鈴木敏夫のジブリ汗まみれを文字起こしするブログ

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文春ジブリ文庫12 ジブリの教科書「千と千尋の神隠し」インタビュー ゲスト:柳橋閑さん

2016年3月28日配信の「鈴木敏夫ジブリ汗まみれ」です。

http://podcasts.tfm.co.jp/podcasts/tokyo/rg/suzuki_vol415.mp3

 

※田居→田居因(たいゆかり)さん。スタジオジブリの出版部の方です。

 

ーナレーションー

鈴木敏夫ジブリ汗まみれ。

 

今週は、10日に発売された文春ジブリ文庫ジブリの教科書12『千と千尋の神隠し』のインタビューの模様をお送りします。

 

2001年7月に全国公開され、日本映画興行収入記録第1位、第75回アカデミー賞長編アニメーション映画部門賞をはじめ、国の内外で数々の賞を受賞した、宮崎駿監督作品『千と千尋の神隠し』の誕生秘話を鈴木さんが語ります。

 

聞き手は、フリーライター柳橋閑さんです。

鈴木

デジタルっていうのをね、それまではセル画を描いて、それに色を塗るっていうのをやってたんだけど、『もののけ』で一部それを始めて、実は『山田くん』は完全デジタル。それで今のこれでもやらないといけない。

 

そうすると、紙だと色の藍と赤と黄色。実をいうとフィルムってね、それなんですよ。大体。いまコンピューターでやるでしょ?すると、コンピューターって色の元が、、

 

柳橋

三元色が違うんですよね?

 

鈴木

そう。RGBっていうやつなんですよ。するとね、RGBで作ったものをフィルムにしなきゃいけないんですよ、当時。デジタルで作ったものをフィルムに焼き付けることは、これね、ワンカット250円とかしたんですよ。大変だったの。ものすごい高かったんですよ。そのお金のこともさる事ながら、それをオートでやると、色が変わっちゃうんですよ。

 

柳橋

狙い通りの色が出ない。

 

鈴木

要するに、ある色はそのまま出るけど、元の三原色が違うから、そのことによって不具合が出るんですよ。そのことがわかってたんで、『千と千尋』をやる時にデジタルで作ったものをフィルムに転換する時、それが上手くいくために一色ずつ色をコーディネートしなきゃいけないってことになって。

 

っていうんで、しょうがないから、イマジカと組んで、一色ずつワンカットずつやっていくんですよ。映画作りながら同時に。これ、カラーマネージングシステムっていうんですけどね、結構大変だったんですよ、これ。とにかく、映画作りながら、ラッシュが出来る毎にそれに追いつこうとする。それでやっていって。

 

実をいうと、最後ね、本当にスケジュールが足りなくなっちゃって。宮さんがレイアウトっていうのを全部1人で描いて、しかも宮さんってそういうのすごい得意だから、時間短縮のために、本当だったら龍に乗っかる時も、外へ出てくと龍がいるでしょ?普通だったら、その首かどっか掴まえて乗っからないといけないんですよね。

 

ところが、あの映画よく観ると、パッと観ると次のシーンに変わった時にはもう乗っちゃってるんですよ。それによって楽になるわけでしょ?最後の方、そういうこといっぱいやってあるんです。

 

おまけにデジタルの方もあるでしょ?そうしたら、間に合わないシーンが1個あったんですよ。現場の奥井さんっていうのと相談して「どう思う?」って言ったら、例の海の汽車で行くシーンなんですよ。あの青、これが出るかどうか。もう時間がないんですよ。それで奥井さんがあそこだけなので、ええい、ままよ!なんですよ。

 

というのは、あの藍の色って本当に出にくい。それは関係者みんなわかってた。だけれど、そういう幸運が押し寄せたんですよね。あれ。

 

柳橋

それはアナログの手法に戻したわけではなくて、、

 

鈴木

でも、あそこだけはアナログですよ。

 

柳橋

そういう賭けに出たんですね。

 

鈴木

だって、もうそれしか間に合わないから。それで別途、ビデオにするとかそういう時はちゃんとデジタルの方でやってるんですよね。ビデオの方はデジタルそのままだから。フィルムにするわけじゃないから。

