※服部:汗まみれのプロデューサー
※伊平・細川:鈴木さんの部下。ポニョでは宣伝担当。
※星野:星野康二。スタジオジブリの社長。
鈴木
夏真っ盛り。ベネチアの鈴木です。凄く暑いです。
細川
藤巻さん藤岡さんは、ちなみに今日『崖の上のポニョ』のTシャツを着て、ポニョをちょっと歌ったんですね。
鈴木
ベネチアはね、来るたびにいつも思います。この街は浅草観音だと。
星野
5分後とかにもう一回かけていいですかね?
細川
人々がみんな元気ですね。8:30にはみんな活動をしていて。凄く開放的で。
鈴木
サン・マルコの広場に行ったんですよ。そこでお茶を飲んでいたら、楽団の人が僕らを見つけて「上を向いて歩こう」を演奏してくれました。凄く嬉しかったですね。僕なんか手を振ったりして。
星野
暑い。ひたすら暑い。
細川
藤岡さんの面白い発言は、お土産さんが何百店舗とあるんですね。「この街に本当に必要なものは何もない」と言ってました。
鈴木
宮さんは藤岡藤巻を見た途端に「のぞみちゃんは来てないな」って、来てないことがわかると残念な声を出していました。
伊平
私はビデオを回していました。途中で大事な時に電池が無くなってしまって。
細川
ここはどこにいるの?みたいな状況にポーンと私と伊平さんがレッドカーペットのところに。
細川
どうもすいません。私あの、、、
細川
生まれて初めて足が震えました。
鈴木
そして鳩が飛んでいます。
鈴木
良い写真がいっぱい撮れました。これは後で送りますから、ぜひホームページに。
ーナレーションー
この番組は、ウォルト・ディズニー・ホームエンターテインメント、読売新聞、「Dream Skyward」JAL、「街のホットステーション」ローソン、アサヒ飲料の提供でお送りします。
伊平
実は昨日、ミーティングを細川さんとしている間にその場所で寝てしまいまして(笑)それで2時間くらい爆睡をして、清々しく起きました。今日は。
鈴木
はい、もしもし。
服部
もしもし。鈴木さんですか?
鈴木
ベニスの鈴木です。ベネチアの鈴木です。
服部
そちらの様子はいかがですか?
鈴木
こっちですか?暑いです。すごく暑いです。夏真っ盛り。今回は人数が多いんです。まず宮崎監督が来ています。主題歌を歌ってくれた藤岡藤巻が来ています。で、ジブリの社長の星野さん。宣伝の方をやってくれた伊平、細川コンビも来ています。
宮崎監督は、あとで伊平と細川くんに聞いてもらうとわかるんですけど、パリで約9日間過ごして、すっかり疲れ切りまして、こっちへ来てフラフラなんですよ(笑)その旅の間、凄い毎日が楽しくて元気だったんで、ベネチアへ来た途端、急に疲れがヒョロヒョロっと出てきまして、今寝てばっかりいます。
鈴木
明日はお昼から公式上映なんですけど、その前に僕らの古い友人でマルコ・パゴットっていうイタリア人がいるんですよ。これはお父さんが漫画家で『カリメロ』を描いた人なんですけどアニメ関係者で、宮崎監督が『名探偵ホームズ』をやる時に一緒に作った人がなんですけど、その人と朝に会うことになっていて、僕も会うの久しぶりなんで、楽しみにしていることと、それから12時から公式記者会見があって、それで夕方の何時でしたっけね?公式上映が19時くらいから始まるんですよ。その前にレッドカーペットを歩くことになってます。
服部
鈴木さんはどんな格好で歩くんですか?
鈴木
僕は明日はね、キチンとした格好にすることにしました。ちょうど今夜の夜10時が第1回目の上映なんですよ。だからまだ何もわからないですね。とにかく明日にならないとわからないという状況です。
『ポニョ』といえば、海、そして水ですからね、やっぱり水といえばベネチア。楽しみです。じゃあ細川くんに変わります。
細川
こんばんは。お疲れ様です、どうもー。細川といいます。『崖の上のポニョ』の宣伝をやってます。いまベネチアに来ています。皆さんとても優雅な感じです。
今日はみんな藤巻さんに騙されました。
服部
というのは?
細川
船に乗ってリド島に戻ろうとしてたんですけど、藤巻さんが「俺についてこい」というような感じで、「俺はよく知っている」ということで藤巻さんが珍しく先頭を切って歩いて行ったんですね。こっちは結構ヒイヒイ言いながら藤巻さんについて行ったんですけど、藤巻さんはベネチア名物の景色を見せたかったらしく、そこに辿り着いたんですね。あれなんて言う丘なのかな?わからないんですけど、みんなそれに何の感動もせずにですね、怒られてました。
服部
コンペティションに関しては、何か耳に入ってきてます?
