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ポッドキャスト版「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」「未来授業」の文字起こしをやっています。「未来授業」は2020年4月分からです。文字起こししてほしいものがあれば、ツイッターのDMに連絡下さい→https://twitter.com/hatake4633

<鈴木敏夫のジブリ汗まみれ>直木賞作家・朝井リョウさんと、鈴木さんの対談の模様をお送りします。

2013年10月8日配信の「鈴木敏夫ジブリ汗まみれ」です。

http://podcasts.tfm.co.jp/podcasts/tokyo/rg/suzuki_vol288.mp3

 

瀧井:今回はこの『世界地図の下書き』の発売と『風立ちぬ』の公開を記念をしての対談ということで、よろしくお願いします。

 

朝井:記念された!嬉しい。記念された。

 

瀧井:本当に今回表紙がまさか、まさかっていう。

 

朝井:本当です。ダメ元だと思って。

 

鈴木:だってうるさかったんですよ(笑)

 

朝井:(笑)本当に編集の方がアタックをして下さってっていう。

 

鈴木:まあ色んな方からね、そういうご注文って実は多いんですよ。

 

朝井:そりゃあ、そうですよね。

 

鈴木:僕は言われた時にすぐ、近藤勝也のことを思い出してて。もしかしたら、やってくれるかもしれないなって思ったんですよね。そうしたら、本当に2つ返事で。

 

朝井:いつダメになるんだろうなって思ってましたもん。ずっと。原画を見るまで。やっぱダメでしたって。やっぱ無理でしたスケジュール的にっていつなるんだろうなって思ってたら。新しい映画の直前に作られる本ですし。

 

鈴木:要するに、描けるかどうかですよね。

 

朝井:読んでいただいてっていうところで、読んでもらって面白くなかったって思ったら、やっぱり描くことって難しいんだろうなって思っていたので、読んでいただいて描いていただけるっていうところで、凄い緊張しました。

 

普段、ジブリの作品に関わってる方じゃないですか。だから物語を見る力みたいなものって、とんでもない研ぎ澄まされ方をしていると思うので。

 

鈴木:それはない(笑)

 

朝井:いやいや、それの方に読んでいただけるっていうのが怖かったですね。本当に。

 

ーナレーションー

今週の鈴木敏夫ジブリ汗まみれは、集英社の雑誌『SPUR』9月号の企画で行われた、ジブリ作品を愛してくれている直木賞受賞作家、朝井リョウさんと鈴木さんの対談の模様をお送りします。

 

朝井:今回あまり戦争に対する意見というものは、作品の中に落とし込むわけではなくって、、

 

鈴木:あ、観てもらったんですね?

 

朝井:観ました観ました。美しい飛行機を作りたいっていうところが1本の大きな筋になっていて、というところだったんで。あと、夢を追いかける男の話じゃないですか。ロマンというか。そこに触れてもらいたいですよね。実際、子どもにこそ観てもらいたいなって観ながら思ったんですけど。

 

鈴木:あ、そうですか。なるほど。

 

朝井:本当に純粋に夢を追いかける1人の男の半生の話だから。またジブリの登場人物で好きなのは、客観性がないところなんですけど、二郎はまさにですよね。本当に客観性がなくて、自分の観たもの、感じたものを追いかけていく姿っていうところが今なかなか生み出せるキャラクターじゃないじゃないですか。色んなところに客観性があるから。とにかく。

 

やっぱりどうしても協調性があるようにしないといけないと、上手く生きていけないっていう時代になってると思うんで、その中で二郎があの客観性のなさで真っ直ぐ生きていく姿っていうのはすごく励まされたんですよね。

 

鈴木:なるほど。

 

朝井:良かったーって思いました。

 

鈴木:変わってないんだよ。要するに、一貫してるってことですね。

 

朝井:それがすごく安心して。前に鈴木さんおっしゃってましたけど、出会ったときから、宮崎さんが描く男女は、お互いのこと好き同士だったっていうのが今回もその流れの中にあるなと思っていて。ジブリ観てるなーと思って。その時に。

 

鈴木:多少意地悪したんですよね。

 

朝井:あ、そうなんですか?

