鈴木敏夫のジブリ汗まみれを文字起こしするブログ

ポッドキャスト版「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」の文字起こしをやっています。https://twitter.com/hatake4633

あの千尋がれんが屋を訪れる... ゲスト:柊瑠美さん

2008年7月15日配信の「鈴木敏夫ジブリ汗まみれ」です。

http://podcasts.tfm.co.jp/podcasts/tokyo/rg/suzuki_vol41.mp3

 

ーナレーションー

ポニョが歩きはじめました。

 

男性

鈴木さんのお言葉で、魚のポニョと人間の宗介の恋ということに関してですね、改めて鈴木さんの言葉でいただければなと思ったんですが。

 

鈴木

宮崎駿の描く男女関係ってね、一般観客として観たら、すごい羨ましいLOVEだと思ってるんですよ。宮さんの描く恋っていうのは、いつも100%好き同士がその次に何をやるか、いつもそれを描いてるんですよね。

 

ーナレーションー

7月7日七夕の日には、映画『崖の上のポニョ』完成報告記者会見が行われました。

 

女性

今日は残念ながらあいにくのお天気なんですが、7月7日というのは七夕ということで、鈴木さんは今日、誰にどんなお願い事をするかお伺いしたいなと思いまして。

 

鈴木

これは意表を突かれましたね。でも伝統的に七夕の日って雨ですよね。だから僕今日、雨だと思ってましたよ。僕は幸せな毎日を送りたいですね、なんつって関係ないか(笑)

 

ーナレーションー

そして、そんな七夕の夜に開かれた完成披露試写会には、彦星が六本木ヒルズに現れました。

 

鈴木

じゃあ、早速ご挨拶願います。宮崎監督。

 

宮崎

今日は披露試写会に来ていただいて、どうもありがとうございます。実は試写会と言いましてもですね、既にスタジオの小さな映写室で家族試写会っていうのを何度も行ってるんです。それで終わりまして、子供たちに「どうだった?」って訊きますと、どうしていいかわからない顔をするんですね。みんな。それで「面白かった?」って訊くと、「ん」という顔をするんで(笑)私は非常に不安になっておりまして。

 

同じような世代の人間が泣いたとか笑ったっていう話は聞いても、子供たちがどう思うかっていうのが実は一番ドキドキしているところで。

 

ーナレーションー

そんな中、あえて試写会ではポニョに会わずにおこうと決めた1人の女の子が、今夜れんが屋を訪れます。

 

彼女の名前は、千尋

 

7年前、あの『千と千尋』を演じた柊瑠美さんです。

 

鈴木

千尋やってくれたの7年前?

 

はい。

 

鈴木

その時って中学の、、

 

2年生です。

 

鈴木

だからそれが残ってるんだよ。だから今も中学生なんだよ。

 

んーー!!

 

鈴木

ほんとに。

 

中学生で体だけ大きくなっちゃったみたいな?

 

鈴木

今は、、

 

(大学)3年生です。

 

鈴木

もう3年生なんだ?

 

はい。

 

鈴木

ふーん。7年かぁー。7年は長かった?

 

うーーん。いや早いですね。

 

鈴木

早いの?なんで?

 

え?!

 

鈴木

NHKやってたわけでしょ?

 

はい。

 

鈴木

それで『千と千尋』なんかやったわけでしょ?

 

はい。

 

鈴木

その後って芸能活動は続けてたの?

 

続けてましたね。

 

鈴木

あ、そうなんだ?

 

はい。で、去年大学2年生の時に学校が忙しくなるんでお休みしてて、つい最近また、、

 

鈴木

あ、そうなんだ!

 

そうなんです。高校生の時にあるドラマで悪役をやったんですよ。

 

鈴木

悪役やったの?

 

はい。

 

ーナレーションー

鈴木敏夫ジブリ汗まみれ。

 

この番組は、ウォルト・ディズニー・ホームエンターテインメント、読売新聞、"Dream Skyward"JAL、"街のホットステーション"ローソン、アサヒ飲料の提供でお送りします。

 

ーナレーションー

鈴木敏夫ジブリ汗まみれ。

鈴木

千と千尋』の声をやった、、

 

やりました!

 

鈴木

みんな知ってるの?

 

大学の子ですか?

 

鈴木

うん。

 

知ってますね。

 

鈴木

あ、知ってるんだ!そういうことってわかるもんなんだ?

 

わかるみたいですね。

 

鈴木

ふーーん。

 

ーナレーションー

あーあー。歳をとるはずですよね。あの小さな女の子だった千尋、いや千尋を演じた柊瑠美ちゃんは、女子大生になっちゃってました。

 

鈴木

21歳か。

 

8月でなります。

 

鈴木

8月だっけ?誕生日。

 

はい。

 

鈴木

何日?