細川
いや、まだ入ってない。ちょうど今、夜の10時からプラス試写があるので、『崖の上のポニョ』を観ていない人たちが観てると思います。色んな国の方々が。
藤巻さんと藤岡さんは、今日『崖の上のポニョ』のTシャツを着て、ポニョをちょっと歌ったんですね。記者の前で。誰も寄って来ませんでした(笑)まだ藤岡藤巻は海外では全くされていません。
このまま伊平さんに変わっていいですか?
細川
はい。
伊平
どうもこんばんは。伊平です。『崖の上のポニョ』の宣伝を、細川さんと一緒に担当しております。
今朝、私は記録映像係で撮影をしているんですけど、朝たまたまホテルの外観を撮影していたら宮崎監督がお散歩にいらして、朝一緒にお散歩をしました。1時間くらい歩いたんですけども、歩調をいつもとっても速く歩くんだけども、今日はカメラを回しているということで歩調をゆっくりにしたいただき、街を説明して歩いてくれました。元気です。
宮崎さんと散歩をしていて、自分の部屋からアドリア海がとても綺麗に見えて、眺めが良いんだ、なんて話をされていたので、図々しくカメラを持って、「ちょっとカメラにおさめたいんですが、部屋に入れていただけませんか?」と交渉したら入れてくださり、その際、宮崎さんが部屋から見える景色を、昨日ベネチアで買ったノートだったと思うんですけど、そのノートに窓から見える景色をスケッチされていました。それを撮影をさせていただきました。色付きのものもあったんですけど、それはパタッと閉じられてしまったんてすが、鉛筆のスケッチは映像に入れさせていただいたので、そういうのを入れられたらいいなって思います。あとは私に言えることはあるかしら。
ーナレーションー
北野武監督の『アキレスと亀』、押井守監督の『スカイ・クロラ』、そして宮崎駿監督の『崖の上のポニョ』。コンペティション部門に選ばれた21作品のうち、3つの作品が日本の映画ということもあって、ジャパンフィーバーが起こっているとも伝えられた今回のベネチア国際映画祭。
でも宮崎監督はホテルの部屋で静かに海を見る時間を過ごしたようです。
鈴木
宮さんがいつになく公式記者会見落ち着いてましたね。その会見場がかつてないぐらい超満員だったのが今日の特徴なんですけど、前だとその記者会見っていうのがほとんどがアジアの人だったんですよ。ところが今回は、ヨーロッパの人だらけ。今日はヨーロッパ中の人の質問でしたね。
細川
会場に入ってみたら、凄い記者とマスコミの人がたくさん構えていらっしゃって、その壇上に鈴木さんと宮崎さんと司会の方が上がられたんですけど、本当に私は生まれて初めて足が震えました。車が5台で分担して乗り合わせてたんすけど。レッドカーペットまで。私と伊平さんが最初の車に乗って、藤岡藤巻とか鈴木さんとか星野さんとか奥田さんとか、車を降りた瞬間に記者とお客さんの歓声が凄いんですよ。現実じゃないんですよね。それが。
鈴木
前回僕、雪駄で歩きましたからね、今回はちゃんと靴を履いて、黒いスーツを着て歩きました。
細川
ここはどこにいるの?みたいな状況に、私と伊平さんがポーンとレッドカーペットのところに一番最初に放り込まれて。海外プレスの待ち受けてた人には「邪魔だ邪魔だ」って怒鳴られるんですよ。イタリア語で。何言ってるかわからないんですよ。本当に足の震えが止まりませんでしたね。
星野
関係者の人で泣いている人もいたので。関係者っていうのはヨーロッパの人ですよね。お客さんも泣いてたし、それを見てこっちも熱くなるっていうんですかね。本当にそこにいて幸せだった感じがすごくしたし。
細川
鳥肌立ちました。一番すごかったのは、婦人と青年と赤ん坊がやってきて、ポニョが赤ん坊に顔を擦り付けて、赤ん坊が鼻水を垂らしながらも最後は良い表情に変わるじゃないですか。ポニョを見て。そこで一番な歓声が起きたっていうのを聞いて、私はその場で鳥肌が立ちましたね。やっぱり映画って、言葉とかセリフじゃないんですよね。何も知らないイタリアの皆さんとか初めて観る人にダイレクトに通じたんだと思って。ちょっとビックリしました。
星野
星野です。スタジオジブリの星野です。いまリド島にいます。ベネチア国際映画祭最後の授賞式が終わって、いま関係者で打ち合わせをしております。
下馬評では、『崖の上のポニョ』が金獅子賞を獲るんじゃないかってことだったんですけども、残念なことに違う作品に賞は持っていかれました。