 

鈴木:ファンタジーとちょっと違うでしょ?要するに、本当の話なんだから。

 

朝井:そうですね。

 

鈴木:ファンタジーの世界だったら、夢の飛行機を作って、それで空中戦をやれるでしょ?でも出来ないでしょ?どうするんだろうと思って(笑)

 

朝井:確かに僕も観ながら、作った飛行機が歴史としては皆さん知ってることで、色んなことに使われたってことは知っていることじゃないですか。そこはどうやって描くんだろうなって結構ドキドキしながら観てたんですけど。

 

鈴木:どうでした?

 

朝井:最後、一機も帰ってこなかった。本当に数分間ですけど、飛行機がどう使われたかっていうのを示唆するようなシーンが出てきて、その次でも一機も帰ってこなくて、空を飛ぶっていうのは呪われた夢だっていうことを話した後でも、それでも力を尽くして生きていかなければならない、1日1日を大切に生きていかなければならない、それでも生きていかなければならない、っていうところを提示されたので、すごいホッとしました。

 

鈴木:ホッとしたんですか?

 

朝井:すごいホッとしました。夢は叶いましたけど。美しい飛行機を作るっていう夢は叶いましたけど、その後に一機も帰ってこなかった。こういうことに使われてしまったっていう、すごい絶望を味わって。二郎と共にすごい絶望を味わって。でもその後に、現実の中ではないかもしれないけれど、カプローニと対話して、これから先も生きていかなければならないっていうところが良かった。

 

鈴木:朝井さん、作家だから口挟んじゃうんだけど。

 

朝井:はい。

 

鈴木:本当はラストシーン違ってたんですよ。

 

朝井:あ、そうなんですか。

 

鈴木:まず1つ言いますね。「生きて」って言うじゃないですか。

 

朝井:はいはいはい。

 

鈴木:あれ最初ね「来て」だったんですよ。

 

朝井:あーー!超怖い話だ、これ。そうだったんだ。えーー1文字変わるだけで全然違う。

 

鈴木:「い」入れたんですよ。

 

朝井:「来て」だったんだ。

 

鈴木:でね、「君は生きねばならない」もなかったの(笑)

 

朝井:そうだったんだ!

 

鈴木:最初の案はね、本当ちょっとしたセリフでこんなこと出来るんだって、僕はそれを見ちゃったんだけど、とにかく3人とも死んでるんですよ。

 

朝井:確かにそうやって聞くと、1番最後の「ワインでも飲もうか」っていうシーンも、そっちに誘われていくっていう終わり方に見えますよね。

 

鈴木:だから、カプローニと二郎は煉獄にいるんですよ。で、彼女はもう彼岸へ行ってる。それで二郎を呼びに来たんですよ。その前に「美味しいワインがあるから、飲んでかないか。その後でもいいだろう」って話だったの。そうなってたら、どう思います?

 

朝井:そうなってたらかーー。そうなってたら結構ショックだなー確かに。夢が潰えたあとの肯定的な部分というものを、僕は割と安心してというか期待を持って受け入れたところがあったので。

 

鈴木:僕悩んでるんですよ。

 

朝井:それは夢が潰えてしまった後をどう扱うかっていうことで悩んでる?

