鈴木敏夫のジブリ汗まみれを文字起こしするブログ

ポッドキャスト版「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」の文字起こしをやっています。https://twitter.com/hatake4633

ジブリの鈴木さん、押井守監督を語る!! ゲスト:石井朋彦さん

2007年11月19日配信の「鈴木敏夫ジブリ汗まみれ」です。

http://podcasts.tfm.co.jp/podcasts/tokyo/rg/suzuki_vol07.mp3

 

石井:10時間とか平気で喋るんですよね。最長記録17時間っていうのがあって。

 

鈴木:喋りだしたら止まらない。

 

石井:ええ。この間作ったラジオドラマもね、これは傑作ですよ。

 

鈴木:本当に!?

 

石井:うん。超大作。でもラジオドラマの話を持っていったら、たぶん押井守は監督しますよ。それぐらいラジオをやりたがってるんで。

 

鈴木:つまんない番組やってるんですよ。押井守の?

 

石井:シネマシネマでしたっけ。

 

鈴木:僕、それ変えろって言ったんですよ。タイトル。『押井守の喋りだしたらとまらない』。

 

石井:今回聞いた時も「どこでやってるの?」って言ったんですよね。「なんか全国ネットらしいですよ」って言ったら、「どこ?」って言うから、「TOKYO FMです」って言ったら「え、TOKYO FMで全国ネットなんてないよ!」って。

 

鈴木:(笑)

 

石井:「それは敏ちゃん、勘違いしてるんだよ!」って。

 

ーナレーションー

鈴木敏夫ジブリ汗まみれ。

 

(映画のナレーションの声)

 

ーナレーションー

全国で映画「ALWAYS 続・三丁目の夕日」が華々しく封切られた次の週末。渋谷の単館シネクイントでひっそりと始まった一本の映画があります。押井守監督の実写映画「真・女立喰師列伝」です。

 

前作「立喰師列伝」に続き、今回も役者として参加。渾身の演技を見せる鈴木さんですが、この「真・女立喰師列伝」では、なんとナレーションも担当しているんです。

 

石井:「出たがるから出してやったんだ」って言ってましたね。

 

鈴木:頭下げて頼んできてさ(笑)

 

石井:(笑)複雑な仲なんですよね。

 

鈴木:なんで複雑なの?

 

石井:一番お互い喋りたいんだけど、中々素直に喋らない。お互いがお互いのラジオだったり映画だったりを使って、会話をしようとしているんじゃないんですか?

 

(全員、笑い)

 

石井:いや本当に。

 

ーナレーションー

なんて貴重な情報を伝えてくれているのは、押井監督の次回作『スカイ・クロラ』のプロデューサーを務める石井朋彦さんです。

 

今夜は、押井・鈴木二人の汗まみれな伝説が色々聞けそうです。

 

(映画のナレーション)

 

石井:この間、前作で殺されたんですよね?

 

鈴木:押井作品三本目だよね?俺。

 

石井:『KILLERS』が一本目ですよね?

 

鈴木:それから『立喰師列伝』もあるじゃん。

 

石井:あ、そうだそうだ。それで三本目だ。

 

鈴木:大変だったんですよ。『立喰師列伝』でしょ。頭どうかしてる(笑)

 

あの時はね、僕感心したんですよ。というのは、普段髭伸ばしてるじゃないですか。紙は白いでしょ?条件が「髭を剃れ」って。それでもう一つが撮影のために「髪を黒くしろ」って言われて。

 

僕、髪を黒くするとかそういうことしたことなかったんで、「そんなの嫌だ」って言ったら、「昔の鈴木敏夫に会いたい」って。それで協力したんですよね。大変でした。でも自分でもびっくりしました。あれは感心した。

 

石井:そうですよね。昔の鈴木さんを蘇らせてて、で素っ裸ですよね?

