鈴木敏夫のジブリ汗まみれを文字起こしするブログ

ポッドキャスト版「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」の文字起こしをやっています。https://twitter.com/hatake4633

映画「杉原千畝」スペシャルトークショー ゲスト:奥田誠治さん、犬山紙子さん、柴田玲さん

2015年12月7日配信の「鈴木敏夫ジブリ汗まみれ」です。

http://podcasts.tfm.co.jp/podcasts/tokyo/rg/suzuki_vol400.mp3

 

ーナレーションー

激動の第二次世界大戦下、リトアニアナチスドイツの迫害から逃れてきたユダヤ難民に、日本通過ビザを発給し、6000人もの命を救った日本人の外交官がいた。彼の名は「杉原千畝」。

 

鈴木敏夫ジブリ汗まみれ。

 

今週は、オープンしたばかりの渋谷モディ6階、HMV&BOOKS TOKYOイベントスペースで行われた「映画 杉原千畝スペシャトークショー」の模様をお送りします。

 

出席者は「映画 杉原千畝」エグゼクティブプロデューサーの日本テレビ奥田誠治さん、そして「負け美女」「マウンティング女子」「クソバイス」などの言葉を生んできたエッセイストの犬山紙子さん、そして鈴木さん。司会は、フリーアナウンサーの柴田玲さんです。まずはこんなお話から。

 

鈴木:この映画ってね、皆さん何となく知ってますよね。シンドラーが日本人にもいたんだっていう、そういう映画だと思うんですけど。この映画を一番作りたかったのが、この奥田さんなんですよ。

 

犬山:お!

 

奥田:「三丁目の夕日」とか作った後に、面白い題材がないかなと思って。「太平洋の奇跡ーフォックスと呼ばれた男ー」っていう映画を竹野内豊さんで、これが会社入ってずっと30年くらいやりたかった企画があってですね。

 

今まで日本の映画っていうのは、大将とか山本五十六とか東郷平八郎とか、上から目線の人が主人公になった映画はあったんだけれども、中間管理職的な人っていうのは、「太平洋の奇跡」の大場栄さんっていう主人公の人の映画でやりたかったんですね。

 

それを実現して、その後に杉原千畝っていう人が外交官で、ユダヤ人のビザを発給する、しないで反対されたにも関わらずビザを発給して、最終的には6000名の命を救ったっていうそういう出来事があったんで、これはビザを発給しただけじゃなくてね、杉原さんはどういう決断をしたのかとか、それに至るまでの色んな出来事っていうのが調べれば調べるほど本当に面白いっていうのがわかって。

 

なおかつ、発給されたビザを受け取ったユダヤ人の人たちっていうのが、どういう経路で日本まで来てっていう、そこまで描きたかったんですよね。今回、そういう映画を作る企画を立てて、そこまで自分は映画化したいなって思って、そこが出発点というか、そういうことになったわけです。

 

鈴木:改めて、犬山、、

 

犬山:紙子と申します。

 

鈴木:紙子さん。ペーパーの?

 

犬山:ペーパーの紙ですね。

 

鈴木:いま大変有名な方なんですけど。

 

犬山:いえいえいえ。

 

鈴木:いかがでした?

 

犬山:私はビザを取得した後の、その人たちがまだその先困難はあるはずでっていう、船に乗る乗れないとか、そういうところもしっかり描かれていて「ほう、これは全然知らなかったぞ」だったりとか。

 

あとずっと観ちゃったのが、嫁の幸子(ゆきこ)ですね。千畝さんを支える幸子の気持ちとかをずーっと考えながら観ていまして。共感出来ないほどの聖人だなって最初は思ったんですけど、考えていくうちに、、

 

鈴木:なんで共感出来ないんですか?

 

犬山:だってビザを発行したら、家族まで危ないかもしれないっていう、そんな状況だったじゃないですか。そうなった時に私だったら、自分の命優先するかなって思っちゃうんですよ。最初観た時はそれで「うわーそんなことよく言えるな。よく旦那の肩をポンと押せるな。凄いなこの人は」っていう。

 

鈴木:いやそれはあなたが結婚生活において問題があるんじゃないんですか?

 

犬山:そんな!そんなことない!(笑)

 

鈴木:旦那を愛してないとか。

 

犬山:いや愛してます!

 

奥田:結婚したばっかりですもん。

 

鈴木:そっかそっか。

 

奥田:新婚ホヤホヤなんですよ。

 

鈴木:あ、ホヤホヤなんですか!失礼しました。

 

犬山:愛はあります。ちゃんと。でも考えたところ、幸子も1人の人間なのでは、という風に思い出しまして、幸子が千畝に背中を押すシーンがあるんですけど、やっぱり千畝は自分の家族のことを考えると、中々ビザを発行するということに悩んでる時期がありまして。

 

鈴木:ビザを発給すると、何がどうなるんですか?

