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ポッドキャスト版「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」「未来授業」の文字起こしをやっています。「未来授業」は2020年4月分からです。文字起こししてほしいものがあれば、ツイッターのDMに連絡下さい→https://twitter.com/hatake4633

<未来授業>角田光代 第1回「源氏物語に挑む」

 

ーナレーションー

今週の講師は、作家・角田光代さんです。

 

2005年『対岸の彼女』で直木賞を受賞。その後も『八日目の蝉』や『紙の月』など、数々の作品を発表してきました。

 

そんな角田さんが、およそ5年の歳月をかけて取り組んできたのが、『源氏物語』の現代語訳。これまで、与謝野晶子谷崎潤一郎など、数々の文学者が翻訳を手掛けた古典文学の名作です。

 

話を持ちかけたのは、作家の池澤夏樹さん。角田さんにとっては大先輩、憧れの文学者でした。

 

未来授業1時間目、テーマは「源氏物語に挑む」。

 

 角田:池澤さんのご意向を、編集部の方が依頼してくれたんですけども、その時は大変荷が重いし、やりたくないけれども、まぁちょっと断ることは出来ないかなと思って「考えます」って言って3日4日頂いたんですけど、やるしかないだろうなっていう気持ちではいました。

 

実は全くプレッシャーはなくて、本当に素晴らしい作家の訳がいくつも何種類もあるので、皆さんもうそっちを読めばいいじゃないか、という気持ちでプレッシャーはなかったんですね。なので、こっそり訳してこっそり置いとけばいいんじゃないのかなって思ってました。

 

ただ、皆さんと違うのが、皆さんこれまで訳してきた方はすごく源氏物語を愛していて、愛するポイントがあって、私がやりたいってい気持ちだったと思うんですね。それが自分には全くない、というのがかなり私のマイナスというか、どういう気持ちでどういうことに注意して訳したいっていう気持ちがなかったっていうのが非常に大変でした。  

 

単純に知識、素養がないというか、これを実際に作業を始める前までに、特に源氏物語に興味がなかったり魅力を感じなかったっていう、単純に私の素養のなさだったり、頭の悪さだったりすると思います。

 

かなり距離をとって、じゃあこんなにたくさん訳がある中でどうすればいいのかなっていうことを考えましたね。

 

ーナレーションー

いづれの御時にか、女御、更衣あまた候ひ給ひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて 時めき給ふありけり。

 

紫式部源氏物語を書いたのは、およそ1000年前の平安時代。登場人物が多く、人間関係が複雑な上、私たちにとっては尊敬語、謙譲語を読み解くのも一苦労です。

 

角田さんは、その現代語訳に独自のアプローチで挑みました。

 

角田:たぶん、他の方と違くて単純な話で敬語を全く使ってないんですね。それは読みやすさを優先して、スピーディーに読めるようにしたいと思ったので、敬語を抜いているということが、これはやってはいけないことだと思うんですよね。やっぱり敬語ありきの古典なので、そういう無謀なことをしている人はいないと思いますね。

 

敬語で関係性を表す面白さっていうのは、はなから捨ててしまって、それよりも話の面白さ、スピードっていうのを全面に押し出したいと思ってそうしました。

 

かなり罪悪感があったし、今も実はあるし、じっくり読むのには適した訳があると思うんですよ。じっくり3年かけて読む、本当に言葉の美しさを味わいながら、そして情緒、平安の情緒を味わいながらゆっくりゆっくり読むのには、もっと適した訳がたくさんあります。

 

私のものはそれに適していないと思います。ここで出てきた人間が、ここで出てくる。あるいは伏線だったんだ!っていうような、急いで読まないと忘れちゃうようなことをバーっと読むことによって、そういう関係が見えてくるんですよね。あ、この人がここでまた出てくるんだ、この人のこうなってこうなってこうなるんだ、みたいな出来事が立体的に見えてきて、そこが面白さの一つでもあると思うんですよね。

 

私も実はたぶん、高校時代に授業で古典をやって、すごい苦手意識をつけられたと思うんですよね。それで何か古典を見ると、受験勉強のような気持ちになってしまうっていうことがずーっとあったので。

 

でも実際、すっごいそれで損したなと思うんですよね。それで遠ざけてしまったものがたくさんあると思うんで、源氏物語も含め、新古典シリーズに本当に面白いものがたくさんあると思うので、苦手意識、お勉強ということから離れてみると、すごく楽しい世界があると思います。

 

読めて良かったなと思います。源氏物語というのを訳すことによって、すごくじっくり読めたと思っていて、それで読めて良かったなと思いますね。