 

(おそらくジェスチャーで「1」をしたと思われます)

 

鈴木

1日なんだ?獅子座なんだ?

 

はい。

 

鈴木

8月だもん。

 

え!?何日ですか?

 

鈴木

19日。

 

え、獅子座。

 

鈴木

(笑)A型なの?

 

A型です。

 

鈴木

A型なんだ!なるほど。

 

O型?

 

鈴木

みんなにそう言われる。

 

ああー。

 

鈴木

俺もA型なの。

 

あ、そうなんですか!なんか話を聞いてる限り、っぽくないですね。

 

鈴木

A型がどっか行っちゃったんだよね。生きてる間に。

 

ああー消えちゃったのかな。私でもB型っぽいって言われたりもします。

 

鈴木

だって変だもん。

 

いや(笑)ええ!

 

ーナレーションー

でも安心しました。柊さんは茶髪でもなく、とびきりのグラマーにもなっていなくて、鼻ピアスもしていません。っていうか、ちょっとどうかと思うくらいなんだか千尋の頃のままなんです。

 

鈴木

生きてると面白いよ。色んなことがあるから。色んな人に会えるし。

 

自分が30代40代になるのが想像出来ないですもん。

 

鈴木

俺だってそうだよ?自分が60代になるのは想像出来ないし(笑)8月だもん。

 

あ、そうか!で、60ですか?60って還暦かなんかでしたっけ?

 

鈴木

そうそう。

 

うわ!おめでとうございます!

 

鈴木

まだ早いよ!(笑)

 

(笑)

 

ーナレーションー

でもそんな柊さんだからこそ、今回彼女はポニョに会えたのかもしれません。

 

あのー言われたんですけど、30になっても40になっても自分は自分なんですよ、って言われました。

 

鈴木

誰に?

 

お父さんに。だから30の自分が想像出来ないとか思ってても、自分は自分のまんまだから、20の頃の自分と30の頃の自分の根本は変わってないもんだよって言われました。

 

鈴木

そうなんだ。

 

でも最近、その意味がちょっとわかりました。

 

鈴木

どういう風にわかったの?

 

高校生の頃と大学生の頃じゃ中身変わってないから。

 

鈴木

中学2年と今とはずいぶん違う?

 

いやたぶん変わってないですよ。顔も変わってないし。

 

鈴木

変わってないよね。

 

変わってないです。私小学校の頃のアルバムから変わってないんです。顔。

 

鈴木

(笑)

 

ーナレーションー

鈴木敏夫ジブリ汗まみれ。

 

鈴木

今度の『ポニョ』でちょうど映画の真ん中過ぎたあたり。何しろポニョは宗介くんに出会って、この男の子と暮らすには私も人間にならなきゃって。

 

ところが、魚のポニョが人間になるには魔法を使わなきゃいけない。そうすると、大嵐を呼んで、港町は大変なことになっちゃうんだけれど、それが静まったあと、大津波が来たわけだから、みんな海に沈んじゃって。そこでポニョと宗介くんがポンポン船を漕ぎ出して、それでみんながどうしてるか見に行くっていうシーンがある。そこで突然、最初に出会うのがある青年と婦人。赤ん坊を抱いた。

 

このシーンね、映画を観てもらう人に先に言っちゃうのはあれだけど、実は宮崎監督にとってはすっごい大事なシーンだったのよ。映画観ていくとわかるんだけど、そこポニョと宗介がその青年と婦人に出会うじゃない?出会って色んな会話を交わすんだけど、映画の中でそのシーンだけちょっと前後と違うのよ。

 

へえー。

 

鈴木

違う奇妙な時間が流れるわけ。なんでだろうって思うと、宮さんがそこのシーンに色々思い入れを込めてるんですよ。

 

あ、そうなんですか。

 

鈴木

そう。っていう大事なシーンだったのよ。そのシーンの婦人の役を瑠美ちゃんにやってもらったんですね。それね、色々あったの。

 

色々あったっていうのはね、そのシーンは宮さんにとっては大事なシーンだから、そのシーンを誰にやってもらうかって悩んでて。悩んでたんだけど、宮さんも「どういう人がいいかな?」って言ってるうちにどんどん時間が迫ってきて。宮さんがそのシーンを大事にしてたのは知ってたんだけど、声に関しては宮さんどう思ってるかなっていったら、最初のうちは自分が大事だと思ってるから恥ずかしいでしょ?「誰でもいいよ」なんて言ってたんだけど(笑)

 

でもそれが誰でもよくないってことがわかって、それで声を誰にやってもらうかで悩んだんだよね。悩むと同時にあんまり時間がなくてね(笑)

 

だって1番最後でしたもんね?