 

犬山:日本の人たちがオッケーをしていないので発給したことにより、後々捕まったりとか、最悪死刑とかになるのかも、と私思ったんですが。

 

奥田:あとドイツと同盟を結んでいるわけで、ゲシュタポに実際追われたりとか、そういう危険があったんですね。

 

犬山:あ、やっぱり。進むっていうのは、家族の背中を押す何ががないと凄く難しいのかなっていう風に感じまして。幸子もたぶん子供のことを考えたら、凄い悩んだと思うんですよ。葛藤は絶対あったと思うんですけど、目の前でこのままだとこの人死んじゃうかもしれないという難民たちがいる中、突っぱねてる旦那をずっと見続けている方がたぶん辛くなる。いつか自分もこうやって突っぱねられる日が来るんじゃないか、とかって。

 

鈴木:千畝はなんでビザを発給したんですかね?

 

犬山:凄い強い信念と、実際に悩んでる人たちと触れ合ってるというか、領事館に篭ってたらわからないところまで、ちゃんとコミュニケーションをユダヤの人たちととってるので、こういうことが出来たのかなって思ったんですけども。

 

鈴木:なにしろ当時、三国同盟っていって日本とドイツとイタリア、みんな条約を結んでいるわけだし。ドイツが当時ヒットラーの時代なんで。ユダヤ人に対してひどいことをしている時代。そういう時にユダヤ人にビザを発給。実際にサインしてハンコを押さなきゃいけなかったのは、2315人。その家族を含めると6000人らしいんですけど。だってあれ1日じゃ終わらなかったでしょ?

 

奥田:駅を去る直前まで書いてたわけですから。

 

鈴木:そうすると、何日も書いてたんでしょ?あれ。

 

奥田:そうですね、

 

鈴木:その間に迷いはなかったのかなって。何が欲しかったんだと思います?

 

犬山:最初は見捨てられないっていう正義の気持ちなのかな、とか。

 

鈴木:正義だけで人は何か出来るんですかね?

 

犬山:違うなーとちょっと思いまして。

 

鈴木:なんだろう?

 

犬山:自分のためにやってたのかなっていう。

 

鈴木:家族を犠牲にして?

 

犬山:家族を犠牲にしても、そこが崩れると生きてたくもないくらいの、自分で自分のことを許せなくなるくらいの衝撃の事柄なのかなと感じました。

 

鈴木:全ての権限は自分にあったんだよね?

 

犬山:そうですね。

 

鈴木:ある領事館に、あれリトアニアですか。副領事でしたっけ?

 

奥田:ええ、副領事ですね。代理です。

 

鈴木:でも自分が責任者だったわけだから、自分がハンコを押すかどうかっていう、その立場に立たされる。たしかに最初は逡巡があったでしょ?悩みが。

 

犬山:ありましたね。

 

鈴木:ね?だけれど、ある日決断する。それは決断する時に大きかったのが奥様でしょ?

 

犬山:奥様ですね。

 

鈴木:だからその奥様がね、明らかに犬山さんより立派な方なんですよ。

 

犬山:ちょっと!もうぐうの音も出ないです。その通りです(笑)

 

奥田:今だとそうかもしれないけれども、犬山さんがタイムスリップして75年前に行くと、ひょっとしたら、、

 

鈴木:いや犬山さんはしないです。

 

犬山:しないです!はい(笑)無理ですね。むしろ罵倒すると思います。

 

鈴木:だけれど、ここがこの映画のもしかした、ポイントかなって気もして。

 

犬山:それは鈴木さんは千畝にはなれないと思われたんですか?

 

鈴木:いや思わないですよ。僕はすぐなっちゃいますよ。

 

犬山:(笑)

 

奥田:そうかなー。

 

犬山:どう思われますか?そこは。

 

奥田:いやいやわからないですけど、なって下さいよ。

 

鈴木:もう一つね、奥田さんってジブリでずいぶん付き合いがあって、彼は親友なんですけど、約30年くらい付き合ったきた。

 

犬山:おおー。

 

鈴木:そういう中で1番よく知ってるのは、奥田さんっていう人は戦争の映画、映画だけじゃない。小説、大好きな人なんですよ。

 

奥田:戦争が好きなんじゃないですよ。戦争の映画とか小説の類が好きなんですね。

 

鈴木:戦争が好きなんですよ。

 

奥田:いや違います!戦争を題材にしたものが好きなんです。

 

犬山:そこから見えてくる何がお好きとかあるんですか?

