ーナレーションー
東京都のラジオネーム・姫さんからのメールです。
こんばんは。私は高校3年の女子高生です。ジブリ汗まみれ終わってしまうのは本当ですか?毎週とっても楽しみにしてきました。様々な人の様々な考え方をこの番組を通して知りました。終わってしまうのがとても残念です。出来れば終わって欲しくないのですが、終わってもCD発売されれば、絶対絶対に買います。
あの姫さん。すっかり終わった気になってますけど、ごめんね。
ジブリ汗まみれ何気なく続きます。しかもスポンサー増えてます。
この番組は、ウォルト・ディズニー・スタジオ・ホームエンターテインメント、読売新聞、"Dream Skyward"JAL、ローソン、アサヒ飲料の提供でお送りします。
鈴木:どうでした?
矢野:楽しかった。すごい面白いと思う。
鈴木:面白いですか?
矢野:私『ハウル』より全然好き。
鈴木:もう率直に言っていただいた方が。
ーナレーションー
桜の花びらが風に舞う春の午後、ジブリのスタジオは久しぶりに緊張に包まれていました。映画『崖の上のポニョ』の初めての声の収録が行われたからです。
「ポニョの妹たち」という謎の役を演じたのは、あの矢野顕子さんです。
矢野:とにかくセリフがなくて、人間じゃないってことだけでお引き受けしたんで。その通りだったんで、嬉しいです。
ーナレーションー
でも鈴木さんは、なぜ矢野顕子さんをポニョの物語に迎えたのでしょう。
矢野:気持ちが最後まで一緒に行けるじゃん。ポニョと一緒に。
鈴木:ポニョと一緒に。
矢野:ポニョになりたい!って言ってるんですけど。もう好き!
鈴木:(笑)
矢野:そこで好きになっちゃった。
鈴木:お疲れですか?
矢野:はい。
鈴木:あ、疲れました?そうですよね。でも僕もすごい疲れてるんですよ。
矢野:本当?
鈴木:何だかっていうとね、今回あの妹たち、僕が推薦したんですよ。
矢野:あ、そうなの!?ありがとうございます。
鈴木:自分で推薦するでしょ?
矢野:責任があるもんね。
鈴木:そうすると、宮さんがどう思うかってすごく気になって。矢野さんがどうやってくれるかも去ることながら。僕だって疲れてるんですよ(笑)
矢野:ありがとうございます。疲れてくれてありがとう!
鈴木:見てる方も大変なんですよ?(笑)
男性:鈴木さん、珍しく疲れてましたね。
鈴木:やっぱりね、自分はなるだけ言わないようにしてるんですよ。そうすると、責任が発生するでしょ?でも「どうしよう」って言われると、意見言わなきゃいけないじゃないですか。それで決まるとね、それに立ち会う時は疲れますよね。何も出来ないわけじゃないですか。
矢野:そうだよね。
鈴木:運転席の隣の助手席に座ってるようなものでしょ?大変なんですよ。
矢野:ありがとうございます。
鈴木:だから僕、この際だから言いますけど、『山田くん』の時もね、音楽どうしようって時に矢野さんがいいんじゃないかなって。
矢野:ありがとうございます。ついこの間ね、ニューヨークのジャパン・ソサエティーっていって、コンサートをやったんですけども、その時に今まで私経験したことのないくらいアメリカ人のお客さんが来て、その後にレセプションをやった時に、色んな方が近づいて来て下さってね。
コンサートには初めて来るんだけど、私を知ったキッカケって『となりの山田くん』の音楽っていう方が何人もいらしてね。「うわーーすごーい』って思ったの。
鈴木:じゃあ、あれMoMAですね。
矢野:そうそうそう。
鈴木:MoMAで全ジブリ作品を上映するっていうのをやって。そうしたら、外国の人の名前覚えられないんで、映画担当の人が全部終わった時に、とにかく一番気に入ったのが『山田くん』。
矢野:本当ー。
鈴木:MoMAのパーマネントコレクション、この1本納めさせてくれないかと、提案を受けたんですよ。
矢野:そうでしたか。
鈴木:その時僕はね、実は宮崎駿と行ってたんですよ。
矢野:おおーー(笑)
鈴木:それでね、それを聞いたでしょ?聞いてすぐ後ろに宮崎駿がいるわけですよ。僕はね、それはいいけれど、この後の話し合いでね、そのことを話題にしないで欲しいって(笑)
矢野:(笑)
鈴木:大変だったんですよ、それ!