 

柳橋

なるほど。

 

鈴木

そういうことなんですよ。

 

---

 

鈴木

千と千尋』において特筆対象すべきは、安藤雅司。あいつの頑張りはすごかったですよね。

 

柳橋

もののけ』でも作画監督をやられて、、

 

鈴木

これね、時効だからと思うから話しちゃおうと思うんですけど、『もののけ』で当時26かな?彼を抜擢。それで『もののけ』で彼は頑張るんですよ。ところが、なんていったって、大作の長編映画は彼にとって初めての体験。『もののけ』においては、芝居は宮さんが決める。それで彼がキャラクターの整理。線の統一その他をやる。そういうことをやってて。宮さんだって迷う時があるから、安藤に確認。それで安藤がそれに対して、意見を言うっていうんで、2年やったわけですよね。

 

で、2年間やって安藤が僕のところに来るんですよね。「辞めたい」と。辞めたい理由はね、「疲れた」じゃないんですよ。やっぱり自分が思うアニメーションとは違う。他のところへ行って、自分の可能性を試したい。

 

で、その頃ね、真ん中に『山田くん』が入ってるんですけど、一種繋がってる部分があるんで。彼が辞めたいっていうのは、『山田くん』の途中だったっていう気がしたんですけど、僕が引き留めるんですよね。彼としては納得しない。で、彼と密約を結ぶわけですよ(笑)

 

柳橋

なるほど。

 

鈴木

それは何かというと、芝居も全部やりますって。

 

柳橋

次の作品では?

 

鈴木

うん。それで『千と千尋』でしょ?その密約を鈴木さんは保証してくれるかでしょ?僕としては、そいつがいなかったら出来ない。それでやるわけですよね。これ宮さん知らないんですよ。

 

柳橋

宮崎さんが知らずにやらせるっていうことが可能なんですか?

 

鈴木

だから事件が起こるわけですよ。様々。

 

本当のこと喋っちゃいますね。なんていったって、安藤は若いでしょ?宮さんは還暦ですから。宮さんだって踏ん張って頑張る。夜の12時までかけて、宮さんがあらゆるカットを修正入れるわけですよ。みんなの描いたやつを。その修正を安藤が全部やり直しちゃうんですよ。朝までかかって。

 

すると当然、最初のうちからそれがあからさま。ラッシュになったらすぐわかるから。それで宮さんがどうするかでしょ?宮さんも最初は我慢しますよね。だってここで一言言ったら、どっか行っちゃうんだもん。それはなんとなくわかるわけですよ。それをやり切った後、結局辞めるんですけどね。

 

柳橋

宮崎さんは最後まで我慢したんですよね?

 

鈴木

途中、揉めてましたけどね。でも宮さんもそれ言っちゃったら。どういう思いでやったかですよね。

 

柳橋

安藤さんはそれを自分で直し切ったことに、1つの満足があるわけですね?

 

鈴木

そう。何しろ髪の毛全部抜けちゃったですからね。

 

柳橋

それぐらい神経削ってやってたんですね。安藤さんがそれをやって、自分の芝居で完全にアニメーションを作りたいっていうのは、監督をやりたいっていう欲求よりはアニメーターとしてそれをやりたいっていうことなんですか?

 

鈴木

そう。元々は監督志望なんですよ。監督志望だったんだけれど、監督をやるにはちょっと問題もあるんで。どういうことかって言ったら、面白いことより正しいことを優先する人なんですよ。

 

柳橋

正しい。

 

鈴木

漫画ってね、デッサンで言ったら狂ってるわけですよ。それは安藤は許せないわけですよ。ちゃんとしたいんですよね。宮さんって、カット毎に人間の背の高さなんてコロコロ変えるわけですよ。『千と千尋』なんかそれを彼が全部修正するしね。

 

柳橋

なるほど。

 

鈴木

なおかつ芝居もね、宮さんの言うことを受け入れつつ、しかし、アニメーションとして自分流のものを持ち込む。こういう言い方が良いですね(笑)

 

柳橋

(笑)

 

鈴木

それは熾烈な戦いですよ。宮さんが衰えを知ったのはこの時でしょうね。自分の。

 