 

鈴木

そう。それで色々どうしようどうしようって。で、突然瑠美ちゃんのことを思い出したんですよ。宮さんなんかちょっと諦めててね、「このシーンいいや!」ってヤケになってたの。ところが、男と女でしょ?俺が「瑠美ちゃんどうですかね?」ってある日宮さんに言いに行ったら、「ああ!」って。

 

(笑)

 

鈴木

「良いかもしれない」って。すんごい喜んだの。その時に男の方を思いつかないわけ。どうしようかなって思ってたら、宮さんが「ナヨでいいよ」って。ナヨってジブリにいるある男の子なんだけど(笑)その婦人役をやってもらったじゃない?宮さんはすんごい喜んだよね。最初の第一声で。

 

へぇー!

 

鈴木

最初の一声聞いて「上手くいく」って。「もう余計なこと言わなくていいや。俺は聞いてるから」って(笑)本当にそう。

 

本当ですか?

 

鈴木

ほんっとうに喜んでたから。後であの収録が終わった後、毎日言うわけ。宮さん。「瑠美ちゃん良かった」って。

 

本当ですか!?もう今でも不安なんですよね。私もすごい感謝してるんですよ。というのは、ずっとお休みしてて、5月に新しいところが決まって、で、さあ始まります。ずっと休んでて、、

 

鈴木

芸能活動辞めてたってことですね?

 

はい。辞めてて、で、復帰して事務所決まりましたの本当に何日後かくらいに自宅に電話が来たんですよ。

 

鈴木

今夜中に連絡とってって言ったんだもん。

 

あ、そうなんですか!それで言われて、すごい縁だなと思って。

 

鈴木

宮さんに言う前に連絡とったの。

 

もしその声がイメージに合ってなかったらどうしたんですかね?

 

鈴木

変わらないもん。

 

(完成披露試写会の場面に変わる)

 

男性

あそこで宗介とポニョが赤ん坊を抱えた若い夫婦と、、

 

宮崎

そうですよね、不思議なシーンですよね(笑)

 

男性

あそこはこの映画の中でおそらくみんなが観た時に、「ここはなぜあるんだろう?」って思うシーンになってると思うかもしれないと思うんです。

 

宮崎

そうですよね。でもどうしても必要なシーンだったんですね。ポニョが自分のこと以外にちゃんと思いやる気持ちを持てるっていう。それは言語領域に属さないで、怪しい会話を赤ん坊とやってますけど、それは全然わからないですけど。要するに、人間以前の領域での会話だと僕は勝手に思ってるんですけど(笑)

 

言葉を覚えたら、人間の表情を色々読むに従って、段々薄れていく記憶っていうのが赤ん坊にはあって。そこを理解出来る力をポニョは持ってるって。人間の側にはあまり属していないけど。だから唐突でもあのシーンは必要だったんです。

 

ーナレーションー

と、宮崎さんが語る柊さんの登場シーン。何が大切なのか、あなたも劇場で感じて下さい。

 

なお、ジブリ汗まみれでは、映画『崖の上のポニョ』公開直前の7月17日にポッドキャスト宮崎駿監督のメッセージをあなたに配信します。受け取りたい方はwww.tfm.co.jp/gakeまでアクセスして下さい。

 

学びたいんですよね。私。大学の勉強も大事なんですけど、それ以外のことをもっと身につけたいなと思うんですよね。

 

鈴木

例えば、映画でも芝居でも本でもいいけれど、読んだら観たら、それを放ったらかしにするんじゃなくて。

 

放ったらかしにします。私。

 

鈴木

放ったらかしにしないで、その日のうちにA型なんだから。

 

評論ですか?

 

鈴木

評論なんかする必要はない。

 

あ、ストーリーを書くんですか?

 

鈴木

どういうお話だったかを書く。感想とかはいらないの。わかる?

 

自分の感想じゃなくて、そのストーリーを書くんですか?

 

鈴木

そう。

 

へー!

 

鈴木

これポイントなのよ。「どう思いましたか?」って言うじゃない?

 

そうですね。

 

鈴木

あれいらないの。何が書いてあったから言えって。こっちの方が大事なの。だから手塚治虫っていう人がなんで漫画描けるようになったのか。映画観るじゃない?ディズニーでもなんでも。家帰ってきて、どういう映画だったか絵で描いてたの。

 

ええーすごい。

 

鈴木

わかんなくなるじゃない?もう一回観るの。例えば、映画観るじゃない?ファーストシーンなんだったか、人物はどこにいたか、こういうことまで考えるようになると。

 

すごい!すっごい頭使いますね!