 

鈴木:そうです。

 

朝井:どこかで「END」ってつけられてないじゃないですか、実際は。でも本とか映画ってどこかで「END」ってつけなきゃいけないから、それがどうしても折り合いがつかないまま、ずっと書いてるんですけど。映画を作る人ってそうなのかなって思いましたね。

 

鈴木:特に映画なんて2時間足らずで終わっちゃうんだもんね。

 

朝井:きれいに終えなきゃいけない。

 

鈴木:でも実際の人生は続いていくわけだから。

 

朝井:そうなんですよ。今回は特に実際にいらっしゃった方の話で、その後に零戦が使われたっていうのは日本国民だったらみんな知っていることだし。初めて海軍からすごい無理難題を押し付けられたり、飛行機が初めてきれいに飛んだときに、二郎だけが嬉しくなさそうで、そことかも先を知っている人が観ると、うーん、ってなりますよね。あ、嬉しくなさそうな顔してる1人だけ、と思って。

 

鈴木:何考えてたんですかね。

 

朝井:色んなシーンが後になって思い起こされてきて。で、人と喋って、あれってこうだったんじゃない、こうだったんじゃないっていう映画だなと思って。

 

鈴木:非常に個人的な映画ですよね。で、地味な映画ですよね。

 

朝井:まあそうですね。地味か派手でいったらそうですね、もちろん。人が本当に生きた道なので、フィクション的な物語は奈緒子との出会いとかはあったりもあるかもしれないけれど。

 

鈴木:自分の好きなこと全部やったんですよ。

 

朝井:本当にそんな気がします(笑)

 

---

 

朝井:僕は今回本当に逃げるっていう選択肢を、小さい子とかに発想として与えられるような話を書きたいなと思っていたので、まさにその夢が潰えた後に、また夢を見られるようなことは起きるかもしれない。その可能性はあるっていう話をすごい書きたかったので、とにかく生きる場所が変わっても、今までと同じように生きる可能性はあるっていう話を書きたかったんですよね。

 

でもその中でその可能性がない、まさに「来て」の話は繋がると思うんですけど、そうじゃないことも勿論あるわけで、そこもちゃんと書きたかったっていうのがあって。

 

今回いじめる人が出てくるんですけど、そのいじめる人が最後まで変わらないんですよね。約束するんですけど。これを達成したら、いじめをやめてくれっていう風に約束をするんですけど、約束は達成されるんだけれども、いじめっ子は一切変わらないっていうシーンが出てきて。もうそれは絶対書きたくって。

 

100%ハッピーエンドというか、こういうことが起きてつらいけど、大丈夫だよっていうことも言えないな、と思って。それは無責任だなと思って。それは「来て」と「生きて」ですごい悩んでる話に似てるかもしれないんですけども。

 

僕もそれは言えないんじゃないかな、と思って。でも100%可能性がないっていうことも言えないし、そんなこと言っちゃったらね、もう大変悲しいだけの話になってしまうので、それも出来ないなと思って。

 

何を込められるだろう、と思ったら、変わらない人も当然いるけど、何しても変わらない人はいる。その人にいつまでも変わって欲しいって願いを込めてても、それの時間ってすごくツライ、無駄な時間になってしまうなってことをすごく思うので。

 

だったら、自分の生きる場所を変えると、自分の人生が変わるかもしれないので。絶対に変わるとは書けないなと思って。変わらない人もいて、変わるかもしれない自分もいるってところを書きたかったんですよね。

 

鈴木:小説もすごいところに来てるんですね。

 

朝井:その点でいうと、「来て」の話はもの凄い他人事と思えないというか。無責任に「大丈夫だよ。これから生きて希望があるよ」とも言えないよなーって思うんですよね。

 

今回もある意味、夢が潰えた後の子供たちのシーンが最後に出てくるので、結局バラバラになってしまう。みんなで1つになりたいと思って、色んなこと計画するけど叶わないわけなので。

 

夢が潰えた後に、どういうメッセージを与えられるのかなって思ったら、「これからまた新しい希望が生まれるかもしれない」っていう希望しか僕は書かないのかなと思って。でも、その希望だけでも書けたらいいなと思って書いていたので、いま「来て」の話を聞くと、すごい「うーーん、そうだよな」って思います(笑)

 

鈴木:前も話したかもしれないんだけど、ハリウッドっていうところがね、ちょうどスターウォーズの頃。だからずいぶん前なんだけど。それまで作ってきた映画と、あのスターウォーズの辺りでね、ハリウッドが一変するんですよね。