しかし、実際に授賞式に参加して感じたのは、今回の金獅子賞もそうなんですけど、若い人たちに賞が与えられてるんですね。映画祭として映画産業の将来のために若い人にエールを送っているっていうことを感じました。
映画祭の関係者とか我々のヨーロッパのパートナーの方々が、実感としておそらく『崖の上のポニョ』が大きな賞を受賞するんじゃないかって、本当にみんな思ってたみたいなんですね。そういう面ではガッカリ感があったことは間違いないんですが、でも私は宮崎監督と一緒にベネチアでの公式会見、公式上映に参加しましたんで、その時と大変な皆さんの歓声を目の当たりにする中で、映画界の関係者の方が涙を流して『崖の上のポニョ』に感動したという生の声を聞きましたんで、こういうのを重ね合わせると、本当にベネチア国際映画祭に参加して良かったなって思います。本当に宮崎さんの作品、ジブリの作品がヨーロッパで支持されているっていうことを強く実感出来たっていうのが今回の映画祭の総括です。ありがとうございました。
これはこれとして一つの節目として、この後の全世界での『ポニョ』の頑張りをなんとか実現していきたいと思います。
服部
お帰りになったら、宮崎さんになんてお声をかけますか?
星野
ベネチアの皆さんは本当に『ポニョ』のことを大好きですって伝えたいです。
服部
はい。ありがとうございました。お気をつけてお帰りください。
星野
はい。
伊平
私たちは明日帰るわけですが、やっぱり私は一人でちょっと落ち込んでいて、部屋に帰って一人で頭の中を整理しようと思ってたら、細川さんに「ここで整理すればいいじゃない!」って言われてですね、「せっかく今日ここまで頑張ったんだから、みんなで美味しいご飯を食べて、そこで整理しよう」って。三人で食事をしました。私の数百倍も疲れている伊勢さんと細川さんに励ましたいただいてしまいました。なので私は頑張ります。
ーナレーションー
『崖の上のポニョ』。残念ながら金色のライオンは微笑みませんでした。でももしかすると、鈴木さんをはじめ、ジブリのスタッフたちはベネチアに滞在中、すでに見えないライオンに抱かれていたのかもしれません。
公式上映のあった夜、午前0時のベネチアで伊平さんはこんな話をしてくれていたんです。
伊平
記者会見の中で私が印象に残っているのが、今日日本の記者さんとちょっとお話をした時に、「生まれてきたよかったと子供たちに思ってほしい」と宮崎さんがおっしゃったんですね。それは鈴木さんがこのコピーを考えられたんですけど、ずっとキャッチコピーが出来なくて、ずっとコピーをつけることで映画の世界を狭めてしまうんじゃないかって鈴木さんがずっと考えていて。それで「生まれてきてよかった」という言葉を選んで宮崎さんと話して、宮崎さんがとても喜んでたんだっていう話を私たちは聞いてたんですけども、今日宮崎さんの口からご自分の感想を含めて、「生まれてきてよかったと思ってほしい」という言葉を聞いた時に、鈴木さんと宮崎さんが本当に一緒に作っている映画だなって。すごく嬉しかったですね。
ーナレーションー
「生まれてきてよかった」。
この言葉を宮崎さんが口にしたのは、二度目ののことでした。まだポニョのイメージが生まれたばかりだった三年前の9月8日、場所は同じベネチア。映画祭から栄誉金獅子賞を贈られた宮崎監督は、イタリアの記者団にこう語っていたんだそうです。
「それでも子供たちに生まれてきてよかったんだよ、と言える映画を作りたい」。
海に沈みゆく街ベネチアに、宮崎さんはポニョを返しに来たのかもしれませんね。上映会の後の宮崎さんの様子を、ベネチアの鈴木さんはこんな風に語っていましたから。
鈴木
今回このベネチアに来て、宮さんという人を見てて思ったこと。良い人になってません。全く良い人になってない。人は良い人になった時に作品を作らないですからね。
良い人っていうのはどういうことかというと、色んなものに理解を示すってことでしょ?ところがベネチアに来たら、宮さんの顔つきが変わったんですよ。意欲がすごい出てる。やっぱり戦いが好きですね。彼は。世界の色んな映画が集まってるでしょ?そういう中で負けちゃいられない。なんかそんな感じが如実に出ました。あの人はまた作るんだなって、僕は確信しましたね。
服部
終わりっていうか、始まった感じですね。
鈴木
そう。始まった感じなんです。
(了)