はたけ のブログ

「高城未来ラジオ」と「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」のラジオ文字起こしをやっています。

鈴木敏夫のジブリ汗まみれ:「コクリコ坂から」という作品は何なのか?

ラジオ音源です

http://podcasts.tfm.co.jp/podcasts/tokyo/rg/suzuki_vol177.mp3

 

 2011年3月2日放送の「鈴木敏夫ジブリ汗まみれ」にて、映画「コクリコ坂から」の制作現場のミーティングの様子を放送しています。この作品の時代背景や制作の経緯など、ここでしか聞けない話も語られています。この話をきいて「コクリコ坂から」を見ると、より深く感じられるかと思います。ミーティングの参加者は鈴木さん、監督の宮崎吾郎さん、鈴木さんのアシスタントの伊平容子さんです。

 

コクリコ坂から」の時代背景

鈴木敏夫:時代が1963年、オリンピックの前年。戦争が終わって18年。戦後日本は奇跡の大復興を成し遂げたんで、その象徴としての東京オリンピック。だいたいこの時代っていろんな国みてるとオリンピックと万博が大事で(笑)大概その時って、それまであった古いもの全部壊しちゃって、それが絶対正しいと思って。そんな時に横浜のある高校で明治以来の古い建物、これもクラブ活動で使ってて放ったらかし。あまりにもオンボロなんで学校側がそれを壊して、新しいクラブハウスを作ってあげようって。そういう時代だから、生徒たちもそれを大歓迎。ところが、主人公の男の子俊くん、女の子が海ちゃんがノー。そんな簡単に壊しちゃっていいのかって。俊くんは高校に入って以来ある時間を、もしかしたら教室にいるよりもそっちにいた方が長いっていう大事な場所だった。というので反対する。その中で俊くんと海ちゃんが出会い、なんていうのがこのお話で。今のところ出来てる絵コンテは本当に面白くて、すごい良いのよ。何が良いかって、人間関係のバランス。すごく良いんですよ。2人の恋愛も確かにあるよ?でもそれ以上に全体が良いんだよね。それでこの話はどうなるんだろうっていう興味がフツフツと出てくるんだけど、最終的なことでいうと、これは観念的に言うけど、放っておくとさ昔は良かったでいいの?ってなりかねないのよ。そこんとこ一体どうするのかなって。そこは考えざるを得なかったのよ。確かにこの時代、1963年っていうとちょうど俺が高校生で(笑)でも吾郎くんが生まれたのは1967年。そしたら吾郎くんにとっては自分が生まれてもいない時代のことをやらなきゃいけないわけで。そういう事でいうとCパートまでは、時代の雰囲気から色んなもの全て醸し出してるんですよ。俺なんかそこら辺を浸れるいい気分もある。

 

コクリコ坂から」のテーマは何か?

鈴木敏夫:実は宮さんが一番最初、シナリオを書く前に書いた企画書を読んでみたんですよ。そこにこんなことが書かれてたのよ。要するに少年と少女が出会う。人が人を恋することの初々しさを描く、って書いてあったんですよ。企画書に戻ってみると、宮さんは人を恋する初々しさを描く。確かにあるよ?2人の関係も。でもそれが2人の関係も時代を浮き彫りにするのに役に立っているように思う気がして。それを頭に入れながらABCをちゃんと見てみたんですよ。そこに力点入ってるのかなって(笑)この後どうするんだろっていう(笑)フツフツと湧いてきたある疑問があって、この映画って何を作ってるんだろうだて(笑)

宮崎吾郎:何を作ってるのかなって未だに思うときあります。

(中略)

鈴木敏夫:それで宮さんが吾郎くんがやるって時にシナリオ書くんだけれど、シナリオの最初の頃面白かったのは、宮さんが「これってさ、テーマ何だろう?」って。宮さん自身がそう言ったんだよね(笑)そうするとこれは一体何なんだろうなって(笑)

宮崎吾郎:シナリオとプラス鈴木さんからの要望があったじゃないですか?それ入れ込んで書いたんですけど、、イマイチ面白くないなって。

鈴木敏夫:(笑)