柳橋

ある意味では、安藤さんが作ったものの方が良い部分が。

 

鈴木

だって、自分に体力があり、力が漲ってたら絶対許さなかったですよ。それを認めざるを得なかった自分がいるんですよ。

 

非常に複雑なことが起きたんですよ。非常に複雑なことってね、『もののけ』では宮さんはね、アニメーションとしての自分が今までやってない色んな芝居にチャレンジ。それは上手くいったシーンもあれば、上手くいかなかったところもある。

 

ところが、今回の『千と千尋』って、自分が今まで培ってきたあらゆる技術をぶち込んだんですよ。そういうことでいうと、集大成なんですよ。ところが、そうはさせなかったのは安藤。その火花がこの作品にある迫力を与えてるんですよ。そういう意味じゃ、ハタから見てたら面白かったですよね。

 

でも僕は安藤と密約を交わしてるんで、それを守る側に入ったんですよ。

 

柳橋

なるほど。さすがですね。

 

鈴木

僕、プロデューサーやってますね!

 

柳橋

いやいやいや。そうですよね。本当にプロデューサーって大変ですね(笑)

 

鈴木

そうなんですよ。

 

---

 

鈴木

で、宣伝でいうとね、特筆対象しなきゃいけないのは、ローソンの力。やっぱり色んな宣伝やるっていっても、色んな蛇口があって。その時に『ナウシカ』だったらあの頃振り返ると、ぴあの力って大きかったなっていうのがあるし。

 

でもその後、テレビスポットっていうのに光が当たった。それでやっていった時に、新聞、雑誌、テレビでやっていっても中々それが届かない時代が来てて。

 

そうした時にいわゆるコンビニの全国展開するチェーン店が1つのエリアになってた。だって当時、僕初めて知ったんですけど、ヒット曲は全部コンビニで産まれてたんですよね。コンビニのお店の中で流す歌がヒット曲っていう時代があったんですね。

 

そういう時にローソンの山崎さんっていう人が僕のところに現れて、この映画の宣伝を手伝わさせてくれないかと。僕はコンビニって大嫌いだったんで、一緒にやりたくないと思ったんですけど、この人がくどい人でね。変な話、僕の方が説得されちゃって、それでやることになるんですけど。

 

それでコンビニさんの力を思い知るんですよね。いま若者にとってコンビニっていうのは一体なんなのかっていうことを。そこで流した情報は確実に若者に届いたですよね。

 

山崎さんって、映画が大好きで。「私が生まれて初めて映画に感動したのは、ジョージ・ロイ・ヒルの、、」とかなんか言ってね(笑)関係ない話いっぱいするんですよ。何なんだこの爺さんはって思って。「鈴木さんはコンビニが嫌いなことは、色んなところで発言されてますから知ってます。でも、どうしても私に手伝わさせて下さい」って言いに来たんですよ。負けましたね、僕は。その熱意に。

 

でも結果としては、その山崎さんの大活躍によって、大ヒットを作る大きな理由っていうのは、実はそこにあった。

 

それに応えるべく、映画の興行の世界もずいぶん変わってきて、何かっていったら、『千と千尋』の時だけなんですけど、これサラっと喋っちゃうと、映画館っていったら、みんな一館一館単独で映画館ってあったのが、いわゆるシネマコンプレックスっていうのが、『もののけ』の頃から始まったんですけど、『千と千尋』で一気に花開く。

 

シネコンってね、大体7から8スクリーン。そうすると、自由競争をやろうと。それまでの映画館ってみんな護送船団だったんですよ。そうすると、この映画はヒットしそうだからって言って、映画館決めると、何週間映画をかけるって契約をして、そのままやるんですよ。そうすると雑に言いますけど、やる前からこの映画の興行収入ってわかってたんですよね。そういういわゆる社会主義をやめようっていうのがこの時期なんですよ。

 

それで『千と千尋』の時、なんていったって自由競争ですから、ヒットした途端、色んなシネコンが本当は1スクリーンだったのが2、3、4ってどんどん増えていったりする。それで一気にお客さんが増えるっていうね。

 

