鈴木敏夫のジブリ汗まみれを文字起こしするブログ

ポッドキャスト版「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」の文字起こしをやっています。https://twitter.com/hatake4633

<鈴木敏夫のジブリ汗まみれ>小説家・中村文則さんとの座談会 その3

2016年1月13日配信の「鈴木敏夫ジブリ汗まみれ」です。

http://podcasts.tfm.co.jp/podcasts/tokyo/rg/suzuki_vol403.mp3

 

中村:作家になろうと最初は全然思わずに、ただ好きでずっと本を読んでたのが最初ですね。バンドとかもやってたんで、当時は。髪とか赤くしてたんですよ。タンクトップで鎖を首から巻いたりしてハードロックやってたんですよ。タトゥーを彫る勇気なくて。

 

鈴木:(笑)

 

中村:でもタトゥー憧れて、タトゥーのシールを貼って。

 

鈴木:シール貼ったんだ!

 

中村:ハードロックやって段々終わりに近づくと、汗でとれてくるんですよ。段々十字架がとれてくるみたいなことをやってたので、小説家になろうとは全然思ってはなかったですね。

 

米倉:もしかしたら、なってたらここにタトゥーが。

 

中村:なってたらあったかもしれないですね。十字架とかドクロとかね。とれちゃったんで。シールだったんで。

 

米倉:読む人から書く人って、アプローチも熱量も全部が違うわけじゃないですか。私小説家の方って、一歩って勇気なんだろうなって思うんですよね。

 

中村:書くってことですか?

 

米倉:そうです。私自身がすごい好きで好きで。でも書こうとは全く思えないので、ものを書く人って凄いなって純粋に思うんですよね。

 

中村:色々じゃないですかね。映画は凄い大好きですけど、映画撮ろうとは全然思わないですから。ただ観るのは大好きですけど。インターネットもやりますけど、インターネットの発信側っていうと変だけど、なろうとは思わないですからね。見たりはするけれど。そういうことなのかもしれないですけどね。色んなことをやる人もいますけどね。

 

ーナレーションー

鈴木敏夫ジブリ汗まみれ。

 

今週も小説家の中村文則さんをお迎えしての座談会。中村さんの著書「教団X」のお話から、映画、音楽、そして会社経営についてなど、興味深い話題でお送りします。

 

出席者は、ドワンゴ会長の川上量生さん、「教団X」を細部まで読み込んだという米倉智美さん、そして鈴木さんです。

 

なお、前回の座談会を聴き逃した方は、ぜひ番組ホームページにアクセスして、ポッドキャストをお聴き下さい。過去の番組がアーカイブされています。では、今週はこんなお話から。

米倉:海外の人に読んで欲しいな、とかも思いますか?

 

中村:そうですね。「教団X」は最初から世界に向けて書いてやるっていうのがあったので。

 

鈴木:「掏摸〈スリ〉」が初めてなんですか?

 

中村:アジア圏は他にも前にあったんですけど、英語圏は「掏摸〈スリ〉」が初めてですね。そこから色んな国に出るようになったっていうことで。そのタイミングを見計らって「教団X」をやったっていう。

 

鈴木:ああいうのって、どうすると海外に出るんですか?集英社の人の努力ですか?

 

中村:僕の場合は、大江健三郎賞っていうのをいただいて、あれを貰うと、英語かドイツかフランスどれかになるっていうのがあって。幸いにして英語になったので。英語になると、もっと広がるので。

 

鈴木:そうですよね。

 

中村:掏摸の主人公ってあるようでなかったので、珍しかったみたいで、色々広がってはくれているんですけど。

 

悪と仮面のルール」というのを書いた時に、それがアメリカの軍需産業の悪口いっぱい書いた本なんですけど、それが英訳されるって言われて「やばいな」って思ったんですけど、でも出ちゃうのはしょうがないから「じゃあお願いします」って言って。

 

向こうのサイン会の時に、共和党大好き!みたいな筋肉ムキムキの南部の方が来て、「お前の『悪と仮面のルール』読んだけど、お前は勇気があって気に入った」って言われて。

 