 

鈴木:そう。それで揉めるんですよ。僕が死んだ後、解剖のシーンがあって。パンツを脱ぐ脱がないで色々揉めましてね。僕は脱いでもいいよって言ったんだけど、なんか向こうのプロデューサーがそれ止めてね。大事件だったね。

 

石井:鈴木さんはね、亡くなった方が寝る台で寝ちゃったんですよ。

 

鈴木:そうそう。撮影中に寝ちゃったんですよ。よくあるんですけどね(笑)

 

石井:終わった後に「このまま敏ちゃんが死んじゃったらと思うとね、ちょっと寂しかったよ」って。

 

鈴木:起こすんですよ。「敏ちゃん。寝てないで」って言われてね。あれ、よくわかるんですね。僕が寝てるのわかるの、押井さんと白木さんだね。

 

男性:今回ナレーションも、、

 

鈴木:なんで言い出したの?あれ。

 

石井:他にいなかった。お金がなかった(笑)毎回テーマがあるんですよね。一作目は、スタジオジブリと思しき巨大アニメスタジオの悪徳プロデューサーが、製作費を横領して上に隠れてるんですよね。それをスナイパーが撃ち殺すのがストーリーなんですよ。ともかくジブリは巨大になって、その頂点に君臨して、いま彼は死にたいはずだと。俺が映画の中で殺してやる

 

鈴木:その願望を満たしてやるって。ここにピストルの弾を当てられて、頭吹っ飛ぶんですよ。

 

石井:CGでね。

 

鈴木:そう。二作目は、立喰師の一人でね。たぬきうどんかなにか好きだったんでしょ?

 

石井:そうそう。

 

鈴木:僕はきつねうどんにしてくれって言ったんですけどね(笑)それでこれも取り調べ室で壁に頭ぶつけられて死んじゃうんですけどね。

 

石井:今回は殺さなかったですよね。

 

鈴木:確かにそうなんだよね。彼ね、自己顕示欲とその逆があるとしたら滅却力。その二つがあるんですよ。やっぱりアニメーションの方では観客層が限られるとはいえ、多くのお客さんを相手にしたものを作りたいんですよ。本来ね。ところが実写になると、人が本当に限られた人しか観ない。そういうのを作ってみたい。その二つのバランスで生きていこうとしてるんですよね。というのか、そうやってやってきたんですよ。

 

それをここへ来て突然、アニメーションの方もさることながら、実写の方でも一般受けのするものを久々に同時進行で作ったんですね。

 

石井:ここに来て、その両方で多くの人に観てもらいたい、という欲求が出てきたのは間違いないですね。

 

鈴木:『スカイ・クロラ』まだ観てないけど、それと今回の映画の一番共通してるのは、「情緒」っていうことだと思うんです。この間一貫して、情緒は切り捨ててきましたからね。そんなものに頼って映画は作るべきじゃないって。それが何故かあるんですよ。

 

男性:いつ以来?

 

鈴木:僕の知ってるのでいうと、僕が出会った頃、彼が作ってた『うる星やつら』のテレビシリーズ、これは所々で情緒のあるもの作ってるんですよ。そういうものをお客さんが好きだっていうことを知ってて、あえてそれに背を向けるという作り方をしてきたんですよね。どうしたんですかね。

 

この間、対談でもそういう話したんだけど、僕は押井さんに言ったのはね、「あなたは監督に向いてない」って言ったんですよ。何に向いてるかっていったら、プロデューサーだって。そうしたら認めたんだよね。そうしたら逆襲してきたんですよ。僕に対して、「お前はプロデューサーに向いてない」って言ったんですよ(笑)

 

石井:鈴木さんがプロデューサーの最左翼で、押井さんが監督の最左翼だから近いって言ってましたね。鈴木さんはもう60ですか?

 

鈴木:僕は59。

 

石井:59。押井さんは56。

 

鈴木:押井さん、仕事してるの?

 

石井:仕事してます。

 

鈴木:よく喋るよね。

 

石井:そうですよね。

 

鈴木:俺の前だと少なくなるんだよね。

 

石井:なんていったらいいのかなー。毎回終わった後にため息つくんですよね。昔はもっと話が出来たんだけど、中々そうならないんですよね。鈴木さんはたぶん否定すると思うんだろうけど、噛み合わなくなってることにイライラしてる感じはありますよね。

 

鈴木:そんなこと言ってる?

 

石井:言ってる言ってる。

 

鈴木:なんて?