 

それは何かって言ったらね、それまでハリウッドって何をテーマに作ってきたか。みんな「LOVE」でしょ?雑に言えば。歴史劇であろうが、ギャング映画であろうが、西部劇であろうが、全てテーマは「LOVE」。

 

今の話で「生きる」って言葉が出てくると思うんですけど、そういうのって関係なかったんですよね。愛するか愛さないか、なんですよ。

 

ところが、あることによって、スターウォーズのプロデューサーと知り合うことになって、そこで教えられたこと。これからの映画は「LOVE」ではない。フィロソフィー、哲学であると。

 

そうすると、そういう要素が入ってないと、お客さんが見てくれない。これビックリしたんですよ、僕。

 

朝井:その話、前も若干伺って、その話好きなんですよ。変わっていくんですよね。根底にあるものが。

 

鈴木:そう。その要素が入ってないものはお客さんは見てくれない。ヒット映画にならないってことですよね。で、そういうことがなきゃ、スターウォーズダースベーダーがお父さんだなんて、そんな要素は入ってこないんだって。そこがあの映画の1番の違い。それ以降の映画見てると、確かにそれだけじゃないんだけど、まさに宮崎駿なんかそうでしょ?

 

朝井:そうですね。本当にメタファーみたいなものがあって、みんなが考えるってことですよね。

 

鈴木:そうするとね、その先はどうなっていくんだろうっていうのが。で、朝井さんのね、前回の『何者』なんか見てても明らかにそうだしね。でもその時に常に元になっているのはね、自分というものを人類が発見したのが、19世紀ぐらいですか。フロイトとかそんなの出てくるわけでしょ。それまではないわけでしょ、自分というものが。

 

朝井:自分すらも見つけられた、という。  

 

鈴木:で、どうも自分を見つけてから人間は不幸になってるでしょ。

 

朝井:うーん。不幸。

 

鈴木:だって辛いわけでしょ。

 

朝井:まぁ辛いですね(笑)

 

鈴木:だって芸術なんて言葉も自分というものの発見と関係あったわけでしょ。要するに、レオナルド・ダ・ヴィンチだろうがミケランジェロだろうが、みんな「これ描いて」って言われて「これ作って」って言われて注文に応じるわけでしょ。それで作るわけじゃない。そこにおいては、自己表現だの自己実現だなっていうのは概念として無いわけじゃない。

 

朝井:うんうん。

 

鈴木:頼まれたものを作る。

 

朝井:でもいま自己実現、自己表現ばかりですからね。

 

鈴木:だらけでしょ?

 

瀧井:『何者』とかも、まさにそういうことを書いた小説ですもんね。

 

鈴木:そのことをね、象徴的に扱ってらっしゃるのので、だから共感するお客さんというか読者が多い。ということじゃないかなって気がしてて。そうすると、急ぐんだけれどその次はどうなるの?って(笑)

 

朝井:そうですね。その次どうなっちゃうんだろ。前も桐島関係でお話をして下さったときに、青春というものも見つけられたものであるから。

 

鈴木:発見なんだもん。

 

朝井:『若きウェルテルの悩み』あたりで、若い人が悩むっていうことが尊いっていうものは、後から価値がつけられたものであって、元々あったものではないから、いつか青春っていうものに関しては、また別のものがとって変わるだろうってお話をされてたのが、すごく頭に残っていて。

 

鈴木:青春時代だけが素晴らしいなんて、嘘に決まってるじゃない(笑)

 

朝井:付加価値を後からつけられて、名前つけられてたものだって話が「あ、そうか」と思って。すごくそれが印象的だったんですが、それがまさか「自分」というものがない方に次は行くんじゃないかっていうのは、、

 

鈴木:1番先進的な考えでいったら、絶対それだよね。若いでしょまだ。だから早くチャレンジしてほしいなって(笑)

 

