鈴木敏夫のジブリ汗まみれを文字起こしするブログ

ポッドキャスト版「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」の文字起こしをやっています。https://twitter.com/hatake4633

久石譲さん 宮崎アニメと25年! 久石譲が語るジブリのうた!

2008年4月29日配信の「鈴木敏夫ジブリ汗まみれ」です。

http://podcasts.tfm.co.jp/podcasts/tokyo/rg/suzuki_vol30.mp3

 

依田:初めて会った宮崎さんの印象ってあったりしますかね?

依田→依田謙一さん。当時、読売新聞の社員だった方です)

 

久石:いやーこれがね、全然ドラマチックじゃないからね。阿佐ヶ谷のところでしたね。

 

鈴木:そうです。阿佐ヶ谷です。

 

久石:それでね、壁にいっぱい絵コンテが貼ってあって。

 

依田:『ナウシカ』の時ですよね?

 

久石:そうそうそう。そうしたら、宮崎さんがいらして、いきなり「これは腐海といって」とか「これは王蟲で」とか、ワーっと説明をされた時にね、「あれ?この人誰だろう」って思ってね(笑)

 

鈴木:(笑)

 

ーナレーションー

鈴木敏夫ジブリ汗まみれ。

 

この番組は、ウォルト・ディズニー・スタジオ・ホームエンターテインメント、読売新聞、“Dream Skyward“JAL、“街のホットステーション”ローソン、アサヒ飲料の提供でお送りします。

 

久石:あのね、5歳の子供でしょ?

 

鈴木:はい。

 

久石:で、男の子と女の子が会うでしょ?そうすると、好きだっていう感情はそのまま「好きだ」でしょ?

 

鈴木:そうです。

 

久石:大概音楽って、気持ちが揺れたりとか、なんだかんだ思ったらすると、そこに音楽って入りやすいんですよ。

 

鈴木:なるほど。

 

久石:だけど、悩んでないんですよ。

 

鈴木:宮さん、いつもそうですよ。

 

久石:スパっと「好き!」って。

 

鈴木:男女関係で宮さんが一番嫌いなのは、駆け引き。

 

久石:あーー。

 

鈴木:会った瞬間、相思相愛なんですよね。普通だったら、打算とか色々あって。それどころか、僕がこんなに好きなのに彼女はどうなんだろうって、色々思い悩むじゃないですか。ないんですよね、あの人は(笑)

 

久石:そう(笑)思い悩んでくれると、そこに音楽が入り込む余地があるんですよ。

 

鈴木:なるほど!

 

久石:だけど、それがスパッと「好き!」って言っちゃう、追いかけちゃうって。そこでどうやってつけたらいいのかっていうね。

 

鈴木:今に始まったわけじゃないんですよ。ほんっとに毎回そうですね。嫌なんですよ。なんか。

 

久石:今回も本当にスポーンとしてるから、

 

鈴木:現実でしょっちゅうそういうことやってるんだから、映画の中ぐらいそういうの無い方がいいよって、聞こえてきそうでしょ?(笑)

 

久石:もう完全にそうですね。

 

鈴木:(笑)

 

ーナレーションー

今夜れんが屋で、まるで音楽が流れているみたいに話をしているのは、そんな不思議な音楽を生み出す人。ジブリの音楽を作り続ける、作曲家の久石譲さんです。

 

久石:だから逆にね、音楽も新しいスタイルが出来ないかなと思ってね。いまちょっとやってるんですよ。どちらかというと、長くつけるのが好きだったんですよ。今まで。出来るだけ入り出したら2分とか続けるのが好きで、その方式とってきたんだけど、今回は逆に5秒とかね。

 

鈴木:短いんですね。

 

久石:はい始まった、終わったっていうよりも、会った、その代わり間もあるんだけど、また会ったみたいな、理想でいうと、どこから音楽が始まってどこで終わったか、あまりわからないような方式をとれないかなと思って。

 

鈴木:色々考えてますね。

 

久石:いやいや(笑)

 

鈴木:絵の方がもう90何%出来ちゃってるんですよ。だからいつもより余裕があるっていうのか。本人も「あとは音だ」って。

 

依田:そもそも最初に『ナウシカ』をやられた時は、どうやって作っていったんですか?

 

久石:その当時って、高畑さんがプロデューサーだったんですよ。

 

鈴木:宮さんはね、当時、公言しておりましてね。「俺には音楽はわからない!」って。「だから、高畑さん。全部よろしく」って。ここからスタートなんですよ。高畑さんが選んでくれたら、俺はそれでいいって。

 

それで率直に申し上げると、当時色んな人の候補の名前があって、久石さんを選んだのは高畑さんだったんですよね。それで僕がその時のことを忘れないのは、僕も一緒になってそばにいたから、とにかく久石さんの作った曲、これを聴きまくったんですよ。

 

高畑さんがその時に「久石さんがいい」って言った時に、言った言葉を僕はよく覚えてるんですよ。

 

久石:なんて言ったんですか?