鈴木:(笑)

 

中村:じゃあ、気に入ったんなら良いのかな?と思って。こっちは「サンキューソーマッチ」しか言えないですよね。「ジャパニーズ カンジ」とか言いながら(笑)日本の作家っていう認識はあんまりないみたいですね。

 

鈴木:面白いものは面白いのかな。

 

中村:あんまり国で読まないですかね。アメリカの人って。

 

鈴木:元々色んな国の人が集まってるんだから。 

 

中村:英語でものを書いてる人口が多すぎるので。作家の。だから個性ないと埋没しちゃいますよね。

 

鈴木:この間、池澤夏樹さんのやつ読んでたら、今世界で評価するとしたら、こんだけ人の流入が激しくなった時代。すると、移民だとか難民で別の国に行った人、そこの言葉を喋れなくて苦労して、それでなおかつその言語を獲得した人、それが現地の言葉で書いたものが面白い、みたいなことが書いてあって。ああ、なるほどなと思って。故に、世界文学全集が昔みたいな基準では成り立たない。なるほどなと思ったんですよね。

 

中村:そういうところはありまして。例えば、日本の小説っていっても、珍しくないんですよね。アメリカにも日系人の作家いますから、そういう人たちが英語でで日本文化とか書いてたりしますから。国の個性というよりも、その本人の個性でやっていかないと、埋没します。

 

ただ、台湾とか韓国に行きますと、日本文学っていうことで結構盛り上げてくれたりとか。日本の作家だっていうことであるんですけど、アメリカとか行くと、ゼロからだなと。日本語だから読まれるっていうことはないので、これはゼロからやるんだな、と思いながら。

 

---

 

中村:今おいくつでらっしゃいますか?川上さん。

 

川上:僕40、、

 

鈴木:7!

 

川上:47です(笑)

 

鈴木:(笑)

 

中村:若いすねー。

 

鈴木:若いんですよ。

 

中村:やっぱり仕事ですか?仕事内容で若さ保つ感じですかね?

 

川上:いや仕事内容関係ないですよね。

 

鈴木:性格。

 

中村:だって同級生と会ったら、凄いびっくりしません?

 

川上:ああ、もう全然違いますよね。

 

中村:ですよね。

 

鈴木:みんなおじさんでしょ?

 

川上:でもね、仕事してないからですよ。仕事したら絶対老ける。

 

中村:いや、仕事はしてるじゃないですか(笑)

 

川上:いやだから、してないんですよ。あのー普通の意味での仕事はやってないですよね。

 

米倉:出社は毎日されてるんですか?

 

川上:まず月曜日はジブリに、、

 

米倉:月曜日はジブリにいらっしゃるんですか?

 

川上:ええ。いま娘が14ヶ月なんですけど、鈴木さんに連れて行ってもらって、ジブリ保育園に預けるっていうのが僕の月曜日の、、

 

米倉:お仕事ですね?

 

川上:仕事。

 

中村:確かに仕事ですね。一応。

 

川上:仕事なのか?っていうね。

 

中村:火曜日何してらっしゃるんですか?

 

鈴木:(笑)

 

中村:なんかスゲー謎ですね。

 

米倉:じゃあ火曜日お願いします。毎週火曜日。

 

鈴木ドワンゴの会長だったでしょ?で、僕初めて会って。年末に会ったんですけどね。正月からジブリに来たいと。で、来ちゃったんですよ。それで1週間のうち真ん中の水曜日かな。それ以外は全部ジブリへ来るっていう。そういう生活を始めたんですよ。

 

米倉:え、このラジオ中で決まったんですか?