日本の映画界でそういう映画館の自由競争が起きたのは、実は『千と千尋』の時だけ。本来、洋画を含め、当たりそうだった映画がことごとく『千と千尋』のヒットによってダメになっちゃうんですよ。

 

その後、僕のところに聞こえてきた噂は、2度と『千と千尋』を出さない(笑)のような作品を。もっと映画は映画人がみんなで協力して、色んなヒット作を出していこうじゃないかっていう風に変わるんですよ。そういう意味でも『千と千尋』は語らなきゃいけないことがいっぱいあるんですよね。

 

---

 

鈴木

でも僕は本当複雑でね。1日に集めたのが42万人かな?初日が。これが『火垂る』と『トトロ』で4週間興行して、あげた配給収入が45億だったんで。それをたった1日でクリアした『千と千尋』のこと、僕頭にきましたね。

 

柳橋

(笑)

 

鈴木

自分でやりつつ(笑)

 

柳橋

それだけ『トトロ』と『火垂る』に思い入れがあったっていうことですか?

 

鈴木

というのか、可哀想になったんですよね。あの2本の作品が。当時、誰も協力してくれないんだもん。自分でやってることとはいえ、同時にそういうこと考えるんですよね。やっぱりヒットした子は可愛くないですよ。

 

柳橋

なるほど。出来の悪い子ほど可愛いと。

 

鈴木

そうそうそう!

 

けどね、僕よく言うんだけれど、『となりのトトロ』ってね、宮崎駿も非常に気楽に作った作品なんですよ。なんでかっていったら2本立てだった。普通だったら、ストレスってすごいわけでしょ。ところが、高畑さんが『火垂る』作ってて2本立て。だとしたら、俺は楽しんで作っちゃっていいんだなって。全作品彼がやってきた中で唯一ですよ。楽しそうに作ったのは。

 

ところが、色んな数字を合算してみるとですよ。実は1番利益をあげたのは『トトロ』ですよ。

 

柳橋

その後のキャラクターグッズなりなんなり含めると。

 

鈴木

そうです。不思議ですよね。

 

柳橋

最終的には出来の悪い子でも不憫な子でもない。

 

鈴木

ない。それがジブリを支えたんですよね。それがあったから『千と千尋』も作れた。それは人智が及ばないところ。それが僕の感想ですよね。まさかそんなこと起こるとは思ってないもん。映画興行としては本当に目を覆うような数字だったわけだけれど。で、誰も期待していなかったけれど。みんな見る目がなかったし。でもその頃は、作る方が一生懸命だったんで。

 

つい先だっても宮崎駿と話したんですよ。「もし次作るなら、僕宣伝なんかいらないですからね」って。「何にも宣伝なんかしないで、世の中は出してみてどうなるか。そういう映画をやってみたい」と。そうしたら宮崎駿が「わかるよ。鈴木さんがいま腰が悪いのは、そういうことやってきたせいだから」。

 

田居

すごい脅してますね!

 

鈴木

なんで?「だって宮さんだってそうでしょう?」って。「仮に宮さんなんかやるっていう時に、今までだったら色んなところが出資してくれる。そうしたら当然、お客さんの方を向いてサービスも考えなきゃいけない。そういうの無しで作ったらいいですよね」って。その前の条件としては、お金を本当に自分たちのお金でするしかないって。それだったら、途中でやめたっていいんだから。途中で死んじゃうこともあるし。そういう話をしたばっかなんですよ。それも面白いかもしれないですね、なんつって(笑)

 

柳橋

それはみんながその話を聞きたいのかもしれないですよね。

 

鈴木

まあ色々あってね、世界にも出ていっちゃって。特に『千と千尋』は大ヒットしたのがフランス。そしてアジアでいうと、やっぱり香港、台湾、韓国。そういう中で海外への貢献を認められてね、宮さんが国際交流基金からなんとか賞っていうのをいただくことになって。そういう賞の名前を僕忘れちゃってて、申し訳ないんですけれど。

 