朝井:超難しい(笑)でも「来て」っていうエンディングだったら、まさに物語の中から自分が見ていたその主人公がいなくなるわけですから、ある種自分が消えるエンディングにもっていく流れの第1作目だったかもしれないっていう。

 

鈴木:なんかあるんですよね。それが自分の中に。

 

---

 

朝井:客観視されてることが目に見えるようになりましたからね。

 

鈴木:そうだよね。だって流行なんだもん。客観的に自分を捉えることが。

 

朝井:それがすごい大きいですよね。客観視されてることが目に見えてない時代の話だから、特に二郎は自分のことを客観視しなくてもいいし、客観視されてるなんて気づいてないですけど。

 

鈴木:そうそうそうそう。

 

朝井:今もそれが表出してますからね、もう。文字媒体でも、どういう媒体でも。そうなってくると、二郎みたいな話し方、生き方っていうのは、すごいしづらくなってきてしまっている。

 

鈴木:大体ねあれなんですよ。昔ね、皆さんもよく知ってる人でいうと、ジャイアンツに長嶋茂雄っていう人がいたでしょ?この人を扱った記事その他、みんな彼がどのくらいヒットを打ったかとか、ホームランを打ったかとか、云々されるのはそれだけ。で、誰1人長嶋に対して、「あなたの人生観は?」って訊く人いなかったのよ。

 

朝井:ああー。

 

鈴木:これ間違ってるかもしれないけれど、これ週刊アサヒだったんじゃないかなと思うんだけれど、小泉今日子という人を取り上げて、半自叙伝っていう企画があったんですよ。これね僕にとってはね、衝撃。なんでこの年増もいかない女優が人生を語るの?どうかしてるんじゃないかと思ったの。

 

朝井:訊かれますよ。いますぐ。人生について、とか。「24だよ、まだ!」って思いますけど。

 

鈴木:全部インスタントになってるわけでしょ?深みなんかあるわけないんだもん。だからその捻れてるやつを元に戻して(笑)

 

朝井:いますごい、そうだわーって思って。インタビューとかで作品そのものに関する話だったら答えられるんですけど、「書くこととはどういうことですか?」とか、そういうことを訊かれると、何も出てこないなっていうのはずっと思ってたので、それはそうだなと思いました。

 

鈴木:インタビュアーの人でね、いま1番聞いてて面白いなと思うのは「その時の思いは?」。

 

朝井:あー無理無理無理。

 

鈴木:(爆笑)あれやめてほしいよね!

 

朝井:やめてほしいやめてほしい。

 

鈴木:なにあの思いって(笑)わけわかんないよ!

 

朝井:そんなのわかんないよ。喋れないから書いてるし、みたいな。

 

鈴木:そうだよね(笑)

 

朝井:それを伝えたいから作品があるわけですからね。っていうのはすごい難しい。でも聞かないと、成り立たないんですかね?記事としては。

 

鈴木:やっぱり流行ってるんでしょ?

 

朝井:でも、ものを作ってる時ってあまり客観視してないじゃないですか?自分が作ってるものに対して。でもインタビューってすごい客観視して答えないといけないから、そこは難しいっていうか無理だよって思いますよね。たまに。いますごいインタビュアーの前で言ってますけど(笑)

 

鈴木:二重人格にならないで、もうインタビューの時も主観的に喋る。

 

朝井:インタビューで主観的に喋れないじゃないですか?

 

鈴木:そうなんだけどね(笑)でもね、宮崎駿は主観的ですよ。かなり。

 

朝井:インタビューの時もそうなれたら、どれだけいいだろうって。

 

鈴木:でしょ?

 

朝井:本当に。

 

鈴木:僕ね、宮さん見てて、羨ましいんですよ。だから客観的に聞いてると、わけわかんないんだもん(笑)

 

朝井:すごい面白かった、宮崎さんの対談とか読んでると。ナウシカの文春文庫から出ているやつの最後の環境学者との対談がすごい好きで。客観的に話さないから、主観的に話すから、喧嘩しているようにしか思えない(笑)

 

鈴木:そう!