 

鈴木:そうそうそう。

 

川上:その時も収録始まってるの知らなくて、いつになったら始まるんだろうと思って。とりあえず、収録が始まる前に「ジブリへ行かせて下さい」って言っとこうと思って言ったんですよね。

 

中村:今日の僕ですね。

 

川上:そうそうそう。そうしたらそれが、最後かなんかにそのセリフが(笑)

 

米倉:それが公共の電波に乗っちゃって、「川上さんジブリへ行くの巻」に。

 

鈴木:俺なんか次の日に社長に「正月から川上さんっていうのが来るんで」って言いに行ったの。席はどこにするかとかね(笑)

 

川上:僕はドワンゴの方でこういうことがあって、どうしても行きたいんだって会社の中で言って、会社からみんなから止められると思ったんですよ。したら、誰も止めてくれなかった(笑)いいの!?行って良いの!?って。

 

鈴木:会社って意外にね、こんな馬鹿なってことが通るんですよ。実は。

 

中村:そうなんですか?

 

鈴木:そう。本当に。

 

中村:アルバイトしかないからな。

 

鈴木:僕なんてね、例えば、ジブリを作るっていう時に、徳間書店っていうところに属してたんですよ。僕は雑誌の編集長をやってた。それで会社作ることになったのよ。したら会社作るっていったらね、当然管理の総務だとか色んなのがあるから、そういう人たちが作ってくれるって思ってたんですよ。それで相談に行ったらね、「お前が作りたいんだから、お前が勝手にやれ」って言われてね(笑)もう大変だったんですよ。なんで大変かっていったらね、すぐ本屋さんに行ったんですよ。「株式会社の作り方」っていう本をまず買ってきて(笑)そこからですよ。

 

中村:マジすか。

 

鈴木:マジに。だって自分で勉強しなきゃしょうがなかったんだもん!誰にも期待されてないしね。

 

中村:凄いな。

 

鈴木:そうなんですよ。

 

米倉:それは為になったんですか?

 

鈴木:為になった!その後忘れちゃったけど、その本の通りにやったもん。

 

米倉:それでジブリが出来るんだもんなー。

 

中村:それでジブリが出来たっていうのも、凄い話ですね。

 

鈴木:自分でやってみるとね、「あ、自分でやって良かったな」っていうことがいっぱいあるんですよ。色々自分たちにとって得なことをいっぱいやればいいわけでしょ?あれ人に任せたら酷い目にあってましたよ。

 

米倉:川上さんも起業ですか?

 

川上:僕も起業した時も小さい会社だったんで、「会社の作り方」を買いましたよね。

 

鈴木:絶対そうですよね?

 

川上:証券会社の作り方、株式会社の作り方。自分で。

 

中村:え!?そうなの!?

 

鈴木:僕なんて、社会保険なんて初めて知ったんだもん。

 

中村:えー!

 

鈴木社会保険の本買ってきて、社会保険ってこういうもんなんだって。今まで自分で払ってきたくせにわからなかったんですよ。税金とか厚生年金って、社員にそんだけ払ったら会社も負担しなきゃいけないのか、とかね。

 

それによって僕もわかったんですよ。いろんな会社がいろんな手当ばっかりにして、基本給を少なくしてる理由とかね。そういうのって、自分で勉強しなきゃわからなかったもん。

 

それで、こんなめんどくさいことやってられないから、基本給だけの会社にするって。自分で会社作る時って、そういうこと出来たんですよ。

 

川上:僕もそうですよ。わかりにくいからっていうんで、色々わかりにくいように作ってるじゃないですか?だから僕も一万円単位にして、10万円20万円(笑)

 

鈴木:それはわかる!凄くわかる!絶対わかるそれは!本当にそうなんですよ。

 

中村:でも難しいところですよね。今ラジオ聴いてらっしゃる方も、真似を本当はしちゃいけないですよって言いたいけれど、、

 

川上:違う違う!それは絶対違う!

 

中村:でも二人とも成功してるから、真似した方がいいっていう風になるしね。

 

鈴木:本当にそうなの!