 

石井:「自分の周りで手に入れた情報で敏ちゃんは喋ってる。俺は本なり人と会い勉強してるんだ。それの差だ」って言ってますね。

 

鈴木:何言ってるんだろ(笑)

 

石井:鈴木さんがラジオ番組を持ったっていう話をしたら、押井さんは警鐘を発してるわけですよ。

 

鈴木:警鐘を発してる?!(笑)

 

石井:元々編集者だったじゃないですか。で、映画の世界に入って、映画というスピーカーを通して自分の好きなことを叫んでいたと。『熱風』っていうオピニオン紙があるんですけど、あれも一つのオピニオンを手に入れたと。今回は直接語りかけるメディアを手に入れたと。これはファシズムとか(笑)

 

鈴木:(笑)何を言ってるんだろう。もう。

 

石井:非常に危険だっていうんです。

 

鈴木:じゃあ自分は何のためにラジオやってるの。

 

石井:押井さん、昔ラジオのディレクターだったんですよ。

 

鈴木:それが出発なんですよ。

 

石井:実はこの間ラジオドラマを、20何話壮大な作品を作り上げて。

 

鈴木:大学出て、すぐ入ったのがラジオを作るそういうプロダクションだったんですよ。そこで鬱々とラジオ番組を作って、それである時アニメーションやってみようかなって。それでタツノコっていう門を叩いて、アニメーションの世界に行くんですよ。かれこれ26、7年?

 

石井:そうですね。

 

鈴木:若い時に毎晩喋ってたんですよ。毎晩夜の10時だか11時に会ってね、朝まで。毎晩ですよね。

 

男性:押井さんは何をやってたんですか?

 

鈴木:何やってたのかな。テレビシリーズが終わって、一緒に映画やろうか、みたいなこと言ってた時なんですかね。

 

男性:『攻殻機動隊』の前ですか?

 

石井:前ですね。ずっと前ですね。

 

鈴木:彼が代々木かなんかに住んでてね、僕ジブリの帰りに寄って、早いと10時11時。遅いと午前1時くらいに行って、毎日元気だったから朝まで喋ってたんですよ。毎晩でしたね。それぐらい仲が良かったんですね。今じゃこんなに仲悪くなりましたけれど(笑)

 

石井:毎晩、みかんの皮の山を作って帰っていくんですよ。

 

鈴木:みかん大好きだったんですよ。大体一回買うとね、みかん30個くらい食べるんですよ。止まらないんですよ。

 

男性:一晩で?

 

鈴木:そう。子供の頃からみかん大好きでね。学生時代お金ないでしょ?みかん一箱ツケで買うんですよ(笑)でも3、4日で食べちゃうんですよね。その八百屋の親父が「またミカンか」とか言ってね。いつも手が真っ黄色でしたね。最近30個って食べられなくなった。

 

男性:押井さんとはどんな話をしていたんですか?

 

鈴木:ありとあらゆる話だけど、やっぱり映画の話多かったですよね。一緒に映画に行ったり。過ごした時代が同じだから、気が合うというのか。宮崎駿高畑勲とは仕事の上では共同事業者だけれど、厳密にいうと、友達なのは押井守かなと。色んな意味で。僕が一番気楽に話せる相手ですよね。

 

石井:そうですよね。押井さんもそうですよね。

 

鈴木:そういうのが一人いるっていうのは、良いですよね。僕は友達が色々いるんですけど、押井守は友達がいないんですよ(笑)

 

男性:ワンちゃん。

 

鈴木:そう。ワンちゃん以外は僕だけが友達で。

 

石井:押井さん逆のこと言ってますよね。「俺がいなくなったら、一人も友達がいなくなるはずだ」って。

 

鈴木:アニメーションが面白かったんですよね。色んなことが出来る。『ビューティフルドリーマー』なんて、それを作った頃、宮崎駿は『ナウシカ』を作る。そうしたらその息子の宮崎吾朗っていうのがいるんですけど、『ナウシカ』よりも『ビューティフルドリーマー』が好きなんですよ。親父としては複雑な気持ちになって。で、ついね親父も『ビューティフルドリーマー』観たりして。

 

石井:(笑)

 

鈴木:「何がいいんだ、これが!」とか言っちゃってね。大変だったんですよ。

 

石井:『ゲド戦記』を観てね、おそらく一番最初に高く評価したのは、押井さんですよね。これは面白いですよね。

 

男性:押井さんはなんておっしゃったんですか?