そうすると、色んな方がお見えになって、宮さんに挨拶。その待合室で面白いことが起きたんですよ。みんな一瞬、全員がいなくなったんですよ。宮さんが次から次へと色んな人に名刺を貰って挨拶をしなきゃいけなかった。それでフッと静かな時間が訪れて。時間にすると5分なんでしょうけどね、宮さんが突然、「どうしてこんなことになっちゃったの、鈴木さん」って(笑)僕もしょうがないから「宮さんが頑張ったからですよ」って言ったら、あの人はそういう人だから「鈴木さんも頑張ったじゃん」とか言い出してね(笑)

 

まぁそれで日本に戻って来て、まだ宮さんはその余韻に浸るんじゃないけれど違和感を感じつつ、なんか思ってたんですよ。それで二馬力に行って2人で時間を過ごした時にね、宮さんが「これで全部終わりだよね?」って言うから、「もう終わりましたから、『千と千尋』これで後はもう何もないんで、やっと休憩できますよ」って言ったら、「鈴木さんの一言から始まったよね」って言われたんですよ。

 

それで僕、「え?僕の一言ってなんですか?」って言ったら、「何言ってるんだよ、鈴木さん。覚えてないの?」って言われて。「何のことですか?」って言ったら、「キャバクラだよ」って言うから、「え?キャバクラ?」って言われてもまだわかんなくてね。「鈴木さん言ったじゃん!キャバクラで働く女の子たちは、本来人とのコミュニケーションがとれない子ばかり。ところが、仕事が求められるものが会話だから、そこで一生懸命お客と喋ってるうちに元気になっていく、って言ったの鈴木さんじゃん!」って言われて(笑)あ、そうかーと思ってね(笑)

 

宮さんって、面白い人なんですよ。自分の功績を自分1人で抱え込むのが苦手な人で。少しでも人に分けたいんですよ。それによって楽になりたい。そういう人なんですよね。僕なんて関係ないって言ってるんですよ。

 

ーナレーションー

鈴木さんが語る『千と千尋の神隠し』誕生秘話、いかがだったでしょうか。

 

このインタビューをおさめた『文春ジブリ文庫12 ジブリの教科書「千と千尋の神隠し」』は、宮崎監督の作品解説、イメージボードをはじめ、荒俣宏さん、姜尚中さん、斉藤環さんなどからの映画の読み解きなど、様々な角度から改めて作品を楽しめる構成になっています。ぜひ一度、手にとってみて下さい。

 

来週もお楽しみに。

 

柳橋

ジブリの中でいうと、それに次ぐのが『ハウル』と『もののけ姫』が大体200億。ちょっと足りないぐらいですか。そのあまりの突出ぶりはすごいと思うんですけど、それは鈴木さんにとっても『千と千尋』っていうのは突出した作品だと思ってらっしゃいますか?

 

鈴木

さっき言ったような興行界の特殊な事情があったわけですよ。だからそれが続いていれば、『ハウル』だって同じようなことが起きたんですよ。実をいうと『ポニョ』もそうなんですよ。

 

『ポニョ』なんか凄かったですよ。8月までの成績で言ったら、『千尋』と同じような数字なんですよ。だけど、記録なんて作ったってしょうがない。

 

柳橋

やっぱり『千と千尋』には当時の状況も味方してくれたと。

 

鈴木

そういう幸運があったっていうことですよね。僕ね、原因と結果をすぐ考えちゃう方だから、そうなった理由って自ずとあったんで。そういうことどいうと、コメントとしては面白くないですよね。

 

柳橋

でも非常に現実的なね(笑)

 

鈴木

だから宮崎駿という人がね、そういうことに目を向けない人だから、僕が一緒になってキャーキャー騒いでたらどうしようもないんで。そういうことでいうと僕は冷静になるっていうのか、リアルになるっていうのか、そういう立場ですよね。まぁ色んな幸運が重なったとしか言いようがない。

 

だからあるとしたら、『千と千尋』にはどうしても日本で生まれた作品っていうのがあるじゃないですか。で、そういうところでのみんなの受け止め方、カルチャーギャップって言うんですか?そこが面白がってくれたっていうのが。要するに、昔から変わってないでしょ?そういうものを超えたところで世界の評価を受ける作品が出てきたら、また違うんじゃないですかね。なんてことも思いますけどね。

 

(了)