 

中村:難しいところですよね、これ。

 

鈴木:本当にそうなんだってば。色んな会社で給料こんだけ貰ってるけど、聞いてみると基本給が半分だったりする。なんでなんだろうって思ったら、これ社会保険と関係あるとかね。

 

米倉:私いまだにわかってないですもん。会社の給与体系とか所得税がどうとか控除がどうとか、難しすぎて。そういう風に作ってるんですもんね、わざと。

 

鈴木:そう!あれはお互いわかっててやるのよ。これによって社会保険料少なくなるとか。会社負担大変なんだもん。やっていったら。

 

中村:確かに明細とか見ると、訳わかんないもんな。

 

鈴木:訳わかんないんですよ、あれ。だからシンプルにしたんですよ。

 

米倉:親切ですよね。働いてる人からすると。

 

鈴木:そうだよ。

 

川上:給与体系とかも評価があって、Sクラスでこれだけ上がるとかあるじゃないですか?ああいうのもなんで複雑になってるかというと、給料を上げないためなんですよね。

 

鈴木:そう。会社も頭捻ってるんですよ。

 

川上:ウチの会社はもうそうなってるんだけど、こちらの方が合理的だからっていうので変えたんですよね。それまで僕らっていうのは、20万円の人がなんか頑張ってるから、25万円にしようとかすぐ(笑)

 

中村:なんか頑張ってるからって良いですね(笑)

 

川上:そのぐらいが普通かなっていうので。一万円単位だとわかりやすいじゃないですか。

 

中村:確かにわかんないですもんね。明細とか。自分の原稿料がいくらなのかもよくわかってないしな。枚数でいちいち割らないじゃないですか。お金貰って。割ってみようかな。今度。

 

鈴木:昔は原稿用紙だったからわかりやすかったんですよ。

 

中村:自分で割ればいいんですかね?明確にやってもらいたいんですけど、誤魔化してるんですかね?

 

鈴木:例えば、筒井康隆なんて、「小説家になるための本」っていうのを書いて、あれ何をやったら一番儲かるかって、兵隊小説だと。何かなと思ったら、「番号!」っていったら「1!」「2!」「3!」って改行してくんですよね。

 

(全員、笑い)

 

鈴木:これで何枚稼げるとかね。そういうテクニックがいっぱい書いてあるんですよ。

 

中村:僕どんどん短くしようとしてるから、損してますよね。そうしたら。

 

川上:そうですよ。

 

米倉:ページ数稼がないといけないですね(笑)

 

中村:難しいところですね。でも確かにドストエフスキーもあの描写は原稿料を貰うためだっていう説もありますもんね。ひたすら長くやる。だから全部分厚いんだって。

 

鈴木:最近は文字数っていう手を出版社側も考えたでしょ?昔は枚数だったんですよ。

 

川上:大学の時にプログラミングのバイトしてて、プログラミングのバイトっていうのが、1行いくらだったんですよ。1行100円とかだったんですよ。それまではものすごい詰め込む派だったんですけど、その時にコメントとかつけてましたね(笑)すごいわかりやすいソースコードにとにかく改行を多様して。とにかく注釈がいっぱい書いてあるっていう風なスタイルに変わったんですよね。

 

中村:じゃあ原稿料で文化も変わるんですね。

 

---

 

鈴木:これよく話すんですけどね、「風の谷のナウシカ」っていう漫画を始めようっていう時に、宮崎から電話がかかってきて、「鈴木さん、すぐ来てよ!」っていうから事務所行ったんですよ。そうしたら、1ページ目の原稿が三種類あったんですよ。1枚は後に今の漫画のやつ。それはすごい描き込んであるでしょ?一番左見たらね、ほとんど描いてないんですよ。真ん中がその中間ぐらいの絵を描いてあるんですよ。それで「鈴木さん、どれがいい?」って。左のやつだったら、一日24から30枚いくと。真ん中だと10枚くらいかなって。最後の漫画になったやつ、これだと一日1枚いかないんだよって言い出して。「で、どれにする?」って言われて。見せられたらこのグチャグチャのやつですよね(笑)

 

中村:まぁそうですよね。

 

鈴木:大変だったんですよ。

 

中村:ウチにあります。大きくて薄いやつ。

 

鈴木:ありがとうございます(笑)どのぐらいの密度で描くかって、大きな問題だったから。

 

川上:そういうことでいうと、ナウシカみたいな小説を書いてるってことですよね。

 