 

朝井:喧嘩してるんじゃないのかなって思って。

 

鈴木:人間って、雑に言えばどこかで主観的と客観的というのか、俯瞰してものを見ないところでものを作るわけでしょ?

 

朝井:そうですそうです。

 

鈴木:そっちの要素で作るに決まってるんだもん。作家っていうのは。

 

朝井環境学者に対して、「環境を大切にするっていう哲学じゃない哲学が生まれないと無理ですよ」とか言ってて、うわって思って(笑)これは主観的にものすごい物事を捉えてるなって。

 

鈴木:全く客観性ないんですよ。

 

朝井:あれは感動的でもありましたね。

 

鈴木:よくあんな人が生まれたなーと思って。だって何言ってるか、さっぱりわからないんだもん(笑)

 

朝井:(笑)

 

---

 

鈴木:ついでだからお話しちゃうとね、トトロをですね、僕何枚描いたかわかんないんですよ。

 

朝井:ああ。

 

鈴木:これね、お墨付きをもらってるわけ。絵描きいっぱいいるわけだから、みんな描けるはずだと思ってるわけよ。特にアニメーションなんて、1人の人間の描いたもの、考えたものをみんなで寄ってたかってやるわけでしょ?そうしたら、全員が宮崎駿になるっていうのが条件なの。ところが、誰も描けないんですよ、これ!絵描きって。

 

朝井:はぁー。自分が出るんですよ、やっぱり。

 

鈴木:そう!自分が邪魔するの!なんで描けるの?自分いないからなのよ。

 

朝井:絶対自分出ますよね、絵描きを志す人は当然。

 

鈴木:で、僕はね、見よう見真似で始めてみたんだけど、筆の世界ってあるでしょ?書道。あちら側の有名な人の書を模写をするっていうんで、それ大事な勉強なんですよね。臨書っていうんですよね。

 

そうすると、実は書道に限らず、絵だってありとあらゆるものが模写からスタートでしょ?それこそ、三島由紀夫が言った「創作とは何か?」って。「模倣の頂点である」っていう。

 

朝井:どこかで自分が出てきて、その人のものに入り込むっていう。

 

鈴木:そうなんですよ。それもこれも全部自分ってことなんですよ。

 

朝井:そうですよね。

 

鈴木:僕ずっとね、若い時からそういう問題に直面したこともあって、ずっとどこかに引っかかってるんですよね。自分とは何かって。

 

瀧井:私はいま会社勤めをしていて、クリエイターとしても作家としても。なので、自意識のバランスとか、、

 

朝井:ああ、僕は2つありますね。

 

鈴木:インタビューのときも作家でやったら?っていうのは。

 

朝井:インタビューのとき、会社員になっちゃうんですよね。

 

鈴木:だから、そっちも会社員辞めて、完全に分けたら?って。

 

朝井:そうなんですよ。でも宮崎監督はそこは自分のまま喋るんですね。クリエイターのまま。

 

鈴木:そう。

 

朝井:難しいなー。堀越二郎を見てると、すごく羨ましいなと思って。本当に。僕だったら飛行機飛んだら、すごい色んな人に気をつかって超笑顔に。

 

鈴木:(笑)

 

朝井:あまりムスッとした顔で別のところとか見れないです。飛行機見てないんですよね。飛行機飛んだときに、堀越二郎は。僕は追いますよ、ちゃんと(笑)

 

ーナレーションー

朝井リョウさんと鈴木さんの対談、いかがだったでしょうか。この対談は、7月23日に発売された集英社の雑誌『SPUR』9月号のために収録した企画です。

 

そして、『SPUR』の電子書籍で9月号の記事が読めます。ぜひサイト「 SPUR.JP」でバックナンバーをご覧下さい。

 

また、朝井リョウさんの新刊本『世界地図の下書き』も、集英社より発売中です。こちらも書店で手にとってみてはいかがですか。