 

奥田:究極に人が追い込まれたときに、何を考えるのか。今回は杉原さんがビザを発給する、しないの時の決断っていうのは、たぶん本当に考えに考えて、映画の中にもそういう表現が出てくるんですけど。それが自分がもしその場になったときに、出来るのかなっていう。

 

鈴木:そういうわけでね、奥田さんっていう人は戦争映画を観て、相手を徹底的に叩き潰す、そういうところが好きなんですよね?

 

犬山:え、そうなんですか?奥田さん、イメージが。

 

奥田:そういう映画はあんまりないですよね。大体ね。だって日本で作られたのは全部負け戦のやつだから。

 

鈴木:っていう話でね、僕その話をちょっとしたかったんだけれど、僕も映画を作る人間なんで、戦争を題材に映画を作れないかって考えたことは、一回や二回じゃない。ずーっと僕は悩んできたんですよ。映画人として。

 

なんでかっていうと、奥田さんいま言ったでしょ?負け戦だったって。戦争っていうのは、勝って側もいるし負ける側もいる。勝った側って結構戦争映画いっぱい作ってるんですよ。アメリカが1番象徴ですよね。

 

じゃあ負けた側で戦争映画作ってるっいうのはどういう人たちなんだろうって。フランスは最終的には連合国として勝つんだけれど、実際の戦争においてはドイツに徹底的にやっつけられた側なんですよ。ところが、フランスって皆さんご存知かどうか。レジスタンスっていうのがいたんですね。戦争をやってる最中、フランスが負けている最中、活躍した人たちがいるんですよ。何が言いたいかっていうと、そういう人たちがいると、変な言い方だけれど映画は作りやすい。

 

犬山:なるほど。

 

鈴木レジスタンスがいることによって。だけど日本ってそういう人もいないんですよ。

 

犬山:あ、いないですか?

 

鈴木:今回、奥田さんが目をつけた杉原千畝っていう人は、その中で極めて稀に主人公になりやすい人物なんですよね。日本にもこういう人がいたっていう話だから。

 

犬山:たしかに。

 

鈴木:奥田さんがさっき言ったように、戦争っていうと山本五十六だな東郷平八郎とか、簡単にいうと、大昔に戦争をやって勝った英雄、それを主人公にするか、これ大昔なんですよ。日清日露のときの。

 

ところが、太平洋戦争って負け戦でしょ?主人公一体誰にするのって言ったときに、せいぜい山本五十六で。結局その人なんかは死んじゃうんですけど、負けた滅びの美しさっていうのか、それで映画にするしかない。

 

という時にこの千畝っていう人は、あの戦争の最中、日本にも立派な人がいたっていう、そこにおいては非常に面白いところに目をつけた。

 

犬山:確かに観終わった後に「負けた」っていう気はそんなになくって、日本にこういう誇らしい人がいると。

 

鈴木:そういうことでしょ?

 

犬山:はい。

 

鈴木:その誇らしい人がいたんたけれど、それを支えたのはやっぱり奥様なんですね。

 

犬山:私じゃどうにもなれない(笑)

 

鈴木:それって、なんなんだろう。

 

犬山:なんなんでしょう。

 

鈴木:これって結構大事な問題なんですよ。なんで自分の亭主を支えようとしないの?

 

犬山:たぶん私、亭主より「私が私が」っていうタイプなのかもしれないです。

 

鈴木:でもどうしてそうなったのかな。現代日本って当たり前だけれど、大事なのは「自分」であるっていう考え方が大きいでしょ?

 

犬山:大きいです。私はまさにそうですね。

 

鈴木:でしょ?だけどこれって、たぶん近代が生み出したんですよ。ヨーロッパが作り出した。でもそれ以前は人間ってどうだったんですかね?自分が大事だったんですかね?

 

犬山:生きるか死ぬかの世界観にいると、助け合いって結構あったのかなと。

 

鈴木:これ本題から外れちゃうんだけど、例えば、沖縄とか奄美へ行くじゃないですか。特に奄美で体験したんですけどね、あそこへ行ってみると凄い面白いことがあったんですよ。1つは、奄美ってほとんど3世代同居。

 

犬山:はーー。

 

鈴木奄美ってそういう島なんですよ。

 

犬山:3世代同居!なかなかにハードルが、、

 

鈴木核家族になってないんですよ。そこにおいて何が起きてるかというと、僕は実際にそこに長くいてある体験をするんだけど、いま東京にいたら当たり前のことなんだけど、自分のものは自分のものでしょ?