中村ナウシカの衝撃は凄かったな。最初は映画で観たんですけど、そのあと漫画で。

 

鈴木:そもそもGペンなんて使ったことないから、彼がペンでやってみたら描けないんですよ。「鈴木さん、どうしよう」って。しょうがないから、宮さんいつも使ってるのは鉛筆なんですよ。だから鉛筆でやりましょって。しょうがないから僕なんか鉛筆削ったりしてね。それで絵を描き始めて。それで鉛筆で描いた原稿を印刷で墨で描いたように見せかけるんですよ。それの原稿にスクリーントーン貼ったりして。

 

川上:あれ見た感じ鉛筆で描いたって、見た瞬間わかりますよね(笑)

 

鈴木:凸とり(?)っていう凸版印刷っていうのがあって、それでやるとね、かなりペンで描いたように見えるんですよ。それやり方知ってたから「こうやってやれば出来るから宮さん」って。最初のうちなんか、スクリーントーンいっぱい貼ってるんですもん。僕が間違えて貼ると怒ったりしてね。斜線なんかいっぱい描いてるんですよ、あれ。

 

(全員、笑い)

 

鈴木:だってアシスタントいないんだもん!

 

中村:なんか今歴史の中にいる感じがいますね。昔から持ってる本の、線描いた人がここにいる!

 

鈴木:色々あるんですよ。彼仕事なくて「ナウシカ」だけだったから、月に24枚描くということで「鈴木さん、原稿料1枚いくら?」って。当時、新人が大体2000円から3000円だったんですよ。大家になると、4万から8万。「そういう時代だから宮さん、1万円にしましょう」って。「そうすると24万円か」とかってね(笑)

 

米倉:わかりやすい。

 

鈴木:それで始めたんですよ。

 

中村:やっぱり1万円なんですね。

 

米倉:計算しやすいから(笑)

 

中村:今だって何刷っていうレベルじゃないですよね?もの凄いことになってますよ。たぶん。

 

鈴木:でも映画になるまではね、全く売れなかったんですよ。

 

中村:えーそうなんですか?

 

鈴木:そう。本当に売れなかった。見事に売れなかったですよ。

 

中村:超傑作ですよ。

 

川上:映画の前に買いましたよ。

 

鈴木:あ、そうですか。

 

川上:デカかったんで。しかも安かったし(笑)

 

鈴木:あれ、売るために安くしたんですよ。ページ薄くして(笑)

 

中村:なんで薄く長くいくつもあるのかなって最初疑問あったんですよね。

 

鈴木:それが理由なんですよ。でね、薄くして値段安くすれば、多少売れるかなって思ったら、大して売れやしなくて(笑)

 

川上:でもそれで買いましたよ。普通の漫画の単行本って350円、360円だったんだけど、あんなにデカいのに300円だったんですよ。

 

鈴木:いや、僕のとき最初180円なんですよ。

 

川上:ウソだ!えっそれ知らないですよ!

 

中村:僕買ったとき、結構普通の値段しましたよ?

 

鈴木:段々高くしていったのよ!

 

中村:やっぱりそうだ。僕結構高く買ってる。

 

川上:300円でも実は高かったんですか?

 

鈴木:高かった。それで売れないんだもん。

 

川上:180円って何の値段ですか(笑)

 

鈴木:映画にしたかったから、とにかく売れようと思って。5万出して3万しか売れなかった。その3万しか売れなかったやつを、僕は博報堂というところと一緒に映画作ることになるんですよ。

 

で、僕基本的には絶対ウソつかない人なんですけどね、映画作り始めて色んな作業が進んでいった。そこで博報堂の人に「あの鈴木さん、そういえば」って言い出して。「こんなになってから言うのはなんだけど、原作ってどれくらい売れてるんですか?」って言われたんですよ、初めて(笑)

 

中村:いつか訊かれることですよね(笑)

 

鈴木:それでね、ついね、50万って(笑)

 

(全員、笑い)

 

鈴木:これ、僕がついた唯一のウソ!(笑)

 

中村:結構いきましたね!