 

鈴木:「この人の曲は無邪気だ」って言ったんですよ。で、「宮さんに似てる」って言ったんですよ。その時はもちろん久石さんに会ってないんですよ。会ってないんだけれど、この無邪気、天真爛漫さ、そして熱血感ぶりは二人が絶対上手くいくはずだって。それで会って、それで期待に応えていただいたっていう。

 

久石:本当に幸運な出会いだったよね。僕はあの時『ナウシカ』やったじゃない?その後、安彦さんの『アリオン』。これも同じ徳間さんで、やっぱり大作だったわけですよ。だからもう『ラピュタ』は来ないと。嫌だなーやりたいのになーと思いつつ、『ラピュタ』出来ないのかなーと思ってたら、連絡があって。嬉しかったよー。あの時泣いちゃいましたよ。

 

鈴木:二人ですぐ伺ったんですよ。これが決定だと思いますね。そして『トトロ』ですもん。その時は高畑さんも『火垂るの墓』作ってるから、今度は音楽を宮さん自らやらなきゃいけないわけですよ。

 

僕忘れもしないシーンが、トトロとサツキとメイがバス停で出会うあそこのシーン。これは忘れないですよ。何かっていったら、宮さんはあのシーンすごい大事なシーンでしょ?それで久石さんに言ってるんですよ。「音楽いらない」って。これは僕はっきり覚えてるんです。

 

でね、僕しょうがないんで宮さんに内緒で、『火垂るの墓』を作ってる高畑さんに相談に言ったんですよ(笑)そうしたら、高畑さんってそういう時決断早いから、「ここはあった方がいいですよ」って。それで「ミニマムでいくべきだ。久石さんなら絶対出来る」って。

 

久石:いわゆるメロディーでいくんじゃなくて、ミニマルミュージック的な。

 

鈴木:で、曲が出来ました。それを聴く機会があったんですよ。宮さんという人が面白いんですよ。聴いた瞬間、「これは良い曲だ!」って(笑)あそこは音楽はないって言ったこと、カケラも覚えてないわけですよ。

 

久石:(笑)

 

鈴木:あの映画で一番のポイントは、バス停でトトロに出会う。子供はそれを信じてくれますよ。だけど大人が果たしてそれを信じてくれるのか。それをあの曲によって実現した、と僕は思ってるんですよ。大人もトトロの存在を信じることが出来た。そういう意味であの音楽はほんっとに大事な曲だったと思います。

 

久石:言い方が変なんだけど、目の前が霧で何にも見えない感じの中で、「あ、これいけそうだ」っていう、例えば、それがフルートの音だったりとか、「あ、こういう感じ」とか「もっと丸い感じ」とか、何かピンと来そうなものを頼りに探して歩いてるっていう感じですよね。

 

だから、映像と音楽をやる時に一番気にしなきゃいけないのは、ストーリー的な流れを邪魔しないようにピッタリ寄り添う時と、敢えて無視してメロディーでそのシーンを押していくシーンとね。そのバランスが一番『ポニョ』でもそれをね、、、

 

依田:佳境ですね。

 

久石:佳境でね。一番気にしてるところなんだけど。絵コンテをものすごく見ますね。それから映像を見る。どこにキッカケがあるんだろうと思うのと同時に、あれ?ここってもしかしたらメインテーマやなんかと全く無関係なものでいくべきなのか、いや、そんなくだらないことを考えていてはいけない。そうじゃなくて、ここはどういう風に、まず自分が最初の観客であるわけだから。音楽に関しては。自分がこういう風に出来るのはなんだろうっていうようなことを、ゴチャゴチャ考えながらやってるからね(笑)

 

映画の音楽書いてるとずっと来ることなんですけどね。元々映画って、作り物なんですよ。フィクションなわけですよね。で、そんなのあり得ないと思うようなことをやってても、それが逆にもっと本当な現実を表現したりするんですよ。だから映画ってみんなワクワクするわけですよね。そうすると、その虚構性の中で初めて存在するから、音楽って必要なんだろうと。

 

鈴木:さっきのバス停のトトロとサツキとメイの出会い。やっぱりあそこが上手くなかったら、あの映画は本当に名作になったのかって。そのぐらいの力を持ってると思うんですよね。わかりやすく言っちゃえば、子供はトトロの存在を信じてくれるし、大人に信じさせるためには音楽は必至でしたよね。やっぱりあの音は鳴ってるんですよ。そういうことってあると思うんですよね。

 

久石:ごめんなさい。いま頭の中『ポニョ』でいっぱいなものですからね。なんというか、何を見てもポニョに見えちゃうんですよ(笑)

 

ポニョって言葉が良いの。思いません?まず「ポ」が破裂音じゃないですか。「ニョ」って受け止めるじゃない。これ自体も音楽なんです。

 

鈴木:なるほど。

 

ーナレーションー

鈴木敏夫ジブリ汗まみれ。

 

鈴木:今回、久石さんに作っていただいたでしょ?その曲がラストのシーンを決めました。そういうことがあるんですよ。それによってこうやれば良いんだってわかるって。

 

依田:責任重大ですね。先生(笑)

 

久石:いやーそうなんですよ。

 

鈴木:どうやって観てもらえばいいかは見えたんですよ。宮さんは。そういうことはあるんですよね。だから、本当早く作って良かったなっていう(笑)