 

犬山:そうですね。

 

鈴木奄美行ってみたら違うんですよ。

 

犬山:え?どういうことですか?

 

鈴木:自分のものはあなたのものだったりするんですよ。あなたのものが自分のものだったりするんですよ。つまり、自分と相手の間に境界線がないの。本当だよ?

 

犬山:じゃあこのホウキはうちのホウキだけど、隣の人が使っていいし。

 

鈴木:そうそう。

 

犬山:本当に境界線がないですね。

 

鈴木:ないのよ。

 

犬山:みんなで1つって感じですね。

 

鈴木:そう!その通りなの。だから3世代同居っていうのは何が起きてたかというと、「これは私のものだからね」とか「これはあなたのものだからね」っていう、いわゆる私有財産という考え方が薄いところなのよ。実をいうと、沖縄もそうだよね。

 

奥田:ああ。

 

鈴木:そこから見えてくるものは何かというと、僕が奄美や沖縄で感じたこと。昔はこうだったのかなって。日本自体が。要するに、私だけ、とか。あなたみたいに。

 

犬山:(笑)

 

鈴木:そういう考え方がなかった。もしかしたら、それが日本っていう国。日本っていうのは、言われているように2000年の歴史があるでしょ?連綿と太古から続いてくる人間の魂みたいなものがあるでしょ?その一部を自分が受け継いでるっていうのかな。そういうことを考えるようになると、自分と他人の間に境界線を引かなくなる。どうですか?

 

犬山:いま、旦那と境界線ありまくりだなと感じたんですけど。

 

鈴木:でしょ?

 

犬山:でも1つの個体として考えると、2人で1つというか、家族で1つって考えると、自分が自分がっていうよりは、トータルで考えて良き方へっていう。

 

鈴木:僕最近ね、歳のせいかもしれないんですけどね、色んな人から相談受けるんですけど、その相談を受けるっていうときに何が1番多いかっていったら、離婚の話ばっかりなんですよ。

 

犬山:(笑)私も離婚するとしたら、相談したいです。

 

鈴木:大体聞いてみるとね、何が起きてるかっていうと、1つなんですよ。何かっていうと、女性の側っていうと差別になるかもしれないけど、旦那に対して向き合って話そうって。必ずこうなるんですよ。

 

犬山:うん。そうですね。

 

鈴木:向き合って話すとどうなります?

 

犬山:え?向き合って話すと?対ですよね?

 

鈴木:そういうことじゃなくてね、相手の嫌なことばっかり目に行くんですよ。

 

犬山:え!?

 

鈴木:そうならない?

 

犬山:確かに旦那と向き合って、、そうですね。

 

鈴木:そうするとね、今まで気づかなかった、ちょっと細かいことで「こんなところがあったのか!」とかね。でしょ?

 

犬山:はい(笑)

 

鈴木:そういう男女というのか女性が多いんだけれど、僕も歳をとったから偉そうなことを言っていいのかなと思って。男女っていうのは向き合っちゃいけない。

 

犬山:向き合っちゃいけない!

 

鈴木:それを常々言うようにしてるんですよ。

 

犬山:じゃあどうしたらいいんですか?

 

鈴木:同じ未来を見なさいって。

 

犬山:もう、、良い言葉だな。

 

鈴木:見てないでしょ?同じ未来を。

 

犬山:本当です。逆ですよね。一緒にこう向けってことですか?なるほど。そうだ。

 

鈴木:だから、彼女は彼と同じ未来を見てたんですよ。そこがあなたとの違いなんですよ。

 

犬山:(笑)もうぐうの音も出ません!おっしゃる通り。本当だ。別々の未来でしたわ。

 

鈴木:でしょ?この映画の中では、彼が選択しようとしていた未来に対して、彼女は同じ未来を見ようとしたってことでしょ?

 

犬山:本当ですね。

 

鈴木:僕なんか思うんだけど、向き合って話なんかしたことないのが、夫婦の歴史でしょ?

 

奥田:普通、女性って向き合って話した方が良いんじゃないかって、、

 

犬山:そういうアドバイスいただきますよ?ちゃんと向き合いなさいって。

 

奥田:そうすると良くないって話を、ずっと鈴木さんは、、

 

鈴木:結婚してますか?

 

柴田:はい、してます。

 

鈴木:どうですか?

 

柴田:あんまりもう正面向くのはやめました。

 

鈴木:やめた?賢いですね。

 

犬山:(笑)

 

柴田:あんまり良いことは生まれないなと思って。

 

鈴木:絶対生まれないですよ。だって奥田さんの奥さんなんか大変ですよ、だって。近くで向き合ったら顔がデカ過ぎてどこ見たらいいかわからないんだもん。

 

奥田:全然そんなことないですよ。

 

柴田:先が見えないっていう(笑)

 

鈴木:作った人だから奥田さんに訊きたいんだけれど、なんでビザ発給したんですかね?