矢野:そうでしたか。
鈴木:でも嬉しかったんですよね。あの時よく覚えてるのが、僕が高畑監督に音楽どうしようってなった時に、「矢野顕子さんはどうですかね?」と言ったらね、高畑さんが失礼なことを言うんですよね。僕に。
矢野:出来るかなーって。
鈴木:いや、そうじゃないんですよ。僕に対して失礼だったんですよ。「鈴木さんの口から矢野顕子さんの名前が出るとは思わなかった」。これどう意味かと思うでしょ?そうしたら、あの人ストレートな人だから。全然配慮しないですからね。「矢野さんの音楽というのは高級だ。それがなんで鈴木さんが良いっていうんだ」と。
矢野:(笑)
鈴木:ひどいんですよ、あの人は!本当に。色々本当にお世話になってます。
矢野:いえいえ、とんでもないです。
鈴木:絵コンテ、全部お読みになったんですね?
矢野:もう大変でしたよ。昨日夜中2時くらいまでかかったかな。私は読み飛ばしたり出来ないし、あまり読むのに慣れてないし、もしプロの人ならば、読みながら映像を組み立てていくっていうかね。そういうのが出来ないから、本当に一枚一枚絵本をめくっているのと同じ感じで。でも楽しかったですね!
鈴木:あ、そうですか。
矢野:うん。すんごい面白かった。絵本の感覚ですよね。
鈴木:今回は色が塗ってあるし。いつも塗ってないんですよ。
矢野:あ、そう?そうしたら、もっと大変かも。
鈴木:今回は特にそういうことをやりましたね。どうでした?
矢野:主にやっぱりポニョかな。
鈴木:ま、矢野さんのポニョですもんね。
矢野:あ、そうですか。一番最初の方にポニョのことを描写してた宮崎さんの絵コンテのあれに、、
鈴木:ト書き?
矢野:そう。ト書きに「あ、これでもう好き!」って思った。
鈴木:え、どれですか?
矢野:ポニョがバケツの中に入れられて、宗介が保育園に持っていったら、クミコだっけ?
鈴木:はいはい。クミコちゃん。
矢野:他の子に見つかって、「見せてよ!」って言われて、断りきれなくて見せるじゃん?
鈴木:はい。
矢野:そうすると、ポニョがこーんな目をして、ト書きには「女を信用していない」っていう(笑)それで「あ、こいつ好き!」って思ったの。で、その後ビューって水かけて泣かせるっていう。
鈴木:はい(笑)
矢野:もー好き!それで好きにはなっちゃったの。
鈴木:宮崎駿も67になりましたんでね、人生の総括に入り始めたんですね。
矢野:宮崎さんの中の女性へのイメージっていうのは、ずっと一貫してますよね。
鈴木:そうですか。具体的には?
矢野:男よりも疾走していく女の子が好きっていう。それは変わってないんじゃないですか?
鈴木:そうですね。
矢野:だって女性のキャラクター、基本的にみんなそうでしょ?
鈴木:そうです。だから女性っていうのは自分勝手でわがまま。時には嘘つきで。でもそういうのを好きになるんだからしょうがないよねっていう。
矢野:そういう女を好きなんだよね?宮崎さん。
鈴木:そうそうそう(笑)
矢野:全然いいんじゃない?それで。
鈴木:それを自分に言い聞かせる映画なんですよ(笑)
矢野:そうですよね。
鈴木:ま、今日は大人だからね。聴いてる人は子供聴いてないから。でも子供にも楽しめるように。
矢野:子供大好きだと思うよ!これ。女の子も男の子もみんな好きになるんじゃない?ポニョと一緒に行く感じと、女の子はかなり私は宗介にキュンってなると思う。5歳のくせに。
鈴木:さすがですね。これ年齢関係あるんですかね?
矢野:ないないない。絶対ない。全然ないと思う。それと文化も関係ないと思う。
鈴木:男と女の基本。
矢野:うん。
鈴木:だってみんな女性から産まれてくるんですもん。これしょうがないですよね。だってそれをやめさせるためには、女性を絶滅させなきゃいけないんですもん。そしたら、人間は滅ぶっていうのか(笑)
矢野:その前に男の方がやられちゃうかも(笑)
鈴木:(笑)
矢野:色んな謎がお話の中にあって、別にそれ一つ一つには言及されていなくて。でも本筋は要するにポニョが宗介が好きだっていう気持ちだけでね。あとは周りは大きくなったり小さくなったりしてるだけなんで。
鈴木:これ知ってます?地球とお月様って、距離どうなってるか。
矢野:時々近くなったり遠くなったり、、、
鈴木:残念でした。
矢野:違うの?