 

鈴木

そう。だから観る時にね、観るところが変わってくるのよ。具体的に観るようになるわけ。

 

宮崎さんという人がね、映画を作り始めた頃、最初に高畑監督と組むのね。高畑さんという人がアニメーションだから絵で描くわけでしょ?絵だから何でも描けるっていうんで、みんなが平気でいい加減な絵を描いてたわけ。

 

ところが、この高畑さんというのは、絵だからなんでも描けるって作ったら、面白いものは出来ませんって考えたわけ。漫画映画にだってちゃんとしたカメラマンが必要。美術はどうなっていて、人物はどこにいる、それぞれの人がどういう演技をする。で、カメラが動くでしょ?カメラワークはどうするか。こういうことを日本で初めて高畑勲っていうのが考えて、それを宮崎駿に徹底的にやらせたわけ。

 

まず最初、宮さんが高畑監督から教わったこと。一緒に歩いてるでしょ?そうすると、建物があるじゃない?「あれ面白い建物ですね」って言うでしょ?次に高畑さんから質問が飛ぶわけ。「間取りはどうなってますか?」って。

 

え?

 

鈴木

宮さんが描くと「これは合ってるけど、これは違ってます」って。空間把握能力っていうやつ。だから宮さんは大変だったんですよ。

 

例えば、ここに湯呑みがあるでしょ?したら人間の大きさがこれくらいだとします。

 

どう見えるか?

 

鈴木

そう。

 

へーー!でも面白そう!

 

鈴木

上が膨らんで見えるのか、それとも萎んで見えるのか。

 

えー!どうなんだろう!

 

鈴木

(笑)

 

深いですね。

 

鈴木

面白いのよ。深いっていうより。だから宮崎監督ってね、高畑監督の前で15年間何をやったかって実写でいうとカメラマン。そして演出家。というのは、どのキャラクターがどうやって動くかは全部宮さんが指示したから。これを高畑監督のもとでそれをやりまくったの。

 

高畑さんは丸とチョンで絵コンテを描くわけ。それを宮さんが清書する。その美術を細部まで描いて。で、人物はどこに置くか、その人物がどういう芝居をするか、どういう動きをするか、そしてカメラはどういう風に動くか、これは全部宮さんが全部指示したんですよ。『ハイジ』の時から。

 

で、やっとここに来たんだけれど、現代美術館ではそのレイアウト集をお見せするっていう催しで。

 

はいはい!

 

鈴木

で、瑠美ちゃんにちょっと手伝ってもらうことになったんですね。

 

はい!

 

ーナレーションー

ということで、柊さんもオープニングに駆けつけるスタジオジブリレイアウト展は、7月26日から9月28日まで東京都現代美術館で開催されます。

 

鈴木

橋田くん、何やってもらうの?

 

橋田

ナウシカ』から最新作の『ポニョ』まで、さっき鈴木が言っていた宮崎さんのカメラワークとか、色んなアニメーターのカメラマークを1300枚くらい集めて展示する展覧会なんですけど。その前の『ハイジ』から『ナウシカ』までの作品も結構ある。

 

鈴木

アニメーションって当然、セル画が動くじゃない?でもその前には鉛筆で絵を描いてるわけですよ。そうすると、元々の絵、鉛筆で描いた。大元の絵を特別に公開しちゃおうっていうのが今回の催しです。全て本物です。

 

へー!大丈夫ですかね?

 

鈴木

何が?

 

盗まれないですか?(笑)

 

(鈴木さんがギターを鳴らし始める)

 

え!ギター弾けるんですか!?

 

鈴木

大して弾けないのよ。

 

アコースティックですか?それ。それは触ってもいいですか?

 

鈴木

え?いいよ。

 

うわーー!

 

鈴木

え?なんで?

 

ギターやりたいんですよ!

 

鈴木

ギターやりたいの?やってるの?

 

一時期やりました。あ、ダメだ全然。

 

(場面が変わって)

 

うわー!すごーーい!今年一番のスイカ

 

鈴木

あ、そうなんだ?

 

はい。でも結構食べます?

 

鈴木

毎晩食べるのよ。

 

え、本当ですか?毎晩ですか?

 

鈴木

そう。

 

すごーい。

 

(スイカを食べる)

 

甘ーい。

 

鈴木

◯◯くん、美味しいよ!

 

(了)