 

鈴木:ところが、これがね、映画と同時に100万いったんですよ。

 

米倉:あ、ウソついてないじゃないですか。

 

鈴木:そう。だから僕はね、そこから偉そうに言うんですよ。映画化っていうと、ベストセラーを映画にするだろうと。しかし、売れてなくても中身さえ良ければ映画は良いのは出来るし、あとで本も売れるって。

 

川上:でも50万部売れた本が100万になっただけですから(笑)

 

鈴木:でも結果としては、全部250万か300万ずつぐらい。

 

中村:みんな持ってますからね。漫画とかそういう文化興味ある人は。

 

ーナレーションー

中村文則さんは、1978年9月2日愛知県東海市に生まれ、2002年「銃」で第34回新潮新人賞を受賞してデビュー。2005年「土の中の子供」で第133回芥川賞を受賞、今年5月の「あなたが消えた夜に」まで、数々の小説を執筆してきました。

 

そんな中村文則さんの集英社刊「教団X」、ぜひ書店で手にとってみて下さい。

 

来週は、東宝歴代ジブリ宣伝マン大集合、と題してお送りします。お楽しみに。

 

鈴木:「教団X」がまさにそうだけど、主人公たちがみんな心に闇を持ってるわけでしょ?

 

中村:そうですね。

 

鈴木:そういうことでいうと、それは今世界共通じゃないですかね。

 

中村テロリズムの話とか色々世界を意識さて書いてはあるといえばあるんですけど、日本文学も狭い世界ですけど、狭い世界の中での流行ってあるんですよ。ちょっとこういうのが流行るとか。僕そういうのを追わない傾向にありまして。「人間は何か?」みたいなことしか書かないようなところがあるので。それがたぶん海外ではいいのかなとは思いますけどね。

 

それが流行って、ずっとスタンダードになれば海外でもいいとは思うんですけど、一時で消えちゃうと、それを海外に出そうとしても「なんじゃこら」ってなっちゃうので。それが海外で流行ってるっていう下地が一切ないですから。その辺は元々流行とか疎かったりとかもするというのもあるのかもしれないけど、普遍的なものだったらいいのかなっていう感じは思ってはいるんすけど。

 

鈴木:映画でいうと、皆さんより長く生きてるからすごい感じてたのは、例えばこれは世界を問わず、ある時代までみんなそのテーマがアクションだろうが恋愛ものだろうが、「貧乏の克服」。黒澤明なんていう人は、どんな映画を作ろうと実は根底にそれがあった。

 

ところが、日本がそうだったように高度経済成長その他によって豊かになった時、次に心の問題になりましたよね。それをどうやっていくんだ、みたいな。

 

この小説を読んだ時にも、そういうものの先を示してくれてるのかなっていう気もしたんですけどね。

 

川上:そうなんですよね。現代の宗教ですよね。

 

中村:そうですね。神とかのない教義とか宗教ですよね。ちょっとなんか感動しますね。

 

鈴木:え?

 

中村:なんかもうスゲー嬉しいです。書いてよかったなって。

 

鈴木:いやいや(笑)

 

米倉:私すごい救われたんですよ。「全ての多様性を愛そう」っていうのが、いっぱい散らばめられてるじゃないですか?寛容であって許容しようとか。許すということが書いてあって。色んな国の人と働いてると、たまに迷子になっちゃうんですよ。自分が。このボーダレスの時代で生きていて、地球が狭くなってしまっていて、色んな国の人と接していると、すごく空っぽになることがあるんですよね。上手く言えないんですけど。

 

鈴木:気持ちはわかるな。

 

米倉:わかってあげないといけないとか、わかって欲しいとか、すごい疲れちゃう時があって。でもこの本を読んで、認めるということ、許すということ、多様性でいいじゃないっていうことが書いてあるので、私みたいな状況に置かれてる人はたぶんすごく救われるなって思ったんですよね。なんかすいません。私みたいなのが出しゃばって。

 

中村:全然。すごい嬉しいです。