鈴木:離れてってるんですよ。
矢野:あ、そうなの?
鈴木:一年に12センチかな?毎年離れていってるんですよ。だからウン十億年前から比べると、元々、月って大きかったはずなんですよ。知ってました?
矢野:うんうん。関心ないから。
鈴木:あ、そうですか!じゃあいいです。この話はやめます(笑)そのお月様がなぜか、、、
矢野:デカくなってる?
鈴木:そうそう。という時代のある瀬戸内海の海辺にある小さな港町の話なんですよ。そうやって考えると、なんか大きな話でしょ?関係ないですか?
矢野:そうだね。
鈴木:女性って、お月様と関係あるじゃないですか。
男性:そう言うのは男かもしれないですね。
鈴木:あ、そうか。男が言うんですかね。
矢野:そんなこと構ってられないですからね。
鈴木:はい。わかりました!(笑)
矢野:「そういう月がどうのこうのとか、あれどうでもいいんでしょ?」って言ったら、「いや、どうでもよくないんだよ」って監督が後で教えてくださって。でも!でも!それはそれであったとして。でも観てる子供たちとか私とかは、ポニョが宗介のところに行って、ギューって「好き!」って。楽しい!
(外での録音)
鈴木:これがラーメン?じゃあラーメンにしましょうか?じゃあ僕はこれにね、味付けたまご。ネギも入ってるよね?
店員:はい。
男性:じゃあ僕はオールスターズ。
店員:オールスターズをお2つで。煮干しラーメンの味付けたまごと○○(聴きとれませんでした)がお2つで。
高畑:これ魚(うお)って読むの?
店員:魚出汁ラーメンですね。
高畑:ああー。
店員:以上でよろしいでしょうか?
鈴木:はい。
高畑:なんていうのか知らないけど、あれはむしろ凄く聞きやすくなったね。という気がしますよ。
鈴木:時代がね。
高畑:いや。崩し方がなんだろ、もう半端じゃないじゃない。全然中途半端じゃなくて。
鈴木:留めてないですからね。
高畑:うん。それは気持ちよかったな(笑)
ーナレーションー
1999年の『となりの山田くん』以来、2人は矢野さんのコンサートに通い続けてるそうです。
鈴木:コンサートありがとうございました。
矢野:ありがとうございました。
鈴木:コンサートの後、僕ら高畑監督と一緒にラーメンを食いに行きましたんで。
矢野:そりゃあ良かった。
鈴木:凄いよかった。
矢野:ほんと?ありがとうございます。
鈴木:本当に良かったんですよ。お世辞じゃなく。
矢野:大変でした。
鈴木:大変でした?何が大変だったんですか?
矢野:自分でやってる時と気持ち良さっていうのがちょっと違うんですよね。バンドとやる時と一人だけでやる時と。バンドでやると、実際他の人と一緒にやるわけだから。それで大体自分より力量のある人たちとやると、自分の中から思ってもみないようなものが出てくるんですよ。
鈴木:なるほど。それが一人でやる時にも生かされたりするんですかね?
矢野:そうそう。それはすごく大きな原動力になって。今度は一人でやる時っていうのは、その時貰った楽しさだとか、そういうのもあるし。
鈴木:早く帰りたいですか?
矢野:うん。
鈴木:ああ、そうですか(笑)
矢野:もちろーん。でも今日あたり凄く気候が良くて、桜が見えて、平和なのだかな風景を見てると、ああ、日本は良いなって思う。素直に思う。
鈴木:なんでニューヨークに住んでるんですか?素朴な質問。
矢野:素朴な質問ね。日本に住まねばならない理由がないからっていう感じ、でもあるかな。でも!でも!ニューヨークにいる理由がありますよね。いなければいけないわけじゃないけど、今住んでる理由は物を作るところである、っていう。
鈴木:ニューヨークが?
矢野:うん。作るべきものっていうものの姿がわかる。日本は作りたいって気持ちまでに持っていくのが大変。だって気持ちいいんだもん。