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ポッドキャスト版「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」「未来授業」の文字起こしをやっています。「未来授業」は2020年4月分からです。文字起こししてほしいものがあれば、ツイッターのDMに連絡下さい→https://twitter.com/hatake4633

<未来授業>ブレイディみかこ 第3回「感情を伝える~演劇と教育」

 

ーナレーションー

今週の講師は、コラムニスト・ブレイディみかこさんです。

 

ブレイディさんのエッセイ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』がいまベストセラーになっています。

 

英国人の父と日本人の母の間に生まれた息子の成長を通じて、英国の学校制度や社会の多様性について綴った一冊。中でもユニークなのが、英国の学校のカリキュラムに組み込まれている「演劇」の授業です。

 

演劇を通じて、子供たちは何を学んでいるのでしょうか。

 

未来授業3時間目、テーマは「感情を伝える~演劇と教育」。

ブレイディ:演劇教育、これだけ入り込んでるんだ英国では、と思ったのは私が保育士として働いていた時に、保育の資格をとったところは貧困地域にあった無料の託児所だったんですよ。

 

貧困層のところに育児放棄とか虐待とかされてるんじゃないかっていうような疑いがあると、英国は日本に比べて、すごく早く福祉とか動きますから、ソーシャルワーカーが入ってる家庭の子供とかも結構来てたんですよね。そういう子供たちは、暴力とかを日常的に目撃していたりとか、自分でもしかしたら経験している子もいるかもしれないし。コミュニケーションって自分の感情とか気持ちを外に出すことであり、人の感情や気持ちを読むことなんですけど、その回路が発達が遅れていたりする子がいるんですよね。

 

そこに働いていた時にすごいびっくりしたのは、声を出さないで泣く子いっぱいいるんですよ。黙って涙だけ流してる。それでも声を出して泣いた方が何もしてくれない人が周りにいるかもしれないけれど、何かしてくれる人もいるかもしれないから、人間は悲しい時には声を出して泣かないといけないじゃないですか。

 

そういうことを教えるのに、その託児所で何をしていたかというと、演劇的な要素を取り入れていたというか、これはそこの託児所だけでなくて、保育のカリキュラムの中に入ってるんですね。感情を正しく表現して、他者に自分の気持ちを伝えられるようにする。自分の主張や気持ちを伝えられる子供にしないといけない、というのもカリキュラムの中に入っていて。

 

だから2歳児とか3歳児を座らせて、壁に貼っている笑ってる顔とか怒ってる顔とか写真が貼ってるわけですよ。例えば、笑ってる顔を見せて、「これどんな時にこんな顔をするかな?」って訊くんですよ。したら「アイスクリーム貰ったとき」とか帰ってくる時もあるし、やっぱり何も言えない子どももいるし。そういう時に「これはハッピーな時にする顔だよね。じゃあみんなでこの顔をやってみようよ!」って言って笑ったり、怒ったりする顔。

 

それって演技ですよね。演技でいいと、最初は。そこから学ばせていくって。これってすごく演劇的じゃないですか。

 

で、中学になると、これが演劇が1つ科目として入ってくるので、どこの中学校に行っても演劇の部屋があって、小さなステージがあって、公立の学校でもなってるんですね。

 

演劇が科目の中に入ってるのは、なにも役者を育てようとしているわけではなく、いくらシェイクスピアの国でもそこまではしないっていうか、人とコミュニケート出来る子供を育てる。ちゃんと自分の感情や言いたいことを言えるし、人が何を考えているか、何が言いたいのかっていうこともキチンとわかる子供に育てるっていう意味で演劇教育ってすごく大事だし、それに力を入れているイギリスっていうのは、そういう教育を受けてきた子供っていうのは、将来的に差が出るなと思うんですよ。

 

演説1つとっても、演劇と演説ってすごく繋がってるじゃないですか。小さい時から教育で、いわゆるお勉強科目以外の授業にイギリスは力を入れてると思うんですよ。

 

例えば、幼児教育で保育士をやっていた時に言われたのが、まず保育士というのは、エモーショナルインテリジェンスというか、エモーショナルリテラシーとも言うんですけど、まず自分のことをキチッと言いたい言葉で自分を伝えて、お勉強以外の部分、人間としての素の部分、器の部分を作るのが保育士の仕事であって、それが出来るようになれば、小学校に入ってアカデミックな知識も身につけていけると。人間としての器が最初。それがずっと最初から続いていて、お勉強科目以外のものもしていかなければいけないっていうのが、大事なところだと思うんですよ。

 

例えば、大学で先生たちが子供を選ぶ時でも、勉強科目だけじゃなくて、違う部分の素養。アートが出来るとか、音楽が出来るとか、そういう部分は見られないと、ホリスティックというか全般的に育っている人間としては見られない、というところが英国はすごくあると思いますね。

 

たぶん今、日本の若い人で「生きづらい」って言う人いるじゃないですか。それは社会の今の情勢のせいももちろんあるけれど、受けてきた教育もあると思うんですよ。結構。その人間としての部分もホリスティックな人間を作っていかないと、生きづらくなりますよね。