 

柴田:そこを鈴木さんが最初からこだわってらっしゃる。

 

奥田:冒頭に犬山さんがおっしゃったように、目の前のユダヤの人たちのことを見逃すことが出来なかった気持ちが相当湧いたんじゃないかって。本当に短い期間だったんだけれども。千畝の中にはそれがどうしようもなくなって。ビザを発給せざるを得ないことになったと思うんですよね。

 

鈴木:さっきね、犬山さんは良い感じのことを言ってたんですよ。

 

犬山:え?

 

鈴木:なんでビザを発給しようとしたんですか?

 

犬山:自分が許せなくなるみたいな。

 

鈴木:自分が自分でなくなる?

 

犬山:そうですね。

 

鈴木:自分が自分でなくなるってどういうことなんですかね?

 

犬山:こうありたい自分でないってことなんですかね?

 

鈴木:何かやろうってとき、欲しいものがあると思うんですよ。千畝の場合はそれは一体何だったのか。

 

犬山:何が欲しかったのか。

 

鈴木:僕が思うのはね、自由。たぶんそういうことじゃないかなって思うんです。

 

奥田:自由ですか。

 

鈴木:そう。だってそこで彼が押そうと思えば、ビザを発給することが出来るわけでしょ?もしそれをやらなかったら、あらゆる自由を奪われる。そういう自分が嫌だったっていう。たぶんそういうことじゃないかなって。やっぱり人間って、どこかで縛られてその中で生きていくっていうのは、生きていけないですよ、

 

奥田:要するに、国の命令だけに従ってるんじゃなくてっていう。

 

鈴木:そう。自分がそれをよしとするなら構わないけれど。千畝さんがその後に起こる未来に対して、暗くなることをしなかったのは手にしたものが大きな自由だった。っていう気が僕はするんですよ。

 

犬山:そう考えてあのエンディングを思い出すと、確かにすごい自由を勝ち取った顔をされてました。

 

鈴木:そう。

 

ーナレーションー

日本では当時、政府の君命に反したという理由で、多くのユダヤ人の命を救出した杉原千畝の功績は、長い間隠されてきました。

 

しかし、1985年。イスラエル政府が千畝に「諸国民の中の正義と人賞」を送り、日本国政府も2000年にやっとその功績を認め、彼の名誉は回復されます。しかし、千畝はその朗報を聞かずして1986年86歳でその生涯の幕を閉じました。

 

映画では、主人公・千畝役を唐沢寿明さん、その妻を小雪さんを演じています。ほぼ全編をポーランドで撮影した映画「杉原千畝」、12月5日全国ロードショー。ぜひ劇場でご覧下さい。

 

鈴木:当時、救われた人が千畝さんに会いたいわけですよ。それで戦後、日本に訪ねてきて外務省に行く。「杉原千畝っていう人がいるでしょ?」と。そうしたら、その外務省のリストから彼の名前は消されてたんですよね。物語はそこから始まるんですよ。で、自分の選択した道は良かった。これがラストでしょ?

 

犬山:そうですね。

 

鈴木:そういう映画です。

 

柴田:映画にしたいっていう、そこへの思いをぜひ。

 

奥田:千畝という人が、例えば、戦前戦後通じて色んな偉人の人いますけど、そういう中でも知って欲しいし、海外の人が杉原千畝のことを凄く称賛してるんですよね。ビックリしたのは、リトアニアに行って、リトアニアの人に千畝のことを知らない人、ほとんどいないんですよ。

 

犬山:ええ!

 

奥田:何でかっていうと、教科書に出てるんですよね。教えてるんですよ、授業で。だから外国の人がそういうことを教えてるのに、日本で知らないっていうのはいかがなものかなっていうのは強く感じました。これは千畝だけじゃなくて、色んな人がみんな頑張ってやってるんで、僕は今回は千畝っていう人に、日本だけじゃなくて世界の人に知ってもらいたいなっていう気持ちがものすごく強く感じたんで、世界中の人に観てもらいたいなと思って、いま色んなところを通じて頑張って宣伝してるんですね。本当に良い映画なんで。

 

鈴木:奥さんが素晴らしい映画です。犬山さんとは違います。

 

犬山:はい(笑)

 

奥田:今日の話思い出して観ていただくと、100倍楽しめますんで、どうかよろしくお願いいたします。どうもありがとうございます。