 

石井:おそらく色んなことを言われるだろうと。それは宮崎駿の息子だからって思うんだけれども。じゃあ初監督でこれだけのものを、果たして普通の人に作れるだろうかと。そこは明らかに合格点を与えていいだろうと。そういう評価をしてましたよね。

 

その上で冒頭で父親を刺さずに、助手でゲドって出てきたじゃないですか。あのゲドっていうのはおそらく鈴木さんだろうと。そうすると、本来親殺しをするだった話が、結局、鈴木敏夫に丸め込まれて、っていう話になってると。

 

そういう意味では、映画の趣旨が冒頭、後半において大きく変わってる。それも含めて面白いなと言ってましたね。だから次は本当の父殺しの映画を作るべきだっていう風に言ってますよね。

 

ーナレーションー

鈴木敏夫ジブリ汗まみれ。

 

鈴木:でも、キーになるのはね、「押井守が変わった」ですよね。

 

石井:そうですね。

 

鈴木:明らかにそうですから。何しろ押井さんの名前で売る作品でしょ。そうすると、今までの押井守とは一味どころか二味三味違うぞ。「押井守が変わった」ですよね。

 

ーナレーションー

押井守総監督作品『真・女立喰師列伝』、渋谷シネクイントで公開中。

 

石井:なるほどー。こうやって喋りながら話してると面白いですね。

 

鈴木:人生は楽しいですよ。なんつって(笑)

 

石井:楽しそうですねー。

 

鈴木:なんで(笑)石井が僕のことよく知ってるんですよ。もう嫌になるぐらい付き合ったから。ね?

 

石井:そうですね。

 

男性:いつ以来ですか?

 

鈴木:石井はいま?

 

石井:30ですね。

 

鈴木:で、俺と出会ったのが?

 

石井:20くらいか。

 

鈴木:まぁある事情があってね。僕が預かったんですよ。

 

石井:(笑)

 

鈴木:ある事情言っていいのかな。制作だったんですよ。もう30にしてプロデューサーやってるから、当時から生意気なわけですよ。協調性がなくてね。みんなと全然上手くいかなくて。

 

ある日、高橋っていうのが僕のところへ来て、「石井辞めさせようと思うんですけど」って言いに来たんですよね。「なんで?」って言ったら「誰とも上手くいかない」と。「鈴木さん、預かります?」って言うんですよ。「鈴木さんが預かってくれるんならいいですけれど、預かってくれないならクビにします」って。

 

そうしたら、生意気だったけれど、見込みがあったんですよね。それで四六時中色んなことで付き合うようになって。21だよね?

 

石井:そうですね。9年か。

 

鈴木:それで色々やってて、『ゲド』まで一緒にやって、それで押井さんに差し出したんですよ(笑)

 

石井:差し出された(笑)

 

鈴木:まだどっかで一緒に仕事することもあるけれど、ちょうど押井さんがそういう人がいなくて困ってたから。押井さんの発言の中で「今まで映画を作ってきて、事前に色んな人と相談をするはじめての作品だ」って。

 

石井:よく知ってますね。鈴木さん。

 

鈴木:今度の『スカイ・クロラ』は、石井がいたことによって本当に相談するわけだから。

 

石井:そうですね。一からやろうと思ったんでしょうね。押井さん。

 

鈴木:これは大きいですよ。だから今までの押井作品とは一味違う。のはずなんですよ。だからちょっと楽しみなんですよ。石井と合うと思ってたんですよ。だって押井さんの前にそういう人誰もいなかったから。だから『ポニョ』をやるか、押井さんをやるかで。僕はそういう時ひどいから、押井守の所に行っちゃえって。

 

石井:今となっては本当に感謝です。

 

鈴木:(笑)

 

男性:今も時々鈴木さんが電話したりして、会おうかみたいな感じはあるんですか?

 

鈴木:今そういうことはなくなったですよね。

 

男性:そうですか。

 

鈴木:この作品、ナレーション録ったでしょ?その後、久しぶりに二人っきりで喫茶店に入って喋ったんですよ。人がいないと、昔に戻るんですよ(爆笑)

 

石井:そうでしょうね。 

 

鈴木:「ダメじゃん。風邪なんか引いて」とかなんか言って(笑)

 

(全員、笑い)

 

鈴木:突然、そういう感じになるんですよ。

 

石井:(小声)ヤバいですよね。

 

鈴木:(小声)宮さん怒ってるんだよ。

 

石井:(小声)怒ってますよね。宮崎さん聞いてるんじゃないんですか?きっと。宮崎さんは怒るでしょう。