 

辛いことがあっても、日常を生きていく海ちゃんの強さ

鈴木敏夫:イッヒー(伊平容子さん)とちょっと話したんだけど、面白かったのはどこかっていうとね、前回聞いたじゃん?どこが印象に残ってるのって。

伊平容子:掃除しよう。

鈴木敏夫:掃除しよう(笑)掃除してるとこ、すごくいいのよ。

伊平容子:あそこで男の子たちは大っきな議題を抱えていて、どう処理しようってやってる時に、自分の目の前のことを一生懸命やってる女の子が、まず自分が出来ることからやろうということで、皆が元気を取り戻していくんですよね。

鈴木敏夫:体を動かしていく中でね。

伊平容子:健康になっていくっていう。

鈴木敏夫:あそこで海ちゃんが主人公になってるんですよ。海ちゃんは当たり前のこととしてやってるわけでしょ?だからいつもと同じように「ここを掃除しよう」なんじゃない?あそこすごい良いよね。

伊平容子:強いですよね。

宮崎吾郎:兄弟なんだって家帰って夢見るわけじゃないですか?なのに翌日の朝彼女、いつものように夢見が悪くて頭が痛いって感じで目を覚ましますけど、何したかっていうとお釜に火をつけて、お水を交換して、旗あげるんですよ。

鈴木敏夫:いつもの日常。

宮崎吾郎:なおかつ学校に行って、いつもと同じように部室に行きカルチェの掃除に加わる。そうすると、この子は目の前のことを少しずつやることによって、慣性力がついててゴロゴロと前進していく。

伊平容子:ゴロゴロって感じですよね、確かに。今思い出した。脚本見て一番ガンときたところは、どんなに辛いことがあって泣いても、次の日に同じことをするっていうことがすごいと思ったのを覚えてます。

鈴木敏夫:すごい娘だよね!だって80%の人がここを壊しちゃって、新しいクラブハウスが出来ることに賛成だったわけでしょ?ところが、海が呼びかけて女の子が中心になって、見る見るキレイになっていく。

宮崎吾郎:あとは集団性が強くなっていくんですよ。

鈴木敏夫:そう!

宮崎吾郎:どんとん大掛かりになっていって、パーティーの時にチョロっと出てきたOBが出てきたりとか、益々参加者が増えるし、号外は次々に発行されて号外に何が書いてあるかというと、とうとう女子の賛同者が半数を超えた、とかそういう風になってく(笑)

鈴木敏夫:それいいよね。どういうことかっていうと、昔を扱う映画なんていくらでもあったわけじゃない?でも時代劇って特徴は、見た目は昔のものだけど実は現代劇なのよ。大概。そういうことでいうと、現代劇をやるべきなのかなーとかさ、そういうことを色々考えたのよ。だって現代ではそういうことって起こるの?要するに大人の決めたルールの中であることを実現するって中々ないじゃん?だって学校のもの変えちゃうんだもん。

宮崎吾郎:自分たちでもやりゃあ出来るっていう。

鈴木敏夫:それってさ、ある種の社会参加でしょ?

伊平容子:吾郎さんが美術館の館長をやってらしたから、スタッフを見ているっていうこともあって、イキイキしてる。みんなが。それもすごく面白かった。

鈴木敏夫:いいよ。リアリティーあるよね。色々あってもいつもやってることはちゃんとやるっていうのが、今の世の中にピッタリコンって感じじゃん。

(中略)

鈴木敏夫:年取っちゃった日本をどうしていくかって時の、1つの答え。全面的な答えじゃないけど、海ちゃんの行動そのものが。必要なことはやるって。やることによって知らない間に本末転倒元気になっちゃうんだもん。いくら辛くても。それと片方で理屈を言ってる俊くん。この2人がカップルってなんか良いのよ。

宮崎吾郎:描いてると、段々女子が主導権握っていくって感じで。

鈴木敏夫:やっぱりそうなったら、それはリアリティーあるよね。海ちゃんは時代のヒロインだよね。