらいから難解になるんで、そこでストップする人が多いと。

 

朝井:ああー。

 

鈴木:僕それ聞いてね、あ、なるほどーと思ったんですよ。漫画の描き方が違うことと、皆さんが読まなくなることと、本の売れ行きと全部関係があるんですよ。主人公の見た目で情報を掴んでいたときまでが売れてるんですよ。

 

朝井RPG的に読者も一緒に楽しんでたときですよね。

 

鈴木:そう!ロールプレイングゲームですよね。

 

朝井:確かにそういう感じで読んでて。敵対関係も最初ハッキリしてたじゃないですか?途中から敵対関係とかじゃなくなってきてっていうところから、勉強でもするかのように読まないとついていけなくなりますね。

 

鈴木:一種、哲学ですよね。

 

川上:登場人物も増えるんですよね。敵対関係も色んな敵対関係が出来ちゃって。

 

朝井:そうなんですよね。最初は一本化したわかりやすい、誰もが見ても悪っていう人がいて、でも途中から違ってくる。

 

鈴木:宮さんの言い方のなかに、こういうような言い方があるんですよ。非常に大きな話なんだけど、人間っていうのは不遜に生きてきた。それによって馬鹿なことを繰り返してきたんだろうってそれが根底にあるんでしょうね。

 

朝井:それがナウシカの根底にあるんですね。

 

鈴木:あるんですよ。

 

---

 

川上:久石さんってナウシカで初めて音楽を作ったんですか?

 

鈴木:そうですね。映画音楽たぶん初めてだと思う。それまでCMしかやってないから。

 

朝井:しかもナウシカのときが、はじめにナウシカっぽい音楽をイメージした曲をかけながら作られていた。コンピレーションアルバムみたいなものをはじめに作った、みたいなお話を伺ったような気がするんですけど。

 

鈴木:イメージアルバムですね。

 

朝井:そうですよね。イメージアルバムがあって新しいものを久石さんに頼むって結構難しいことではないですか?

 

鈴木:いや。それは久石さんがやってるんで。

 

朝井:あ、そうだったんですね?

 

鈴木:そうなんですよ。こういうことなんですよ。日本映画ってね、それこそ朝井さんが生まれる以前、一番貧弱なのは音楽。いわゆるオーケストレーションで映画をやるなんて誰もやらなかった。

 

朝井:あ、そうだったんだ。知らなかったです。

 

鈴木:そうなんですよ。で、ナウシカってオーケストレーションでしょ?これね何でそういうことが起きたのかというと、徳間書店ナウシカをやると。そうしたらその系列の会社に徳間ジャパンっていう音楽の会社があったんですね。これが幸い。

 

普通だと音楽費って未だにそうらしいんだけど、削られて削られて本当に貧弱。というときにレコードを出したいっていう話があって、それを聞いた高畑さんが思いつくわけですよ。久石さんを選んだあとに、イメージアルバムっていうのをやりませんか、と。

 

何かなと思ったら、ナウシカの原作を読んで久石さんが自由に作る。それを作ったら、それを聴きながら良い悪いを話し合って、それで本番に臨む。これは贅沢ですよって高畑さんが言って、それで突然ナウシカはそういう作り方になって、それでオーケストレーションでやることになったんですよ。

 

朝井:へーー。じゃあそういう意味では音楽的にも日本を変えたっていうことですね?

 

鈴木:日本映画変えたと思いますね。

 

朝井ジブリといえば音楽が良いっていうのは、既に常識的な話になってますし。

 

鈴木:今となれば音楽費にお金をかけることは当たり前になってきたけど、当時は非常に珍しい。そういう偶然が重なったんですよね。

 

川上:イメージアルバムっていうのはつまり、イメージボードっていうのがあるから、そういう音楽でもあるはずだ、みたいなそういう発想なんですか?

 

鈴木:そうですね。仮に作ってみようと。それがレコード会社にとってはナウシカの名前で、しかも売れるんだっていうメリットがあったわけですよ。そこに高畑さんが目をつけたんですね。

 

川上:イメージアルバムっていう概念自体は日本だけのものなんですか?

 

鈴木:だと思いますけどね。

 

川上:はい。

 

鈴木:当時、若干そういうものが始まってたんですよね。勝手にタッチのイメージアルバム作っちゃうとか。色んな作品に対してそういうレコードを作ると、売れたりしてたんですよ。映画にはならない、テレビ化もされない。しかし音楽だけはある。

 

川上:それを逆転させて、アルバムから作ることをしたってことですね。

 

鈴木:そういうことです。

 

ーナレーションー

 

4月に創刊、スタートした「文春ジブリ文庫ジブリの教科書シリーズの1は『風の谷のナウシカ』です。

 

立花隆さん、内田樹さんをはじめ、当時のスタッフのインタビューなど様々な視点で作品を紹介しています。ナウシカを観た方もこれからの方も楽しめる一冊となっています。

 

 

朝井:あまり一般のファンからすると、見たことのない絵だったりとか制作現場の写真とか入ってて、そこもすごい面白かったです。ビックリしました。機械とか今と全然違うじゃないですか?

 

鈴木:全然違うんですよ。それ撮影台なんですけど、今ねコンピュータ上でやっちゃうから。

 

朝井:こういう状態だったんだってことすら、僕は知らなかったんで、すごい新鮮でしたね。あとイメージカットいっぱいありますけど。

 

 鈴木:30年前かな?映画を作り出したのが1983年なんで。

 

朝井:公開の一年前。作らせてもらえる拠点を見つけるのも大変だったっていう風に。

 

鈴木:そうなんですよ。

 

朝井:そこの話も全部書かれてますもんね。

 

鈴木:取材を受けたんですけど、これまで喋ってないことを喋るよう努力はしたんですよ。

 

朝井:ものすごい色々書かれてますよね。

 

川上:色んな人が観たナウシカ論っていうのを一冊にまとまってるっていう。

 

鈴木:なんか大人の話も聞いてみたかったんですね。なかなか今、批評って難しい時代だと思うんで。

 

川上:単純なアニメファンとは言えないような立派な人たちの書いたナウシカの評ですよね(笑)

 

ーナレーションー

 

ジブリの教科書シリーズ、そしてシネマコミックは今後、『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』と順次刊行していきます。

 

ぜひ書店などで遭遇してください。