 

久石:僕は逆に、宮崎さんすごく優れた作詞家だと思ってるんですよ。で、本当の本音を言うとですね、音楽の究極は歌ですよ。だって人に何かを伝える時に言葉があって、言葉だけでもダメで、それと音楽とが響きあって、瞬時に人生を感じちゃったりとか、色んなことを見えたりするわけですよね。そうすると、最後に行き着くのは歌なんですよ。

 

鈴木:生き物なんですよ。

 

久石:うん。実はそこに行き着いちゃって、結局、生命の世界というかね。

 

鈴木:自分の意識の下の下の方に太古の昔から続いてきてる遺伝子みたいなもの、それがあるんじゃないかなって思ってるんですよね。

 

久石:今回も本当に一人で作ってるんじゃないなって。鈴木さんともしょっちゅうメールをしたり話したり。宮崎さんともすごくコミュニケーションをとってるというか、よく話したんですよ。

 

それは今まではどちらかというと、こっちで勝手に作って「出来ました。聴いて下さい」というスタンスが多かったんです。それが今回出だしからなんで。すごく一人で作ってるんじゃないんだなって感じが、気持ちいいなーっていうか。

 

鈴木:久石さんとこんなこと話すの初めてだから。

 

依田:あまり公になってないですよね。

 

ーナレーションー

ジブリの音楽はどこから来て、何を奏で続けているんでしょうね。もしかするとこの夏、わかるのかもしれません。

 

久石さんがジブリの音楽を集めて、音楽会を開くからです。8月4日、5日、日本武道館で行われる「久石譲in武道館~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~」。プロデューサーは鈴木さん。

 

そして宮崎さんはオリジナルのポスターを描き下ろした。そのポスターは番組ホームページ、www.tfm.co.jp/asemamire にアップしてありますので、ぜひ感想をお寄せ下さいね。

 

鈴木:武道館で「久石譲in武道館」という大コンサートをおやりになるということで。サブがついてまして、「宮崎アニメと共に歩んだ25年間」。

 

久石:鈴木さんにまた素晴らしいタイトルを書いていただいちゃったんで。武道館に相応しいぞ、みたいな。

 

依田:聞くところによると、武道館で200人のオーケストラと400人の合唱団。

 

久石:はい。『ポニョ』を入れて全部で9作品になるのかな?それで全てを網羅したものをやろうとしていますね。

 

一本の映画で例えば『トトロ』ですと、「さんぽ」だったりとか「風の通り道」だったりとか、「トトロのテーマ」とかあるじゃないですか。そういうのを欲張って全部やろうと。だからそれぞれ全部組曲になってて。だから全部で40曲くらいになるんじゃないかなと思って。下手すると50近い曲数を、どうやって2時間に圧縮するかの作業になってくるかなと。

 

実は超巨大なスクリーンを吊るんですよ。これは日本中まわってもないっていう。で、一個だけあったのよ。

 

鈴木:一個だけあったんですか(笑)

 

久石:どのぐらいでしたっけ?大きさ。

 

男性:幅20メートルの高さ9メートル。

 

鈴木:武道館の天井って、どうなってるんでしたっけ、なんつって(笑)天井に全部写しちゃうとか(笑)

 

久石:要するに、人数の多いオーケストラだから、映像とオーケストラが対等な存在にしたいわけ。そうすると、通常でいうプロジェクターの最大級のものだと、画面がちっちゃく見えちゃうんですよ。下見に行ったんだけど、凄い考え込んじゃってさ。それで「嫌だ。もっと大きなのないか」って一人で大騒ぎして。

 

依田:確かにそれを生演奏で聞く機会もないっていうのもありますよね。

 

久石:そうですね。徹底的に音楽と映像が一緒に融合する世界。そうすると、視覚的にちゃんとした存在感がないと、厳しいわけですよ。それにそれだけの人数のオーケストラでやろうとする時に、、、

 

鈴木:鼓笛隊もいるのよ。

 

久石:あ!言っちゃった!

 

鈴木:え、言っちゃいけなかったんですか?

 

依田:それに加えてるんですか?

 

鈴木:そうそうそう。

 

久石:ま、いっか。鼓笛隊はね、100人から、もしかしたら、もっと集まるかなっていう感じで。

 

依田:のるんですか?ステージに(笑)

 

久石:だからね、日を追うごとに増えてるからね。

 

鈴木:(笑)

 

久石:どこでそれを整理するかっていう問題はあるんですけど。

 

依田:お客さんより多くなるってことはないですよね?(笑)

 

久石:たぶんないかなーとは思うんだけど。

 

依田:あの会場だから、それはないですよね(笑)

 

久石:僕のこと放っておかない方がいいと思いますよ?

 

ーナレーションー

8月4日、5日、日本武道館で行われる久石譲さんのコンサート、「久石譲in武道館〜宮崎アニメと共に歩んだ25年間〜」のチケットは、読売新聞のインターネットサービス「yorimo(ヨリモ)」で5月2日まで先行受付しています。詳しくはヨリモのホームページyorimo.jpまでどうぞ。